第1章 彼女の舞台は路上
東京都新橋のガード下横丁が彼女の舞台だった。ある居酒屋の前が定位置で毎週水曜日の午後6時からギターを片手に雨の日も風の日もそこに立って歌を歌っていた。サラリーマンの吹きだまりみたいないつも酒くさい親父に絡まれながら美声を発していた。いつもギターケースの中にはお金が入っていた。わざわざ彼女の歌を聴きに来るファンがいた。名前は梅澤美織19歳。国立音大に通う音大生だ。シンガーソングライターを目指し大学では声楽を専攻していた。ルックス、歌も申し分ないくらいの持ち主である。ユーチューブの登録者も銀の盾を貰ったくらいはいた。美織はホイットニーヒューストンのカバーが最高に良かった。ギターも巧みに使い熟していた。アストリアスカスタムを愛用していた。必ず6時に歌を歌い始めた。まずは、得意なホイットニーヒューストンのカバーをラントゥユーからオールアットワンス、グレイテストラブオブオール、アイハブナッシング、マイウィルオールウェイズラブユーからの自分の作詞作曲オリジナル曲【愛しきラバーボーイ】を歌っていつもステージを下りてお金をバックに詰め込んで店先を借りてる居酒屋に場所代を支払い、コーラと焼き鳥、ももと皮を3本食べてアパートに帰るルーティンであった。店の大将は場所代はいらないといつも返された。「美織ちゃんが歌ってくれるだけでお客様も増えているから」と言ってくれた。美織が路上に立ち続けて1年が過ぎた夏に初めて見る顔の紳士がブランドスーツを着て、美織の歌を腕を組んで聴いていた。いつものワンステージを終えるとその紳士はギターケースに一万円札をスッうと入れてくれた。美織は紳士の顔を見て優しく微笑んで「有り難う御座います。」頭を下げた。「君、もう、帰るのかな?どうだ、一杯付き合わないか?怪しい者ではない。ABCレコードの宮園拓哉と言う者だ。」紳士は美織の顔を見て優しく微笑んだ。「はい。いつも終わったら飲んで帰りますので喜んで!」美織は笑顔で宮園を見た。美織と宮園はお店に一緒に入ると大将が美織の顔を見て驚いた表情を見せた。「大将、お客様連れて来たよ。私はいつものお願いします。宮園はどうしますか?」美織が宮園の顔を覗き込んだ。「僕も同じで!」宮園は美織の顔を見た。「生ビールと焼き鳥ももと皮3本ずつですよ。良いですか?」美織はまた、宮園の顔を覗き込んだ。「オッケー!」宮園は一言言った。「大将、私と同じ物もうワンセット追加で!」美織は大将の顔を見た。「喜んで!」大将は一言で注文を了解してくれた。「ごめんなさい。急に声かけちゃって、君の事もう1年も追いかけているんだよ。ライブ初めて聴いたけど良い。良い。最高の歌声だ!感動した。ユーチューブやインスタグラムをチェックしているんだが今、音大の2年生かな?声楽専攻とかで歌手には興味ないかな?興味あるならうちからデビューしない?オリジナル曲の愛しきラバーボーイでいいから?」宮園が美織の顔を見て優しく微笑んだ。「お待ちどうさま。生ビール2つと焼き鳥です。」アルバイトの女性がテーブルの上に品物を置いた。「乾杯しようか?」宮園は美織の顔を見た。「はい。乾杯!」美織て宮園はジョッキを重ねた。「ABCレコードって、まだ出来たばかりの小さなレコード会社なんだが僕がプロデュースするから是非お願いします。所属タレントは君で10人の小さな事務所だけど悪いようにしないから?歌以外はさせない。」宮園は美織の顔を見て優しく微笑んで名刺を差し出した。「宮園さん。わかりました。宜しくお願いします。こちらこそ頼みます。」




