表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪役令嬢、前世は優しいおばあちゃんでした!ー連載版  作者: ちょこだいふく


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

27/90

未来を思い出す

ガゼボの中、三人はしばらく言葉を失っていた。

花の香りも、柔らかな風も、さきほどまでとは違って感じられるほどにーーー心の奥が静かに揺れていた。


その時だった。


ふと、風が止まった。

葉が擦れる音も、鳥の声も、まるで世界が一瞬で止まったかのように消え去った。


「……あれ?」

コーデリアが小さくつぶやいた。


空気が変わった。温度でも匂いでもない、“何か”が切り替わったと、誰もが感じた。

コーデリアが空を見上げたその瞬間、青空がゆっくりと白く滲みはじめる。


「これは……」

アレッサンドロが反射的に立ち上がった。


だが、動こうとした足は、不思議と地に根を張ったように動かない。

恐怖ではない。ただ、「ここにいなければならない」ーーーそんな感覚に包まれていた。


次の瞬間、まばゆい光がガゼボの屋根を抜けて降り注ぎ、三人を優しく包み込んだ。



ーーーー


そして、気づけばそこは、“光”だけでできたような空間だった。


地面も空もない。音も匂いも消えた、ただ白く、どこまでも広がる場所。

それでも、奇妙な安心感があった。


「ここは……夢の中で見た場所と同じ……?」

コーデリアが小さくつぶやく。


その問いに応えるように、柔らかく、けれど芯のある声が響いた。


「ようこそ、記憶を宿す者たちよ」


声の主が姿を現す。光そのものが形になったような存在。

輪郭はぼんやりとしていて、男でも女でもない。けれど、そこには確かに“意思”があった。


「あなたたちの魂は、時を超え、幾度となく出会ってきました。

 いくつもの体験を重ね、今ふたたび、ここで出会っています」


ユリウスがそっとコーデリアの肩に手を置いた。

アレッサンドロは無言のまま、慎重にその存在を見つめている。


「この世界には、同時に数多くの未来が存在しています」

光の存在は、穏やかに語りかける。


「けれど、その中には破滅の影が落ちるものもある。

 そしてその多くに、“コーデリア”の選択が深く関わっているのです」


コーデリアは肩を震わせた。

その言葉を、きっといつか聞くことになると、心のどこかでわかっていた。


「あなたが持つ“影響の力”は、周囲に良くも悪くも作用する。

 心が光に向けば、人々を癒す。けれど、闇に傾けば、世界すらも染めてしまう」


「……闇に傾いた私がいた世界線も、過去にあったのですか?」

コーデリアはかすれた声で尋ねた。


「“過去”とは少し違います」

光は優しく語る。


「世界は生まれた瞬間に、終わりもまた生まれます。

 時間とは、過ぎるものではなく、すでに在るものなのです。

 未来はまだ確定していません。けれど、同時に“未来を思い出す”こともできるのです」


「未来を……思い出す?」

コーデリアが問い返す。


「理解するには時間が要るでしょう。けれど確かに、未来はもう“在る”のです。

 そして、今のあなたが未来を“創る”立場でもあります」


「今回、コーデリアとユリウスには、全く別の世界線での記憶を思い出してもらいました。

 それが、必ず良い方向へ導くと信じています。そして……コーデリア。あなたには、この力を託しましょう」


そう言った瞬間、光の粒がコーデリアの胸元にゆっくりと吸い込まれていった。

それはまばゆく、けれど暖かい、春の陽だまりのような光だった。


「これは“導き”です。

 この世界で起こることは、他の世界にもわずかに影響します。迷ったときは、自分の心に耳を傾けてください。あなたの心が道しるべとなるでしょう。」


その声は、やがて遠くなっていく。


「どうか、忘れないで。あなたたちは、“選ばれた”のではありません。

 ーーーーー“選んで、ここにいる”のです」


白い光が満ち、世界がふたたびゆらめいた。




ーーーーーー


気がつけば、三人は元のガゼボにいた。

風が戻り、鳥のさえずりがいつものように聞こえている。


「……夢、じゃないよね」

コーデリアの声が小さく震える。


ユリウスはそっとその手を取った。


「うん。確かにそこにいた。……僕たち、ちゃんと。」


アレッサンドロはふたりを見つめ、静かに息を吐いた。


「……不思議なことだが、今は信じられる気がする。

 この世界のことも、君たちのことも。……コーデリアの未来のために、俺も向き合うよ」


風が蔦を揺らし、朝の光が差し込む。


三人のあいだに漂う空気は、もう“偶然”や“他人”ではなかった。

それは、新しい物語の始まりを告げる、確かな絆だった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ