暮らしを守る
「……今日は“もしものとき”に備えて、ちょっとした修理や工夫を学びましょう!」
コーデリアの声が小屋に響くと、集まった子どもたちや若者たちが、手にした道具をわくわくした表情で見つめた。
「屋根に穴が開いたときは?」「水が止まったら?」「灯りが使えなくなったら?」
それぞれの問いに、年配の講師たちが手を動かしながら答えていく。
「この藁縄の結び方、しっかり覚えておくといいよ。荷物をまとめたり、骨組みを縛ったり、いざって時に使えるからね」
「ろうそくの代わりに、油と布でランプを作る方法もあるよ。火には気をつけなきゃだけど」
「壊れた木の椅子もね、ここに小枝を挟んで補強すれば、まだまだ使えるんだよ」
リュカは薬草をすりつぶしながら、簡単な消毒薬や冷却材の作り方を子どもたちに教えていた。
「傷に効くのはこの葉。でも、感染を防ぐには清潔が大事。水がなかったら……?」
「蒸気で拭く!」
「布を焼いて使う!」
「よし、ばっちり覚えてるな」
子どもたちは目を輝かせてメモを取りながら、小さな実験を試していく。
壊れかけた桶の補修、簡易な雨避けの骨組み、石と土での炊き出し用かまどの作り方など、知恵と工夫が次々に伝授されていった。
その様子を、少し離れた場所からユリウスとコーデリアが見つめていた。
「……なんだか、思い出すね」
「うん。前世では、避難訓練ってあったよね。火事や地震に備えて」
「校庭に並んだり、防災頭巾を被ったり……懐かしい」
コーデリアはふっと笑った。けれどその目には、深い想いが宿っていた。
「何かが起きてからでは遅い。……だから、こうして準備しておくのは、怖いことじゃないのよね。安心して生きるために、知っておくこと」
「それに……皆、楽しそうだ。誰かを守る力を持つって、誇りになるんだな」
ユリウスはそう呟いて、学びの小屋の賑やかな光景に目を細めた。
そこに集う子どもたちは、ただ読み書きを覚えるだけでなく――
小さな勇気と知恵を、確かに積み重ねていっていた。




