表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪役令嬢、前世は優しいおばあちゃんでした!ー連載版  作者: ちょこだいふく


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

14/90

お皿と梅干し

屋敷の食堂に、パリン…と乾いた音が響いた。

慌てた声とともに、床に陶器のかけらが散らばる。


「も、申し訳ございません…!!」


顔を真っ赤にして泣きそうになっているのは、新米の使用人・リタだった。

昼食後の片づけをしていた最中、うっかり大皿を滑らせてしまったのだ。


「リタ、大丈夫?」


そっと声をかけたのは、コーデリアだった。

彼女は慌てることもなく、すっと膝を折ってリタの隣に座り込む。


リタは目を潤ませ、うつむいたまま言った。


「このお皿、貴族様用の特別なものだって聞いてたのに……私、本当に…申し訳…わた…私なんか、やっぱりダメですね……」


コーデリアは、破片を一緒に拾いながら、ふんわりと微笑んだ。


「ねえリタ、お皿を割ったことと、あなた自身の価値は別のことよ」


リタが驚いたように顔を上げる。


「お皿ってね、使えば使うほど欠けたり割れたりするわよね。でも、それって“ちゃんと使われた証”でもあるのよ。ずっとしまい込まれていたら、割れることさえないんだから。もちろん貴族家庭で割れた食器を使っていたら他の家に侮られるから使わないけれど、それはもうその食器の寿命よ。食器はいつかは割れるもの。」


「だから、あまり気にしないで。怪我がなかっただけでも良かったわ。お皿が割れたくらいで、あなたの価値まで欠けたりしないわよ」


優しい言葉に、リタの目から、ぽろりと涙がこぼれた。


コーデリアは、小さな声でふと付け加える。


「ちなみに私なんて、前世で梅干しの瓶を割って、畳をだめにしたことがあるの。梅干し臭い六畳間で過ごした夏……あれは、忘れられないわ」


リタは、くすっと笑い、鼻をすすった。


「……ありがとうございます。梅干しって、どんなものか分かりませんが……お嬢様は本当に、あたたかい方ですね」


「ありがとう。でも、ちゃんと泣いたあとはね、何か好きなものを食べて元気を出すの。心の元気には、甘いものがよく効くのよ」


そう言って、コーデリアはそっとリタの頭を撫でた。



数時間後――


使用人控室に戻ったリタの席に、小さな包みがそっと置かれていた。


中には、ほんのりバターが香る焼き菓子と、可愛らしい手書きのメモが添えられていた。


「リタへ

この前、“クリームのたっぷり入ったビスケットが好き”って言ってたわよね。

泣いた分だけ、甘さも補給してね?

                      コーデリアより」


リタは、そっとビスケットを胸元に抱えた。

胸の奥が、じんわりとあたたかかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ