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第4話「消えた家族」

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第4話「消えた家族」


 「家族の記録を見せてほしい」


 直樹は、ホログラムに映し出された“自分”の映像を見つめたまま、低い声でそう言った。カノンは少し黙ってから、頷く。


 「分かりました。個人のプライバシーに関わる領域なので、本来はアクセスに制限があります。でも、あなたにはその資格があります。――あなた自身の記録ですから」


 端末に指先を滑らせると、時代を遡るように映像が切り替わっていく。やがて、昭和中期風の居間が映し出された。ちゃぶ台のある質素な部屋。そこに、幼い少女をあやす女性と、その隣で新聞を読む男性の姿があった。


 直樹の心が、ひきつれる。


 「……母さん、父さん……そして……」


 ふと、画面の端に、小さな男の子が映った。自分だ。――5歳のころの、結城直樹。


 「この映像、どこから……?」


 「家庭用の記録映像機。100年ほど前、あなたの時代では珍しくもないものでした。断片的に残っていた映像が、アーカイブに収集されています」


 直樹は、じっとその映像を見つめた。懐かしいのに、どこか異物感がある。記憶と完全には一致しない。まるで、他人の過去を見ているようだった。


 「家族は……今、どこに?」


 その問いに、カノンはわずかに表情を曇らせた。


 「……既に全員、故人です」


 胸の中が、冷たい水に浸されるような感覚に襲われた。


 「そうか……百年経ってるんだもんな」


 理解はできる。理屈では。しかし、心は追いつかない。つい昨日会話していた家族が、この世にはもういないという現実が、痛烈にのしかかる。


 「ただ、一つ気になる点があります」


 カノンが画面を切り替えた。そこには、博物館のような展示室。中央に、彼――結城直樹の姿を模した人形が立っていた。


 「これは?」


 「“失われた世代”と呼ばれる時代に起きた、ある異変に関する展示です。あなたの存在は、なぜかこの時代の“終焉の象徴”として記録されているのです」


 直樹は言葉を失った。


 「つまり……俺は、終わりの象徴……?」


 「あるいは、始まりを告げる者かもしれません」


 カノンの声には、どこか予感めいた響きがあった。



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次回、第5話は「博物館にいた自分」です。



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