邂逅
窓越しに蒼い空がこちらを覗く
あまりの蒼さに部屋全体が空色に染まっている
「よく頑張りましたね!貴女の子供ですよ!元気な男の子です!」
産湯からあげられるとふくよかな毛布に身を委ねさせられる
「わた…しの、赤ちゃ…」
朧げな視界に汗だくで息切れをしている淡い翠の髪の女性が映った
その人の腕はとても温かくて、安心できる
バン!と扉が勢いよく開けられて
「キサラ!キサラぁ…よくやった、よく頑張ったな…」
と土色の髪の男が飛び入ってきた
———どうやら僕は、転生に成功したようだ
涙目のおっさんに笑顔でカワイイカワイイと言われて思わず顔が引き攣ってしまう
「なあ…この子の名前は…どうするんだ?」
「はい、お話は伺っております。この子は男の子ですので…」
助産師…いや、この世界だと産婆という方がしっくりくるか
見かけ50半ばの産婆が告げる
「おお!じゃあ…」
「ええ、ユーヤ。男の子だとユーヤ、でしたね?あなた」
…という訳で俺の名はユーヤに決まったそうだ
因みにこの世界は……言うまでもなくコテコテの異世界だ
まさしくラノベやアニメ、ゲームなんかに出てくる感じのコテコテさ
「そしてこの感じ、僕、いや!俺は何かしらチート能力を有しているパティーンでないか!?」
そう!憧れていた異世界に転生したのだ!確かに…現実世界は恋しくもあり惜しくもあるが
それはそれ、これはこれだ
アニメやラノベで見ていたあのなろう系の世界に来たのだ!
夢に見たハーレムや互いに高め合える良き好敵手、
人間に限らずエルフや獣人、ハーピィやヴィーヴルにも会えるだろうか
あわよくばサキュバスにも籠絡されたい…
クソオタの前世を送った池野…いや、ユーヤの望みは齢2歳を超えても健在であった
しかし2つの事件が起きた
「いんやー早く大きくならないかなー?早く冒険に行きたい!…にしてももう俺も2歳かぁ、もうそろなろうイベントが来てもおかしくはないのだが…」
1つはユーヤになんのなろう系の予兆が来ないのだ
魔法はさっぱりだ…魔力とかマナとか色々複雑なのだろうか
剣技を習得しようにもまだ2歳だ
この時期で剣技を教える親はまさしく毒親
ユーヤは感謝ともどかしさの間に飲まれていた
そしてもう1つの事件は…
「あ」
ガシャーン!
「うああ!やばいぃ!花瓶割っちまったあ!」
ユーヤが割った花瓶は母キサラと父ソドの結婚記念日で購入した眩い程黄色いヒヤシンスが生けられていたのだ
そう、もう1つの事件とはこの花瓶を割ってしまった事
———ではない!
花瓶を割ってしまったのなら片せばいいからだ
問題はその次である
「ふぅ〜っ…つっかれたぁあ…」
片した後あまりの疲れにユーヤはすぐに寝てしまった
本当に疲れていたのだろう
水を拭いた紙を丸めたまま机上に放置していた
放置していたのでその紙が落下した
ユーヤの口に
「グアああああああああ!!!!なんだぁ!?喉ん中に何か…」
このままじゃ…死…
いや、このピンチがチート能力覚醒イベントなのかも
よっし!バッチ来い!!俺の!未来への覚醒!
——10分後、
ユーヤ死亡
2歳児とは思えぬ欲望に塗れてニヤケまくった死に顔であった
彼女曰く死因は『紙』だったのだが…回避出来ず
あとがき
偶然ネットサーフィンで見つけていただいた方や、
初回から応援していただいた方、
少しの興味で試し読みしていただけた方たちに
最大の感謝をさせていただきます
最後まで読んでいただきありがとうございました
以上で「彼女曰く僕の死因は『紙』らしいので早速回避していきます」は
完結となりますご愛読いただきありがとうございました
さて、あとがきで何を書こうかなと思案していましたところ
「終ーわーらーせーてー、たまるかあああああああああああああ!!!!!」
元ユーヤは叫んだ
「まだ終わらんよおお!!何回だって転生してやる!
うおおおおおお!!!!!待ってろ!異種混合ハーレムぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!!」
二回死んで反省したかと思ったが、案の定欲望に塗れている
これが池野悠也クオリティ
さて、もう一回死んだ…と言う事は池野にとっては二回目の死後の世界となる
「変わんねーなぁ…まあそうか」
相も変わらず死後の世界、やはり少し肌寒いのも不変だ
変わっているのは、人がいる事だ
金髪の女の子、見た目16歳だろうか
腰ほどもある長い髪に星空のような藍色と淡い桃色の毛色が疎に混ざっている
両こめかみから三つ編みが伸びてきて、うなじ付近で交わり再度大きな三つ編みになっているという名称のわからない髪型がとても可愛らしい
その女の子は池野が転生の際落下した穴を凝視していた
「おーい!そこの女の子!先客かー?」
ユーヤが声をかけると
バッと驚いたようにこっちを振り向いた
まるで宝石のような瞳だ
海原を閉じ込めた綺麗な碧色に少しユーヤはたじろいだ
着ているドレスも綺麗な紋様が施されている
恐らく紋様は狼を元にデザインされたのだろう、白と緑の塗し方がとても絶妙だ
このデザインを考えた人に敬意を示したい
女の子はこっちの存在を認知したようだ
にまっと笑ってこちらを睨め付けた
女の子から漏れ出た湿っぽい笑い声を聞き
ユーヤは戦慄した
あとがき
最後までご愛読いただきありがとうございました
ここから先は暫く休養を入れたいと考えています
休養の後他作品の執筆も考えていますのでお楽しみにお待ちくださ
「逃 さ ね え よ ?」
見た目の年齢よりも少し幼い声色、忘れはしない
アヌビスだ
「やっはっは〜!久しいなー池野君!
な?久しいな?」
ブチギレアヌビスだ
猫撫で声からのドスの聞いた声への変化がさらに恐怖心を煽る
ブチギレアヌビスは無邪気に近づいて背中を叩いてきた
「案外早いじゃないか?どーしたんだ?ん?」
「さっき久しいな…って言ってたんじゃ…」
ダン!!!!!!!!!!
ビクゥ⁉︎
猫撫で声のまま思い切りアヌビスが思い切り床を踏みつけたのでユーヤはかなりビビったようだ
「まーまー思い出話でもしようやー、『思い出』話でも…」
———『思い出』いっぱいあるもんねー?
ハイライトが消えた碧い瞳は永遠に続くような深さだった
魂が死ねば一体どうなるのだろうか?
ユーヤ君に確認してもらいましょう




