試作品完成
薬師リュカの家。干したびわの葉と他の鎮静作用のある薬草を合わせ、細かく刻んで布に包んだ湿布が机の上に並んでいた。
「よし……第一号、完成」
ほこりを払いながらリュカが手に取ったのは、ほんのり薬草の香りがする小さな包み。体温でじんわりと効果が出るよう工夫した手作りの一品だった。
「すごいわ!なんだか本格的ね」とコーデリアが目を輝かせる。
「まだまだ改良の余地はあるけど、これなら一応“試す”ことはできるはずだ。身体に直接貼るからこそ、使ってもらった人の感想が必要なんだ」
「じゃあ、早速配ってみましょう!」とユリウスも腕をまくった。
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数日後。コーデリアたちは、孤児院や市場近くの貧民街で湿布を使ってもらえそうな人たちに使用をお願いしていた。使ってもらう条件はひとつ、「感じたことを正直に伝えてもらう」こと。
侯爵家の使用人の案内で、小さな家々を回っていくと、ある年配の女性が布団から身を起こして言った。
「……あの湿布、なんだか背中の重たさが減った気がするよ。あたし、歳だからか朝起きるといつもだるくてねぇ。何か薬でも入ってるのかい?」
「薬というより、自然の葉の力を使ってるの。びわの葉には、熱や痛みを和らげる効果があるのよ」とコーデリアが優しく説明した。
別の家では、腰をさすっていた父親が子どもに湿布を貼ってもらっていた。
「最初はただの草かと思ったが……んん、妙に楽になるな。気のせいか?」
「気のせいじゃありません。あっちでも似た反応があったそうです」とユリウスがノートにメモを取りながら微笑んだ。
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帰り道。皆の記録を聞いたリュカは、緊張した面持ちでぽつりとつぶやいた。
「正直、僕は……これが本当に効くのか、自信がなかった。でも、こうして使ってくれる人がいて……“楽になった”って言ってもらえると……なんだか……」
「リュカさん、泣いてます?」とコーデリアがそっとのぞき込む。
「泣いてない、鼻がむずむずしただけだ!……けど、こんな風に、人の役に立てるって……嬉しいもんだな」
アレッサンドロが、そっとリュカの背を叩いた。
「君の知識と手があったから、ここまで来られたんだ。胸を張れ」
リュカは照れくさそうに頭をかきながら、でも、目はきちんと笑っていた。
こうして、“びわ湿布治験計画”は、第一歩を確かに踏み出した。




