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『リセッター 〜目覚めたら百年後だった男〜』  作者: 蔭翁


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第61話 世界の再起動音

第61話 世界の再起動音


――世界が、わずかに震えている。


直樹はまぶたを開けた瞬間、その揺らぎを全身で感じた。

風が変わっていた。空気が薄く震え、街の奥底から低い「音」が響いていた。


ゴォォォォ……ン……


地鳴りでも機械音でもない。

“世界そのものが再起動している”としか思えない、重い重低音。


直樹は寝具から身体を起こし、窓を開けて街を見下ろした。


ビルの表面に走る光のラインが、周期的に明滅している。

道路を走る自動運転車が一斉に停止し、薄い光の膜に包まれた。


「……再起動プロトコルだ」


背後で、ミレイが硬い声でつぶやいた。


直樹は振り返る。


「再起動……って、システムの?」


「ええ。未来都市のインフラ全体が、一斉更新に入ってる。

五十年に一度の“全体再起動”……。でも、本来は三年後のはずだった」


ミレイは端末を操作しながら眉を寄せた。


「予定より早い……いや、強制的に引き上げられてる?」


直樹は胸の奥がざわつくのを感じた。

再起動のタイミングが変わったのは、偶然ではない気がしてならない。


そのとき――


直樹の足元に、冷たい風が通り抜けた。


ゾクッ。


足の周囲だけ温度が急激に下がり、薄い霧のようなものが浮かびあがった。


「……ミレイ、これ……」


ミレイは凍りついたように目を見開いた。


「直樹……あなた、“存在データ”が不安定になってる」


「存在データ……?」


「再起動で都市のデータ基盤が書き換わるとき、

整合性の取れない要素は優先的に削除されるの。

あなたは“時間の外”から戻った。システム的には――」


ミレイは言葉を濁し、直樹の肩をつかんだ。


「――“不整合な存在”だと判断される」


直樹は理解が追いつかないまま、街を見下ろす。


ビル群の光が消え、また点く。

遠くの空に、巨大な幾何学模様の影が揺れている。


「つまり……世界は、俺を消そうとしている?」


ミレイは強くうなずいた。


「まだ完全に消滅フラグが立ったわけじゃない。でも……

再起動が進むほど、あなたの周囲は“空白化”が進むはず」


直樹は足元を見る。


先ほどまで普通の床だった場所が、

今はまるで薄く透けて、輪郭が揺れているように見えた。


「……冗談だろ」


「冗談じゃない。これは本当に――」


ミレイが言いかけた瞬間、

部屋全体の照明が一斉に落ちた。


暗闇の中、機械的な女性の声が響く。


《告知:都市全域、更新フェーズ2へ移行。

不整合要素の自動検知を開始します》


ミレイは息を呑んだ。


「まずい……!」


直樹は硬直した。


そのアナウンスの最中、

ミレイの後ろにある壁が、ゆっくりと“揺らぎ始めた”。


壁の一部がノイズのように崩れ、

直樹の存在に触れた瞬間に空白化が始まっているのだ。


「直樹、ここにいちゃダメ!

システムがあなたを“削除対象”として認識し始めてる!」


「どこへ行けばいいんだよ!」


ミレイは直樹の手をつかんだ。


「――“記録に残らない場所”へ連れていく」


直樹は息をのむ。


再起動の音がさらに大きくなり、

都市そのものが巨大な機械のように唸り始めた。


「急いで! フェーズ2で検知されたら……あなたは、消える!!」


直樹は振り返った。


ビルの壁がノイズに飲まれ、透け、崩れ落ちていく。


まるで、世界が直樹だけを拒絶するように――。


二人は、光の消えた街へ駆け出した。


――世界は再起動を始めた。

その結果として“直樹の存在は削除されようとしている”。

第4部の幕が、ここから本格的に開く。

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