エピソード19:王都への生還
メリー・クリスマス!……と言いたいところですが、ナバールたちにとってはそれどころではない「地獄」が幕を開けます。
前回、賢王アルテオが自信満々に披露した謎の乗り物『魔導ホバー』。
一刻も早く王都へ戻らなければならないナバールたちにとって、それは希望の光に見えましたが……。
世の中、そう上手い話ばかりではありませんでした。
16歳の若き王と、生真面目すぎる騎士オーウェン。
二人の限界を超えた「音速の旅」が始まります。
暴走特急の地獄
こうして、俺とオーウェンは、底抜けに明るい賢王アルテオが運転する、世界初の魔導ホバーに乗り込むことになった。
魔導ホバーは、出だしから尋常ではない速度で加速した。
地面から数センチ浮いて走行しているため、道の凸凹は一切関係なく、衝撃が体に伝わることはない。
しかし、その代償として、スピードと浮遊感、そして上下左右の立体的な揺れが凄まじく、船酔いどころではない酷い吐き気に襲われる。
「最高だ! 出力は予想を二割上回っている! 空気抵抗を計算したこの流線型のデザインは正解だったな!」
アルテオはノリノリで運転を続け、俺たちの話など全く聞いていない。
ずっと性能や出力、改善点を叫んでいる。その声すらも、風を切る轟音にかき消されがちだった。
オーウェンは青白い顔で、ひたすら王子の護衛騎士としての意地を張り続けていた。
「ナ、ナバール様、ご心配なく。私はオーラを全身に纏って、この揺れを相殺しています。平気です!」
そう言っているが、彼の全身から滲み出る汗と、今にも痙攣しそうな唇は、その言葉が真っ赤な嘘であることを雄弁に物語っていた。
俺は、胃の中のものが全て逆流しそうになりながら、ホバーの側面に顔を押し付けて呻くしかなかった。
「う……嘘だろ……王都まで、あと何日……かかるんだ……」
昼休憩も、夜の宿も、食事が喉を通らない俺たちに比べ、アルテオは終始元気そのものだった。
「ナバール、オーウェン! もっと食べないと! 魔導ホバーの素晴らしさを語り合うエネルギーが枯渇しちゃうよ!」
そう言って、一人で三倍ほどの食事を平らげる姿は、俺たちにとっては純粋な拷問だった。
しかしながら、流石は魔導ホバー。その速さは、俺の予想を遥かに超えていた。
地獄のような二日間を耐え抜き、俺とオーウェンが憔悴しきった顔で降り立った場所は、まぎれもなくドラグーン王国の王都の門前だった。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
ナバールとオーウェンの「地獄の二日間」。
アルテオ陛下の無邪気な残酷さと、三半規管を破壊された二人の姿に、思わず胃のあたりがソワソワした方も多いのではないでしょうか。
そんなボロボロの二人……いえ、読者の皆さまへ、**本日この後、特別な「聖夜の贈り物」をお届けします!**
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**【本日 20:00 配信予定】**
**エピソード19.5:閑話・ドラグーンのクリスマス**
本編の緊張感をひととき忘れ、雪の降り積もるドラグーン王国で起きる、一夜限りの不思議で温かな物語です。
……またしても拉致されるオーウェンの絶望的な叫びと、聖夜の空に舞い降りる「最高のプレゼント」をどうぞお見逃しなく。
今夜20時、どうぞお楽しみに! メリー・クリスマス!
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