表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
コンプレックスは最強の個性!? 〜二つの力を両立し、世界の架け橋となる王と愉快な仲間の行進曲〜  作者: 武徳丸


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

72/76

エピソード68:鉄屑の夢と混血の鍛冶師

霊峰を越えたナバールたちを待っていたのは、ドワーフの国からの冷酷な拒絶でした。

絶望の中、一行は町外れの寂れた工房へと辿り着きます。

この出会いがナバールの運命と、止まっていた「壮大な計画」を動かし始めます。


 町外れへ向かう道は、次第に寂れ、風に混じる鉄の匂いが強くなっていく。

 そこに、お世辞にも立派とは言えない、継ぎ接ぎだらけの無骨な工房が佇んでいた。


 扉を開けた瞬間、熱気と共に耳を突き破るような怒号が飛び込んできた。



「そこだ! 火力が足りねぇ! ふいごを止めんじゃねぇよ!」


「すみません、(あね)さん!」



 荒くれ者たちが火花を散らす鍛冶場。

 だが、そこで打たれているのは剣や鎧といった類ではなさそうだった。


 壁には至るところに、緻密に書き込まれた謎の機械の設計図が貼り付けられている。

 その中心で、(すす)けたゴーグルを額に上げ、巨大なハンマーを振るっていた女が顔を上げた。


 ピンク色の癖っ毛を雑にまとめ、童顔ながらも眼光の鋭い彼女こそが、この工房の主――エイルだ。



「……あ? なんだ、噂の不払いの王か」



 エイルは吐き捨てるように言い、鼻を鳴らした。



「見ての通り忙しいんだ。王様のお相手をしてる暇はねぇ。とっとと帰ってくれ」


「頼む、話だけでも聞いてくれ! もう、ここしか頼れる場所がないんだ……!」



 ナバールは真っ直ぐに彼女を見据え、深く頭を下げた。

 周囲の職人たちがざわつく中、エイルは深くため息をつき、重いハンマーを床に置いた。



「……チッ。なんだ、言ってみろ」


「剣を……打ってほしいんだ」



 ナバールが差し出したのは、無惨に折れた一振りの剣。

 それを見た瞬間、エイルの瞳がわずかに見開かれた。



「……こいつは。すげぇ素材だな。あぁ、打ち甲斐がありそうだ……」


「受けてくれるのか!」


「いいや、無理だね。忙しいって言っただろ」



 期待したのも束の間、彼女は冷たく突き放す。



「待つよ。いつまででも頼む!」


「頭下げられりゃ動くと思ってんのかよ……。いいか、不払いの王」



 エイルは自嘲気味に口角を上げた。



「アタイは純粋なドワーフじゃねぇ。エルフとの混血だ。王都の連中がうたうような『至高の一振り』なんて打てねぇかもしれないぜ?」


「……」


「どうした、言葉に詰まったか。純粋なドワーフに打ってもらった方がいいんじゃないか。今、少し考えちまったろ。そういうことなんだよ」



 彼女の卑屈な言葉にナバールが沈黙した時、背後からアルテオが静かに、だが確信を持って告げた。



「随分と、卑屈になった嘘をつくね、君は」


「……あ?」



 アルテオはエイルの背後にある壁の設計図を指差した。



「ナバール、この人は信用できる。むしろ、この人にこそ打ってもらうべきだ」


「へぇ……不思議なことを言うもんだ。俺は国を追われた、はぐれものだぜ」


「これだけの設計図を書くということは、相当な研究を積んでいる証拠だ。しかも、必要なパーツまで自らの工房で作り出している。……この人は間違いなく、本物の技術者だ。そして――」



 アルテオは設計図の核心を見抜く。



「この魔導船、飛べるよ」



 エイルの肩が、びくりと跳ねた。



「……わかるのか。これが」


「我がエタン王国でも国を挙げて研究しているが、船体の強度が足りず計画は止まっている。だが、君が作るこのパーツの構造なら、十分強度をクリアできるはずだ」



 そこからは、言葉の刃を交わしていた二人とは思えないほど、技術的な対話が熱を帯びた。


 エイルは、飛行実験で亡くなった両親の夢を継ごうとしていること。

 ドワーフ王からも見捨てられ「鉄屑飛ばし」と蔑まれながらも、この夢を諦めていないことを語った。



「……だがよ。形は出来ても、肝心の動力が確保できてねぇんだ。今の地熱オイルを燃料としたエンジンじゃ、この巨体は浮かねぇ」


「それなら、魔導石で解決すると思うよ。うちの国の乗り物は、大抵それを原動力にしているからね」



 アルテオの提案に、エイルが拳を固めた。



「……よし、わかった。あんたらの技術提供と引き換えだ。その剣、俺が打ち直してやる。ついてきな」



 案内された奥の倉庫には、天井を突き破らんばかりの巨大な建造物が鎮座していた。



「……なんと。エタンでもここまでのサイズのものは……」



 騎士オーウェンは度肝を抜かれ、クロードも驚きを隠せない。

 アルテオが腕を組み、考え込む。



「これほどのサイズとなると……魔導石も相当な大きさが必要になるな」


「だったら、廃鉱山に住み着いた大型の地竜がいるんだが、そいつなら大きい魔導石があると思うんだ」



 エイルの言葉に、クロードが頷く。



「それなら、十分な魔導石が手に入りそうですが……」


「地竜って、かなり強いよな?」



 ナバールの問いに、オーウェンが静かに剣の柄を握る。



「まあ、それくらい倒せなければ、我々の敵はもっと強大ですからな、ナバール様」


「決まりだな。エイル、俺の剣は預ける。必ず、最高の動力を持ち帰ってやる!」


「わかった魔導石と引き換えで、剣を打ち直してやるぜ」



 ナバールたちは、混血の鍛冶師エイルに希望を託し、魔導船の心臓を手に入れるべく地竜の住まう廃鉱山への出発準備をする。


最後までお読みいただき、ありがとうございます。


新キャラクター、エイルが登場しました。

ハーフドワーフゆえの葛藤と、亡き両親の夢を継ぐ職人魂。

一癖も二癖もある彼女ですが、その腕はアルテオも認める本物です。


果たしてナバールたちは、地竜を倒し、剣を打つための「動力」を持ち帰ることができるのか。

物語は、鉄の都の深部、暗い廃鉱山へと加速していきます。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ