表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
コンプレックスは最強の個性!? 〜二つの力を両立し、世界の架け橋となる王と愉快な仲間の行進曲〜  作者: 武徳丸


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

6/64

エピソード5:混血の竜人化

真っ白な空間で待ち受けていたのは、始祖たる守護竜セト。

そして、ナバールが最も向き合いたくなかった「己の弱さ」でした。



 扉の奥は、どこまでも純白に輝く、息を呑むほど美しい空間だった。


 その中央に、圧倒的な存在感を放ちながら、優雅に浮かぶ竜の姿があった。



 全身が真珠のように輝き、一つとして汚れたところのない純粋な美しさを持つセト。

 竜人族の始祖にして、この祠の守護者。


 彼女の瞳は、数千年の時を超えてすべてを見通すかのように、私を真っ直ぐに見つめていた。



「よくぞ参った、アランの息子よ」



 セトの声は、清らかな泉のせせらぎのように心地よい、慈愛に満ちた女性の声だった。



「お前の血は、竜の誇りと人の優しさ、その両方を持つ。それは、これから始まる混沌の時代において、断絶を繋ぐ力となる。だが、その混ざり合った血がお前にもたらす『迷い』こそが、今お前が打ち克つべき敵だ」



 セトの横に光が収束し、私と全く同じ容姿の幻影が出現した。



「試練は、お前自身との戦い。お前が最も見たくない、己の弱さの姿だ」



 幻影の私は、嘲るように笑った。


「その剣を構えるのか、半端者。鱗もない、翼もない。お前の内に流れる竜の魂は、この醜い人間の肉体に閉じ込められている。お前には、純血のドラグーンを率いる資格などない!」



 幻影の言葉は、私が心に押し込めていたコンプレックスを直撃した。

 幻影は完璧な魔法制御で四属性の呪文を連射し、私を執拗に追い詰めてくる。



「うるさい! 私がこの姿だからって、何だ……っ!」



 恐怖と怒り、そして迷いが魔力に乱れを生じさせる。

 力が霧散しそうになった瞬間、父の静かな訓示が甦った。



『自らの弱さと、愛する者のために立つ勇気だ』



 私は目を閉じた。


 そうだ。父も母も、この姿の私を愛してくれた。

 私の強さは、外見の完璧さなどではない。


 この血こそが、ドラグーンとエタン魔導国、そして他の種族を繋ぐ希望の鎖なのだ。



「これが、私の『竜の魂』だ!」



 私は無理に鱗や翼を出そうとするのをやめ、全身の魔力を、母から受け継いだ「人間の肉体」そのものへと集中させた。



 内側から熱が噴き出し、身体能力が限界を超えて向上する。


 混血である私が、初めて完璧にコントロールできた「人間姿の竜人化」だった。



 外見は変わらずとも、その内なる力は、純血の竜人族に匹敵する強靭で淀みのないものだ。

 私は一瞬にして加速し、二刀流の剣を幻影の懐に突き込んだ。



キンッ!



 幻影の剣が砕け、その体が光の粒となって霧散していく。



 セトは満足そうに頷いた。


「よくぞ、己の姿を受け入れた。真に王の器を持つ者だ」



 セトは優雅な前足を上げると、純白の鱗の間から竜の紋章をかたどったペンダントを出現させ、私の首元にそっと掛けた。



「これこそが、お前の王位継承権の証だ」



 次に、セトは自らの鋭い爪の一本を抜き、それを一瞬で私の左手に持つ短い剣へと変じた。

 それは白銀に輝き、神聖な力を秘めている。



「この剣『白竜のはくりゅうのつめ』は、お前の血が真の価値を持つ時、世界の混沌を迎えるための特別な備えだ。混血の力は、時に不安定になり、竜人化を乱す。その短剣はお前の魔力の乱れを抑え、あらゆる魔の力を断つ調律の剣となるだろう」



 セトは私へ、静かで力強い訓示を与えた。



「ナバールよ、心に刻め。『断絶を恐れるな。お前の血が、世界を繋ぐ真の鎖となる』。お前が迷った時、この言葉を思い出し、前に進め。それがお前の進むべき道だ」



 私は深く一礼し、証と剣を受け取った。

 短剣は光の粒子となって左手に吸い込まれていく。



 竜の間を出ると、オーウェンが安堵の表情で駆け寄ってきた。



「ナバール様! ご無事で! そのペンダントは……」



「ああ、オーウェン。見ての通りだ」


 私は笑い、胸元のペンダントに触れた。

「試練は合格だ。父さんから受け継ぐための、最初の証をもらったよ」



 帰路の道中、私は大きな勇気と安心感に満たされていた。

 混血であるというコンプレックスは、もう私を縛らない。



 しかし、セトが幾度となく口にした「世界の混沌」という言葉と、特別な短剣の存在が、私の心に微かな胸騒ぎを残していた。



 これは、ただの成人の儀では終わらない。


 これから、何か大きなことが始まる予感だった。


エピソード5をお読みいただきありがとうございます。


自分を認め、ありのままの姿で戦う。

ナバールがコンプレックスを乗り越えた瞬間、彼は真の意味で「王位継承者」となりました。

授けられた短剣『白竜の爪』。

セトが案じた「世界の混沌」とは何を指すのか、物語は静かに加速していきます。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ