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コンプレックスは最強の個性!? 〜二つの力を両立し、世界の架け橋となる王と愉快な仲間の行進曲〜  作者: 武徳丸


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エピソード37:同盟樹立

 カインたち遊撃隊の案内により、一行はついにベンドア獣王国の王都へと到着します。


 ドラグーン、エタンに続く三国目の主要国家。その王宮で待っていたのは、厳かな威厳を纏う獣王でした。

 これまでの騒乱の決着をつけるべく、若き王ナバールは交渉の場に臨みます。


 国家間の重大な局面と、そこで下された意外な決断の行方をお楽しみください。


 カインたち遊撃隊という頼もしい案内人を得て、俺たちはベンドア獣王国の王都を目指した。


 辿り着いたその場所は、俺がこれまで見てきたドラグーンやエタンの石造りの街並みとは、全く異なる趣を持っていた。

 城壁から建物に至るまで、そのほとんどが精巧な木造建築で構成されており、随所に繊細な彫刻や装飾が施されている。


 落ち着いた色合いの中に、獣人族特有の高級感と自然との調和を感じさせる、厳かな和の佇まい。

 俺は思わず、その美しさに圧倒されそうになった。



 カインの先導により、俺たち四人は王宮へと通された。


 謁見の間で俺たちを待っていたのは、現国王ボナヴィスタと、その息子である皇太子サイリーンだった。

 二人はライオンを彷彿とさせる威厳に満ちた佇まいだが、その鋭い眼差しの中には、確かな誠実さが滲んでいる。


「ドラグーン国王ナバール殿、エタン魔導国王アルテオ殿。そして、お二人の優秀な家臣の方々。遠路はるばる、よくぞ参られた。……また、我が国の者の愚かな行動により多大なるご迷惑をおかけしたこと、まずは心よりお詫び申し上げる」


 国王ボナヴィスタが、玉座から立ち上がり、深々と頭を下げた。

 これには俺も驚き、慌てて言葉を返した。


「……顔をお上げください、ボナヴィスタ国王陛下。私たちは、真実を伝え、手を取り合うために参ったのです」



 その隣で、カインが前に進み出て、事の経緯を包み隠さず報告した。


「国王陛下、皇太子殿下。一連の襲撃は、すべて私の短絡的な早とちりによるものでした。敵は魔族であり、ナバール国王様とアルテオ国王様は、我々を助けに来てくださったのです」


 カインは、自分がナバールに叩きのめされたこと、そしてアルテオの「回復薬」によって二度と逆らえない体になったことまで、涙ながらに報告した。



 報告を受けた皇太子サイリーンは、深い溜息をつくと、跪くカインを冷ややかな目で見下ろした。


「カイン……。お前は本当に愚かな虎だな。よりにもよって、ドラグーンとエタン、二つの友好国のトップに刃を向けるとは。しかも、二度もだ」


「も、申し訳ございません……!」


「一つ目の襲撃でクロード殿の魔法から逃げ延びた部下二人が、お前がタウロスを襲った後もずっとナバール殿たちの動向を監視し、状況は逐一報告を受けておったのだぞ。……それなのに、まさか、たった一人の魔族が化けた村人の戯言で、また斬りかかるとはな。もはや驚きを通り越して呆れるわ」


 カインは耳を伏せ、モフモフした自慢の尻尾を小さく丸めて縮こまっている。



「ナバール国王様、アルテオ国王様。本来ならば、カインの行為は友好国への敵対行為として死罪に値します」


 国王ボナヴィスタが、再び厳かな声で口を開いた。


「しかし、あなた方は、その愚かな虎を生かし、治療し、縄を解いてくれた。……私はその寛大さに、心から感謝いたします。我々ベンドア獣王国は、ドラグーン王国、エタン魔導国と同盟を結び、共通の敵である魔族に対し、即座に協力体制をとることをここに約束いたします」


 俺は、隣に立つアルテオと顔を見合わせ、深く頷いた。


「……ボナヴィスタ国王陛下、ありがとうございます。これで、私たちは心置きなく魔族に対抗できます」



 交渉が成立し、安堵の空気が流れた。……だが、国王はここで驚くべき提案を口にした。


「それから、もう一つ。今回、カインが貴殿方に多大な迷惑をかけた埋め合わせとして……カインを連れていってください」


「……は?」


 思わず、変な声が出た。

 カインもまた、信じられないものを見るように顔を上げ、目を見開いている。


「我が国の遊撃隊隊長ではありますが、あまりにも短絡的で、騙されやすく、使い物になりません。ですが、戦闘能力だけは確かに高い。貴殿方の旅の邪魔であれば、そのままその辺に捨てていただいても構いません。ナバール国王様、彼を自由に教育し、好きなように使ってください」


 皇太子サイリーンも、無情な追い打ちをかける。


「ああ、ぜひ捨ててやってください。こいつは隊長という地位を利用して、我々にも散々迷惑をかけてきましたのでな。遊撃隊は現副隊長を隊長に昇格させます。お前はもう用済みだ、カイン」



「で、殿下! そんな……! 俺は、俺はもう二度と裏切りません! 国王陛下、俺はまだお役に立てます!」


 カインは今にも泣き出しそうな顔で訴えたが、ボナヴィスタ国王は冷たく鼻を鳴らした。


「お前はまず、頭を冷やし、国王の命令に従え。……これでやっと、我が国の最重要戦力が、世界一危険な料理の使い手であるアルテオ殿の側に貼り付くことになる。ナバール殿の旅の戦力としても、我が国のカインを再教育してもらえるという意味でも、これは大きな国益なのだよ」



「最悪の料理? 心外だな、最高のリカバリー料理ですよ!」


 アルテオがムッとして反論したが、カインの顔は絶望に染まっていた。



 こうして俺たちは、ベンドア獣王国の確固たる協力を得ただけでなく、最高の戦闘能力を持ちながらも「国王に裏切り者呼ばわりされ、友好国に丸投げされる」という不名誉を背負った護衛を手に入れた。


 それも、アルテオという強力な「手綱(劇薬)」付きで。



 カインは、俺たちの後ろで、モフモフの尻尾を地面に力なく引きずりながら、再び旅路につくことになった。


 彼の背中は、どこか哀愁に満ちていたが……不思議と、俺たちの旅はさらに賑やかになりそうな予感がしていた。


 ご清読ありがとうございます。


 無事に三国の同盟が締結されたエピソードでした。

 国家としての信頼関係が結ばれる一方で、個人の扱いとしては非常に不憫なことになってしまったカインですが、彼の高い戦闘力はこれからの旅において、ナバールたちを支える大きな力となるでしょう。


 王都での一件を経て、一行にはまた新たな風が吹き込みました。


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