死相ネタバレ《スポイラー》
「ガチで死んでどーすんじゃあああああああ!!!!」
暗い終わりの見えない霧の中に元池野悠也は叫んだ
思っていたよりも死後の世界というものは肌寒い
⦅あれ?ここに誰かいるってわかったんだ?⦆
急に馴れ馴れしい少女の声が頭の中に流れ込んできた
頭に流れる、というかイヤホンをつけている感覚と似たようなものだ
「そりゃあ転生前はこーゆーんがある!ってのはテンプレだしな」
⦅あんまそーゆーこと言わない方がいいと思う…⦆
一見強がっているかに思える青年の言葉に対し、少女の声は若干苦笑を帯びている
⦅つーか僕が誰か聞かないんだね?⦆
…と言いつつも本心は誰なの?と聞いて欲しそうな声色だ
話半分に池野は(僕っ娘か…いいじゃん)と思っていた
「まー、別に知ってどーするって感じだしなぁ
…なーなー俺ってガチで死んだの?いや聞かなくてもわかるんだけど一応念のため」
⦅おっけー!わかった!僕はアヌビス!よろしくな!⦆
「あーそーですか無視ですかあーはいはい」
呆れたような顔をあからさまに見せつける
するとアヌビスはそんなことはどうでもいいように
⦅まー君の予想通り死んだよ、ポックリと⦆
っと吐き捨てた
「つーかさ、僕ってどうなったの?死んだってことはわかるんだけど、状況が読めないんす」
一番疑問に思っている問いを翳す
するとアヌビスは「おっけ、わかったわかった!」とでも言わんばかりの声色に変わって告げた
⦅君は…確か首切られて死んだよ?⦆
「誰が鬼じゃああああ!!!!」
第一声がこれなのは流石というか馬鹿というか…
取り敢えず肝が据わっているのは確かだ
「えっぐ!死に方えっぐ!はぁあ⁉︎そんな死に方すんの?この現代で⁉︎
うわーこれから首切られて死ぬキャラの見る目が変わっちゃうなぁ…発狂寸前だったんだよ⁉︎」
そう…元池野悠也は忘れはしない
まさか首を切られても意識が残るってのは本当だったんだなと
声帯より上を切られてしまったので声を発することができず
段々と頭が冷えてきて断面に広がる痛みに抱えられ眠るように死に至る
あまりの衝撃にまだ死んで間もないと言うのに実感が薄れてきているのだ
「しかも何⁉︎『確か』って明らかに首チョンパされた人に言えることじゃないよね!ねえ!」
⦅えーでも世界基準だと2秒に1人死んでるからー⦆
「それが命の価値を軽んじて良い理由にはなんねーだろうがああああああ!!!!
つーか嫌なトリビア!なんでそんなの教えるの!?カップラーメン待ってるだけで90人死ぬの!?怖いて!」
⦅ちなみに国内だと20秒に1人死んでるよー⦆
「だから怖いて!誰得なのその情報!」
オーバーなジェスチャーと身振り手振りで熱弁する
どこからとなく冷たい視線を感じ、真顔に戻る
悟りを開いた時もこんな感情なのかと少しだけ思った
⦅にしても君は運がないなあ!ヤハハハ!紙があんな凶器に成り変わるなんて、風向や落下の速度、紙の向きと湿度エトセトラ揃わないと不可能だよ?いんやー奇跡はあったんだねー⦆
「そんな奇跡いらねーよ!メルカリで100円で売ってやるよ!」
…悟りが解除されてしまった
⦅熱弁のところすまないが君はなんとーー!今から転生することに決まったよ!⦆
池野という青年の顔は明らかに拒否の顔を示していた
…いや違う、拒否とも感嘆とも歓喜とも取れない微妙な表情であった
⦅いや、何その表情!⦆
アヌビスも声からしてかなり驚愕しているようであった
「いや…転生って…あくまで最終手段なんすよ…僕も出来れば現実世界で青春したいんす
希望も何もかも無くなったら異世界転生かなーと思っただけなのに、何勝手に殺してんすか轢き殺したろかゴラ」
ハイライトがなくなった青年は告げた
⦅いんやーでも死んだのはそっち…⦆
「引き摺り転がしたろかゴラ」
言い訳する少女の声に間髪入れずに抵抗する
真に怒らせてはならない人間は存在するのだ
⦅……ハイ、スンマセン、、、⦆
会ったこともないがしょぼくれたアヌビスの顔が目に浮かぶ
⦅ご、ごめんじゃん!ユニークスキルあげるから許して?⦆
「そんな簡単にあげて良いもんなの!?ユニークスキルって!」
驚愕の事実に目を丸くする
⦅君にあげるスキルか…あ!こんなのいいんじゃない?⦆
スキル名が脳に直接示される
「死相ネタバレ?」
なんだか文字列からして碌なスキルじゃなさそうだ
「アヌビスさんや、説明を貰っても?」
⦅うんわかった!“百聞は一見にしかず!”ってわけでいってらっしゃーい!⦆
突如床が開いた
一瞬の体が浮き上がる感触に理解が追いつかず気がついたときはすでに体は空を舞っていた
「てんめええええええええ!!!!!!!アヌッビスぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!!!!」
今年一番の大声量をここで更新するなどとは元池野も想像していなかっただろう
「クソガキ!教えろよ!おい!騙したな!ゴラ!」
遠ざかって行く大穴から高らかな笑い声が谺している
とうとうキレた元池野は聞こえるか否かの声量で囁いた
「喘ぎ声煩そう」
刹那、ピタッと笑い声が途切れ⦅ブッ殺す!⦆っと聞こえたのは気のせいであると願いたい




