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悪役令嬢、前世は優しいおばあちゃんでした!ー連載版  作者: ちょこだいふく


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17/90

コーデリア現象?

陽の光がやわらかく降り注ぐ昼下がり。

アレッサンドロは、メイドから聞いた話をまだ半信半疑のまま、馬車の窓越しに街の様子を見下ろしていた。


「“コーデリア様ごっこ”?…なにそれ。挨拶をちゃんとする遊びって、どんな遊び…?」


隣では、コーデリアが窓の外を眺めながら楽しそうに微笑んでいる。


「お兄様、久しぶりの街はどう? いいお天気でよかったわね」


「…ああ。あいかわらず、庶民の活気はすごいな!」


馬車が街の広場に近づくにつれて、人の数が増えていく。

市の日とあって、通りは子どもや買い物客でにぎわっていた。


馬車が止まると、コーデリアはスカートの裾をつまんで、ひらりと軽やかに降り立つ。

その瞬間――


「わっ、コーデリア様だ!」

「ほんとだ!知恵袋のコーデリア様!」

「この前、お祖母ちゃんが助けられたんだよ!」


わっと人だかりができた。

子どもたちは目を輝かせ、大人たちも微笑みながら帽子を取って挨拶する。


「お日さまの下では、笑顔が一番!…でしたよね?」

「“ありがとうは魔法の言葉”って言うんだよ!」


アレッサンドロは、ぽかんと口を開けたまま立ち尽くしていた。


「……本当に流行ってるのかこれ……?」


パン屋の店先では、焼きたてのバゲットや丸パンが香ばしく並んでいる。

奥から出てきた店主の奥さんが、笑顔で声をかけた。


「まあまあ、コーデリア様! あら、ご一緒なのは…アレッサンドロ様じゃございませんか?よろしければ、新作のパンをお持ち帰りくださいな。コーデリア様のアドバイスしてくだすった例の“玉ねぎパン”を出して以来、お客様がずっと増えているんです。感謝してます」


コーデリアはにこっと微笑んで、小さくお辞儀をする。


「ありがとう。とってもいい香りね。今日のおやつにしましょう、お兄様」


アレッサンドロはようやく我に返り、微妙にぎこちなく頭を下げた。


「…ありがとうございます。いただきます。ええと…“飴色玉ねぎ”……?」


「ね、すごいでしょ?」

コーデリアがくすくすと笑う。


広場の噴水のそばで、通りすがりの若者が笑いながらつぶやいた。


「“コーデリア様の言葉を思い出せば、大抵の喧嘩はおさまる”って、うちの店じゃ合言葉ですよ」


アレッサンドロは思わず周囲を見渡す。

誰もが敬意と親しみを込めて"知恵袋のコーデリア様"と呼んでいる。

それは流行でも話題作りでもなく、日々の中で彼女が積み重ねてきた、小さな善意の連鎖の結果だった。


「……お前、本当に、すごいな」


アレッサンドロは思わずつぶやく。

その声に気づいて、コーデリアがぱっと明るい顔で振り返った。


「ふふ、ねえお兄様。最近この通りの角に、小さなカフェができたの。テラス席もあってね、ちょうど今くらいの時間がいちばん気持ちいいそうよ。寄っていかない?」


「……そうだな。お前のおすすめなら、きっと外れはないんだろう」


「ふふっ、実際に行くのは初めてなんだけどね」


コーデリアはそう言って笑いながら、アレッサンドロの手をとった。

その手は小さくて温かく、まるでこの街ごと彼女が少しずつ変えていったような、確かな力を宿していた。


人々に見送られながら、二人はゆっくりとカフェの方へ歩いていく。

午後の陽射しに照らされた石畳が、静かにきらめいていた。

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