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コンプレックスは最強の個性!? 〜二つの力を両立し、世界の架け橋となる王と愉快な仲間の行進曲〜  作者: 武徳丸


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エピソード63:旅立ちの風、それぞれの誓い

激動のエルフの里での戦いを終え、一行は次なる目的地を見据えます。



 朝日がエイシェンツリーの巨木の隙間から差し込み、森全体を黄金色に染め上げていた。

 木々の葉に残った夜露が光を反射し、まるで森そのものが俺たちの前途を祝して輝いているかのようだ。


 いよいよ、別れの時が来た。



 グラン・タウルスの重厚なエンジン音が、静かな森の空気を震わせる。

 アルテオが運転席で計器の最終チェックを行う傍ら、俺たちは見送りに集まった面々と向き合っていた。


 今回の旅立ちは、単なる別れではない。

 魔王ヴェルガーという巨大な影に対抗するための、戦略的な「分散と集中」を行うためなんだ。



 俺たち――ナバール、オーウェン、アルテオ、そしてクロードの目的地は、雲を突くような峻険な山々に囲まれた「ドワーフの国」。


 激戦を重ね、半ばから無惨に折れてしまった父の形見である「守護竜の牙」から作られた王家の剣を、ドワーフの神技によって再生させること。

 そして、頑固だが義理堅いドワーフ族と強固な軍事同盟を締結することが至上命題となる。



 俺は、腰に下げた二振りの剣に触れた。

 一方は、いまだ鋭い光を放ち、主の戦いを支え続ける「守護竜の爪」の剣。

 そしてもう一方は、魔族の猛攻に耐えかね、その牙を折られ沈黙している「王家の剣」。


 この折れた剣を蘇らせることこそが、真の意味で父を継ぎ、真の王となるための儀式のように俺は感じられていた。



 一方で、獣王国勢であるボナヴィスタ王とサイリーン皇子は、一万の獣人兵を率いて自国へと帰還する。膨大な軍の維持と統制、そして国内に潜む魔族への対策を急ピッチで進めなければならない。


 そしてエルフの里には、カイン、ルルーナ、カミュ、そしてアストリア王が残る。

 カインとルルーナは、自らのルーツであるエルフの力を制御し、潜在能力を開花させるための過酷な修行に入る。同時に、戦場となった森の浄化をアストリア王の指揮の下で行う。



「ドワーフの国で用件が済み次第、再びこのエルフの里に集結しよう。そこで、魔王軍を迎え撃つための最終的な作戦を練る」


 俺の力強い宣言に、アストリア王が深く頷いてくれる。


「承知いたしました。我らも、その時までに若き芽を立派に育て上げておきましょう。ナバール王も、どうかご武運を」



 別れの挨拶が進む中、オーウェンのもとにルルーナが歩み寄った。

 彼女の細い手には、獣の毛と植物の繊維を緻密に編み込んだ、不思議な紐状の飾りが握られている。


「オーウェン様……ちょっと手を出してほしいにゃ」


「これは……?」


 ルルーナは照れ隠しに耳をぴくぴくと動かし、オーウェンの太い手首にその『結び』を丁寧に巻き付けた。


「獣王国の隠密に伝わる、無事帰還するための守り結びだにゃ。……私の祈りも、ちょっとだけ込めておいたから」



 昨日、オーウェンが不器用に削り出した霊樹の腕輪への、彼女なりの精一杯の返礼だった。

 オーウェンはその結び目を愛おしそうに見つめ、琥珀色の瞳で真っ直ぐに彼女の目を見た。


「ありがとうございます、ルルーナ殿。この祈り、確かに預かりました。……私は王の盾。必ずやナバール様をお守りし、そして、必ずここへ戻ってまいります」


「……待ってるにゃ。もし遅れたら、承知しないにゃ!」



 二人の様子を少し離れた場所で見ていたサイリーン皇子が、口元を隠してクスクスと笑う。


「やれやれ、これではドワーフの国でもオーウェンの集中力が持つかどうか。ナバール王、教育係の様子をしっかり見ておかないといけませんな?」


「分かっているさ、サイリーン。……カイン、寂しくなるが、次会う時は手合わせしようぜ。ちゃんと強くなっておくんだぞ」


 俺が不敵に笑って拳を差し出すと、カインは顔を綻ばせ、力強く自分の拳を合わせた。


「おう! 次はエルダートレントのじいさんに胸を張って報告できるくらい、とんでもなく強くなってやるからな!」



「全員、乗ったね! 行くよ、タウロス発進!」


 アルテオの威勢の良い声とともに、グラン・タウロスがゆっくりと動き出した。

 窓の外では、カミュとダインが大きく手を振り、アストリア王が静かに杖を掲げて旅路の無事を祈っている。



「……行こう。世界を、ヴェルガーの好きにはさせない」


 俺の言葉に応じるように、車内のオーウェン、クロード、アルテオの瞳に鋭い光が宿る。


 巨木の間を駆け抜け、一行は未知なる技術と鉄の国、ドワーフの領土へと舵を切った。

 背後で遠ざかる見送る者たちの姿が、緑の海に溶けていく。

 だが、その心は『再集結』という一つの約束で、かつてないほど強く繋がっていた。



 森を抜けた先には、険しく峻烈な山脈が待ち受けている。

 俺は、腰の折れた剣に指を触れ、遥か高みの青空を見上げた。


 風は、西から吹いている。

 牙を失った龍が、再びその咆哮を上げるための旅が始まった。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。


それぞれの想いを胸に、再会を誓い合った一行。

ルルーナの守り結びを手首に巻いたオーウェン、そして次なる強さを求めるカイン。

別れは寂しいものですが、それは未来の勝利のために必要な「準備」でもあります。


次回からは「ドワーフの国編」がスタート!

気難しいドワーフたちを相手に、ナバールは失われた剣をどう蘇らせるのか。

そして、アルテオの魔導技術とドワーフの鍛冶技術が合わさったとき、何が生まれるのか――。


波乱の予感に満ちた新たな旅を、どうぞお楽しみに!


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