びわと思い出。
コーデリアがカップを持ったまま、ふと笑い出した。
「ふふ、ごめんなさい。今ちょっとね、このお菓子を見て思い出しちゃったの」
ユリウスが首をかしげる。
「思い出?」
「ええ……前世の私たち、歳をとってからも、こうしてふたりでお茶を飲んでたじゃない?田舎の小さな家で、縁側に並んで座って。春の終わりには、庭のびわの木がたくさん実をつけてね……」
「……懐かしいな」
「あなた、びわが好きだったわよね。縁起が悪いって言う人もいたけど、『おいしいから植えるんだ』って無理に庭に植えて。実を狙ってくる鳥たちとも、よく喧嘩してたわ」
ユリウスは小さく吹き出す。
「……あまり覚えていないけど、なんとなく、すごく僕らしい」
「でしょ?実を冷やしておいて、お風呂上がりに並んで食べるのが楽しみだったわ。」
「…君はびわの種を焼酎に漬けてたよね。確か……歯が痛いときに飲んでたような」
「ええ。あれでうがいするのが一番効くのよ。化粧水代わりにも使ってたわね」
コーデリアは、目を細めて笑う。
「懐かしいわ。今世でも、また、そうやって季節を楽しめたらいいなって思うの」
「うん。きっとできるよ。今度はもっとたくさん、思い出を作りたい」
コーデリアはユリウスの目を見つめ、穏やかに微笑んだ。
「じゃあ……まずは、庭にびわの木を植えなきゃね」
「うん。落ちても平気なくらい低い木にしてくれよ?」
ふたりの笑い声が、初夏の光の中にやさしく溶けていった。




