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コンプレックスは最強の個性!? 〜二つの力を両立し、世界の架け橋となる王と愉快な仲間の行進曲〜  作者: 武徳丸


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エピソード18:賢王の狂気

エタン魔導国での滞在を終え、帰路に就こうとするナバールとオーウェン。

静かな見送りを予想していた二人の前に現れたのは、轟音を上げる謎の鉄塊でした。

発明王アルテオの「友情」という名の暴走が、今、幕を開けます。


 エタン魔導国からの全面的な支援、そして国際的な声明の約束を取り付けた私とオーウェンは、母上にこの吉報を伝えるため、急ぎドラグーン王国へ戻ることにした。


 城門の前には、近侍のクリスが一人、スーツ姿で立っていた。

 クリスは淡々と私たち二人に一礼した。


「ナバール王、オーウェン騎士団長。この度は誠にご苦労様でした」


「クリス。アルテオと、イーデル、ボネットは……?」


 クリスは深くため息をつきそうになるのを一瞬こらえ、極めて事務的に説明した。


「陛下と大魔導士のお二人は、国際的な声明文の最終確認と、貴国への援助物資の準備に追われており、誠に申し訳ございませんが、今回はお見送りが叶いません。彼らは今、同盟国としての責任を全うしている最中ですので、ご容赦ください」


 私は頷いた。

「そうか。分かった。皆に感謝を伝えておいてくれ」



 オーウェンが馬車での帰路を提案しようとした、その時だった。


「それでは、すぐに馬車を準備してまいりま……」


 オーウェンの言葉を遮るように、城門の外から、地面を震わせるような轟音と、甲高い風切り音が響き渡った。


 私とオーウェン、そしてクリスが目を向けた先にあったのは、巨大で派手な、鉄のソリのような乗り物だった。

 車輪はなく、底面から発生させた強力な魔力で地面を数センチ浮上している。機体には無駄に速そうなエアロパーツと、金色の派手な装飾が施されていた。


「世界で初めての実用化さ! 魔導ホバーだよ!」


 アルテオが、いつもの白衣に流線型の真新しいレーシングゴーグルを着用して、ホバーの横から飛び出してきた。彼の興奮は最高潮に達している。


 彼の隣には、先ほどまで「援助物資の準備に追われている」はずのイーデルとボネットまでもが、つなぎの整備服に着替えて工具を手にしていた。彼らは魔導ホバーの機体を磨き上げながら、まるで少年のように目を輝かせている。


「これさ、ちょうど君が帰るから、僕が実験を兼ねて初走行を担当することにしたんだ! イーデル、ボネットも準備万端だってさ!」


 私とオーウェンは顔を見合わせ、引きつった笑みを浮かべた。



 オーウェンが恐る恐る尋ねた。

「アルテオ陛下……これ、まさか、王様自ら操縦するのですか?」


「当たり前じゃないか! 僕の最高傑作だ! 僕の本気の運転を見せてあげるよ! さあ、乗り込め!」



 オーウェンは一縷の望みを託し、アルテオの護衛である大魔導士たちに助けを求めた。


「イーデル殿、ボネット殿! 陛下の暴走を止めてください! 他国の国王を実験台にするのは、外交上問題があります!」


 しかし、親友の訴えは届かなかった。


「騎士団長殿、何を言っているのですか! これは陛下の長年の夢! 魔導ホバーの整備こそ、最高の栄誉!」

 イーデルが、熱く声を荒らげる。


「車体のワックスがけは完璧だ! アルテオ、魔力炉の出力も史上最高だぞ! あとは運転技術のみ!」

 ボネットもハイテンションで、王を呼び捨てにしながら続いた。



 私は、この狂気の光景にただ呆然とする。

 そして、つい今しがたまで冷静沈着な対応をしていたクリスが、額に手を当て、深い溜息をついた。


 クリスはアルテオたちに向かって一歩踏み出し、苛立ちを隠さずに問い詰める。


「陛下、イーデル殿、ボネット殿。いい加減にしてください。ドラグーン王国の国王を、暴走しかねない実験機に乗せて帰らせるなど、正気ですか」


「そして、三十分ほど前に私を騙してナバール王とオーウェン騎士団長に嘘をつかせたのは、どなたでしたか? 王様というより、お子様ですね」


「特に大魔導士のお二方。あなた方は陛下のブレーキ役であるはずですが、どうしてその格好で目を輝かせているのですか。子供の夏休みですか?」



「うるさいぞ、クリス! これは実験じゃない! 友情の帰路だ!」

 アルテオがゴーグルの上からクリスを睨む。


 クリスは一瞬、アルテオを冷たい目で見据えた後、私とオーウェンに淡々と告げた。


「ナバール王、オーウェン騎士団長。私の使命は、派遣部隊の管理と防衛結界の構築です。私はこの王様のおもちゃには乗りません」


「私は後日、常識的な速度と手段で技術者たちと共に向かいますので、ご安心を。もし、この魔導ホバーが途中で分解したり爆発したりしたら、私が遺体を回収します」


 クリスはメモ帳に一行書き加え、静かに門の中へと引き返していった。


 私は諦めの境地で、オーウェンに囁いた。

「オーウェン、もういい。これは……誰にも止められないやつだ」


「は、はい……」

 オーウェンは震える声で、そう答えるしかなかった。


最後までお読みいただき、ありがとうございます!


シリアスな外交交渉を終えたと思ったら、親友の「発明狂」にすべてを台無しにされたナバール。

クリスの「子供の夏休みですか?」という冷ややかなツッコミが刺さりますね……。

果たして魔導ホバーは爆発せずにドラグーン王国へ辿り着けるのでしょうか。


さて、ここで皆様に**クリスマス・プレゼント**のお知らせです!


明日、12月24日はクリスマスイブ。

日頃の感謝を込めまして、明日の夜、特別なエピソードを配信いたします!


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

**12月24日(水) 20:00 配信予定**

**【閑話】ドラグーンのクリスマス**

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


本編とは少し趣の異なる、聖夜の一夜を描いた特別編です。

ぜひ、明日の更新を楽しみにお待ちください!


さらに、私が執筆しているもう一つの現代編作品でも、明日20時に「クリスマス特別編」を同時配信いたします。


▼北海道の夜道で過ごす、少し甘い聖夜

『小説の主人公になれない理由は~(通称:カエル道)』

https://ncode.syosetu.com/n7733ll/


異世界のクリスマスと、現代のクリスマス。

明日の夜はぜひ、二つの物語と共に素敵な聖夜をお過ごしください。


ひとまず……メリー・クリスマス(イブ前夜)!


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