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悪役令嬢、前世は優しいおばあちゃんでした!ー連載版  作者: ちょこだいふく


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26/90

おじいさんとおばあさん

コーデリアとアレッサンドロ、ユリウスの3人は公爵家の庭の奥にあるガゼボで話をすることになった。



ガゼボに流れる空気には、花の香りと朝露の清らかな気配が混じっていた。


少しの沈黙のあと、コーデリアがそっと口を開いた。


「ねえ…お兄様、これから、わたしとユリウスさんでちょっと不思議な話をしてもいい?」


アレッサンドロは視線を向け、小さく頷いた。


「わたしたち、前の人生でね、結婚していたの。おじいさんとおばあさんになるまで一緒に仲良く暮らしていたわ。そこは静かな“日本”っていう平和な国で、小さいけどあったかいお家に住んでたの。ご飯を一緒に食べたり、お庭でお花を育てたり…すごく優しくて、安心できる毎日だった。ふたりで、どうでもいいことで笑って……それだけで幸せだったの」


「僕にも、その記憶があるよ」とユリウスが続けた。


「その人生では、僕たちはただの庶民。戦いも、呪いもない、普通の老夫婦だった。ただ、夕飯の献立に悩んで、孫たちが遊びに来るのを楽しみにして……そんな、穏やかな時間だった」


コーデリアが小さく笑う。


「あなたが“おじいさん”で、わたしが“おばあさん”。……ちょっと変な感じだけど、でも、あの人生がすごく好きだったの」


アレッサンドロの表情が、ほんのわずかに緩んだ。


「……君たち、本当に変わってるな。けど……その話には、まだ続きがあるんだろう?」


ユリウスの表情が曇る。


「ええ……それからまた別の人生で、僕たちは再び出会ったんです。あれが未来なのか、それとも別の世界線なのか、はっきりとはわからないので断言はできません。でも……その世界では、コーデリアが“周囲に与える影響を強める力”を持つ存在として、暴走してしまった」


「……“影響を強める力”……」と、アレッサンドロが眉をひそめた。


「その力のせいで、誰も彼女に逆らえなくなった。結果として、世界そのものが蝕まれていったんです。……でも、僕だけは“聖なる力”のおかげで影響を受けず、彼女のそばにいることができた。信じていたんです。彼女の心の奥に、まだ光があるって」


「そして……彼は、わたしを止めてくれた。命をかけて」

コーデリアの声が少し震えた。アレッサンドロは、黙ってそれを聞いていた。


「前世を思い出したときに……たぶん、神様のような存在だと思うけど、言われたの。“この世界を少しでも良くしてください”って」


ユリウスが、驚いたように彼女を見た。


「……前世がどうであっても、今の君は5歳の子どもだ」と、アレッサンドロが静かに口を開いた。「だが、それを夢でも幻でもなく“記憶”として話すならーー俺はそれを、信じるしかないのかもしれないな」


ユリウスが深く頭を下げる。


「ありがとうございます。今度こそ、コーデリアの心が壊れないように。前世の二人のように、笑顔で過ごせるように、全力を尽くします」


しばらく何も言わなかったアレッサンドロは、やがてそっと手を伸ばし、コーデリアの頭を優しく撫でた。


「……ああ、わかった。妹の“これから”は、お前の“これまで”を越えていくんだろう。なら……俺も、それに付き合っていくさ」


風が、ガゼボの蔦をやさしく揺らしていた。


三人の間に流れる静けさは、もう“他人”のものではなかった。

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