第5章 美織大学に通う
ABCレコード事務所はその日は忙しかった。初週の集計が来たのは午前11時頃だった。CD売り上げ50000枚、ストリーミングダウンロード10000回だった。宮園は事務所のパソコン上で数字を確認して堂々トップに立っていた。うちの事務所の歌手が初週1位なんて初めて見る光景だった。メディアから記者会見の打診が来始めたのは午後からだった。早く美織に知らせようと連絡をとるが美織は大学の授業中で電話が取れないでいた。スマホがしつこく振動した。着信は宮園社長だった。抗議室を抜け出し電話をとった。「今、授業中です。後で駆け直します。」一言言って電話を切った。宮園社長は「そうか?すまん。」だけだった。美織はお昼休みに早速社長に連絡をとった。「社長、美織です。先程は申し訳ありません。大事な声楽の講義だったので?何かありましたか?」美織はマイペースであった。その頃宮園社長は
一人でメディアの対応をしていた。「美織。お前のデビュー曲凄い事になった!午後の授業休めるか?いや?良い大丈夫だ!お前は授業に専念しろ!午後5時までに事務所に来てくれればそれで良い。ちょっとオシャレして来いよ。全国放送だからな!」宮園社長はそれだけ言うと電話を切った。お昼ランチをしながらスマホを見ていると宮園社長が言っていた事がわかった。梅澤美織の愛しきラバーボーイが検索第1位になっていた。先程同級生に言われた一言「お前やったな!の意味がわかった気がした。調べるとその数字に驚いた。食事が喉を通らなかった。立川から事務所までの電車の中ではこの時は誰からも声は掛けられなかった。無事に5時までには事務所に着いた。社長が美織を見つけると早速側に来た。「表はパニックになってないか?」と社長は美織の顔を真剣に見渡した。突然にスターが誕生したから社長が焦っていた。過去に同じ事があったのでよく覚えていた。美織は真顔で社長の顔をマジマジと見た。「何もないっすよ!すんなりここまで電車で来られました。」美織はクスっと笑った。「良かった!良かった!無事でコレから危ないなぁ?」社長は一人でテンパっていた。「美織5時30分からテレビ取材だ?インタビューを受けるから事務所の奥で打ち合わせだ!」社長は美織の顔を見た。事務所の応接室で何やら打ち合わせを細かくして取材に臨んだ。社長は美織の全身を見て「お前もっと気の利いた服無かったのか?スタイリスト呼んでやるから着替えろ!」社長の顔が少し強張った。社長はすぐに電話をとり何処かに電話した。「お世話になります。長谷川衣装です。お待たせいたしました。」10分くらいで女性が三人荷物を持って来た。「長谷川社長、急にすまない?うちの新人の梅澤美織だ!よろしくな!」社長が長谷川という女性に美織をさっさっと紹介した。「梅澤美織です。よろしくお願いします。」美織は長谷川に頭を下げた。女性達は姿見を応接室に入れて着替えを始めた。衣装の中から美織に似合いそうな服を選んで着替えさせて、記者会見までにバタバタと終えた。美織は別人のように変わった。「よし!」社長が頷いた。「宮園さんから電話をもらってすぐにこの服だと思って居ました。」女性のリーダーが社長の顔を笑顔で見た。トラッド系のファションだった。白のシャツに白黒タータンチェックのセミロングスカートにキャメルのコート、黒のブーツだった。トラディショナルな服装で美織の顔体形にマッチしていた。「長谷川社長!この子のデビューお祝いでこの服買い取るから後で請求書送ってくれ!」宮園社長は長谷川の顔を見て優しく微笑んだ。「あら!本当。有り難う御座います。いつもご贔屓に。今後も何かありましたらお呼びください。梅澤美織さんに会う衣装選んでおきます。失礼致します。有り難う御座いました。」長谷川が社長の顔を見た。宮園社長は「有り難う。」一言言ってビルの5階の会議室を記者会見場に美織とエレベーターに乗った。5時30分きっかりに記者会見が始まった。民放全局とNHKとユーチューバー代表の大江さんと言う男性が来ていた。想定問答をつつがなく熟した。「こんなにヒットすると思っていたか?」の質問に「正直思っていませんでした。」美織は本音を話た。そこで宮園社長が「俺は思っていた。想像以上だった!」と隣に座っていた。社長が声をあげた。「新橋ガード下で歌っている私を見つけてくれて感謝しております。」美織が言うと「見た目は派手じゃないが歌唱力はバツグンだからスカウトした。人間見た目は変われるが歌は持っているものすべてだと俺は思っている。練習すれば多少は上手くなるけどな?」宮園社長は隣に座る美織の横顔を見て会場を見渡し笑顔を振りまいた。会見は約30分で終わった。意地悪な質問はなかった。美織は随時緊張していた。二人は事務所に戻った。応接室のソファーにぐでっと社長は横たわった。「あ~あ!疲れた!俺は記者会見は得意じゃない!でも、お前が入れば今後増えそうだな?今晩は焼き肉でも行くか?御馳走するぞ!大ヒット祝いだ!」社長は美織の顔を見てニヤリと笑った。「そうですか?御馳走になります。」美織は社長の顔を見てニカッと笑った。「美織。洋服はいつもユニクロか?GUか?これからは今日見たいにスタイリストから買ってあげる!もう、自分で買わなくていいぞ?」社長は美織の顔を見て優しく微笑んだ。「私の服は大体しまむらです。ユニクロ、GUなんて高くて買えません。しまむらのアソートで充分ですよ。なんかこんな高級な服、買っていただけるんですか?嬉しいです。」美織はニヤニヤして社長の顔を見た。「しまむらかあ?俺は行った事ない!」社長は美織を見てニヤリと笑った。「リーズナブルな物沢山ありますよ。私はしまむら一択です。下着からパジャマまで。靴も靴下も私は全身しまむらコーデですよ。貧乏なんで!」美織はニヤニヤしながら社長の顔を見た。「今度連れて行ってくれよ。」社長は美織を見てニカッと笑った。「わかりました。安い時行きましょう?」美織は社長を見た。「頼むよ!」社長は美織を見て笑顔で微笑んだ。「しまむらって都内にあるのかな?私は立川駅前で買っているけど?後で調べておきます。」美織は社長を見てニカッと笑った。「確かあるはずだ何処かで見かけ事がある!」社長は美織の顔を見た。「それではあるんですね。」美織は納得した。「なんで俺達、しまむらの話をしてんだよ。アハハハ!」社長は疑問を持っていたのか、最後に大声で笑った。「美織よ!ファーストシングルは大ヒットの予感だな?これから、CDもストリーミングダウンロードもどんどんのびるぞ!第2弾のホイットニーヒューストンのトリビュートアルバム作るか?セリーヌディオンもだ!美織のユーチューブ映像を向こうのプロダクションに送って見て貰った。グレート!オッケー!だって。許可貰ったからリリース出来るぞ!金はかかったけどな!来週からレコーディングだ!いいか!」宮園は美織の顔を見た。「はい!わかりました。」美織は社長の顔を見て優しく微笑んだ。「今日はこの辺で終わりにするか?腹減ったから焼き肉行くぞ!」社長は美織の顔を見た。「はい。御馳走になります。」美織もランチが喉を通らなかったからお腹が空いていた。二人は事務所を出て近くの焼き肉屋に向かって歩いた。事務所は原宿にあり自社ビルだった。歩いてすぐの所に社長行きつけの焼き肉屋があった。そこに入ると「いつものやつお願いします。後生ビール2つ!」社長は注文した。すぐに盛り合わせの肉が出て来た。生ビール2つも一緒に来た。「初ヒットおめでとう!乾杯。」社長が音頭をとった。二人はジョッキをぶつけた。「好きな物から焼いて食べてくれ!ごはんもわかめスープもカクテキもあるぞ!」社長はすべて美織の前に差し出した。美織はロースとカルビを焼いて「頂きます。」合掌し箸を持ったが肉が焼けたのでトングでタレに漬け込んでロースを口にした。「牛肉うめえなぁ?」一言言って丼を持ってごはんを頬張ると口の右にごはん粒を付けてガツガツ食べて肉をさらに焼いた。すると同じ盛り合わせがもう1つ出て来た。社長のだと思った瞬間、こっちの肉は私のだと思うとテンションが爆上がりして肉を焼くスピードが上がった。社長も同じ網に肉をのせて「頂きます。」合掌した。社長は焼けた肉をトングでとりタレの皿にのせた。「美織、初めて会った日依頼だな酒を酌み交わすの?誰かと飲んでいるのか?」社長は肉を食べている美織の顔を見た。「路上ライブ後に最近、私のファンのFBI捜査官の人と良くご一緒させて頂きます。社長もわかると思います。有名な女性捜査官だから、福岡での事件とトムキャットを捕まえた人ですよ。池田さんと中西さん。リンドバーグさん三人です。池田さんとリンドバーグさんはご夫婦なんですよ。国際結婚素敵だわ?」美織は目をぱちくりした。「社長、美味しいです。最高です。これ、和牛ッスか?和牛なんて食べたの初めてッス!こんなに美味しいなんて知らんかったわ!これから爆ヒットさせましょう。私頑張りますので!後大学と両立させていただき有り難う御座います。」しゃべりながら肉は口に入っていた。「もし、美織が歌手を断念する日がきても困らないよう大学に通ってもらうのが人間として筋じゃないかと思うだよ。国立音大出れば中学校や高校の音楽教師になれるだろ。博士号とればどんな教科の先生になれるから大学院まで行けよ。こっちの仕事せいぶすっから!」先輩の社長が美織の先の道まで考えてくれていた。美織はそれを聞いた時涙がでそうになった。美織はコーラをおかわりした。美味い肉に酒もすすんだ。社長も生ビールをおかわりした。「美織、俺の肉も食ってくれないか?遠慮なしに俺は生ビールで腹がいっぱいだ。」社長は美織に肉を勧めた。「はい!遠慮なく頂きます。」美織はニヤニヤしながら社長の顔を見た。社長は焼いた肉だけタレの皿に入れ避けた。それをつまみに生ビールを飲もうとした。美織はごはんもおかわりをした。それを見た社長が「良く食べるな!感心する。羨ましい。」と投げ捨てた。美織は社長から貰った肉をどんどん焼いた。自分の肉は平らげて玉ねぎが少し残っているだけだった。「私これだけ食べても3年体重増えてないんですよ。」美織はニコリ笑った。「ご馳走様でした。」社長が合掌しジョッキを置いた。「ご馳走様でした。」美織が合掌し箸を置いた。2つの皿には微かに野菜がちょっと残っているだけだった。美織はお腹を2回ポンポンと叩いた。「はーあ!食った食った。」と吐き捨てた。「美織、オッサン見たいだぞ!」社長が美織の顔を見てニカッと笑った。「さあ?帰るか!」社長は美織の顔を見た。「社長の家はどちらにお住まいですか?」美織は初めて社長のプライベートを聞いた。「俺は成城だ!」社長が美織の顔を見た。美織は、ははあ!奥様とお子様も居るなとふんだ。金持ちじゃないかと悟った。私なんて築30年の1部屋のボロアパートなのにと声が出かけた。家賃25000円であった。東京郊外なので比較的安かった。風呂トイレは付いていた。大学までは歩いて10分だった。本当に貧乏学生であった、でも笑顔は絶やさないでいた。梅澤美織19歳大学2年生、秋の事で愛しきラバーボーイがヒット中である。




