表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪役令嬢、前世は優しいおばあちゃんでした!ー連載版  作者: ちょこだいふく


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

13/90

心のひだまり

ある日の昼下がり。

屋敷の裏庭で、メイドのローザが一通の手紙を手に、じっと立ち尽くしていた。


その手紙は、彼女の母から届いたものだった。

いつもなら開封すらせずに破棄していたのに、今日はなぜか、ふと手が動いてしまった。

封を切り、便箋を広げた瞬間、ローザの目から静かに涙がこぼれ落ちた。


その様子に気づいたコーデリアが、静かに歩み寄る。


「ローザ……どうしたの? 手紙を読んで……泣いてるの?」


ローザははっとして顔を上げたが、すぐに笑顔を作ってごまかそうとした。

「だ、大丈夫です……ごめんなさい、お嬢様。ちょっと、家族のことで……」


「家族のことだからこそよ。私にとって、あなたの事も、家族のような存在なの。

そのあなたにとって大切なことなら、私にとっても大切なのよ」


そのまっすぐであたたかな言葉に、ローザの仮面のような微笑みが崩れ落ちた。

そして、ぽつぽつと、彼女の過去が語られていく。


――支配的で怒鳴り声ばかりの父。

――その隣で「私はこんなに辛いのに」と涙を流す母。


「母は、父に逆らうことができなかったんです。いつも弱々しくて、“私がいなきゃ、お母さんは壊れてしまう”って……ずっと、そう思ってました」


「私が頑張れば、お母さんが少しでも楽になるって信じてた。だから怒鳴られるのも我慢したし、母の代わりに謝って、父の機嫌を取って……」


ローザの瞳は、遠い過去を見つめるように揺れていた。


「でも……ふと気づいたんです。母はずっと、“かわいそうな私”でい続けた。かわいそうであることを免罪符のように…私がどれだけ我慢しても、当たり前のことと思ってるんだと思います。一度も“ありがとう”って言ってくれることはなかった」


コーデリアはそっと、彼女の手を握った。


「……ローザは、“母親の代わり”をさせられていたのかもしれないわね。でもそれは、本来子どもが背負うものじゃないの」


「だけど、その頃のローザには、それしかなかった。それはあなたが、生き延びるために選んだ、精いっぱいのやり方だったんだと思う」


ローザは、ぽろぽろと涙を流しながら、静かにうなずいた。


「だからこそ、その頃の自分に、“ありがとう”を言ってあげて。

“よく頑張ったね。ありがとう”って」


コーデリアは空を見上げ、穏やかに言葉を続ける。


「そして今からはもう、“誰かのため”じゃなくて、“自分の幸せのために”生きていいの。

あなたはもう、誰かの犠牲にならなくていいのよ」


ローザは手紙を見つめながら、ぽつりとつぶやいた。


「……母の手紙には、“あなたが出て行ったせいで、お母さんはずっと苦しい”って書かれてました。でも今なら……それが“罪悪感で私をつなぎとめようとする言葉”だって、わかります」


「うん。気づけたローザは、もうその鎖から自由になれるわ」


涙をぬぐいながら、ローザはふっと笑った。

それはきっと、初めて「自分のために」浮かべた笑顔だった。


――そして、この日を境に、コーデリアのもとを訪れる使用人たちの相談は、ますます深く、繊細なものになっていった。


それでも彼女は、いつも変わらず静かに寄り添い、優しく微笑む。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ