表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『リセッター 〜目覚めたら百年後だった男〜』  作者: 蔭翁


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

20/62

第20話「第1部・終幕『存在の意味』」

---


第20話「第1部・終幕『存在の意味』」


高層都市の最上階、薄い空気の中に佇む直樹の姿があった。

彼の眼下には、透明なドームに覆われた未来の街――かつて彼が「いないことになっていた」世界が広がっていた。


「……百年も経ったんだな」


手にしたのは、記録ノート。

だがその中身は、もはや他者が残したものではなかった。

それは、直樹自身がこの世界に“いた”ことを、己の手で記した証だった。


記録を消された5年間。

その間、彼は誰にも観測されず、何者にも記憶されず、存在そのものが“空白”として処理されていた。


それでも、彼は生きていた。


そして、彼を“見ていた”存在――観察者カノンの涙が、確かにその証明となった。


「人は、記録されなければ存在しないのか?

それとも、誰かの心に残れば、それだけで“生きていた”と言えるのか――」


風が吹く。

遠くに浮かぶ小型の輸送艇が、光を反射させて通り過ぎた。


直樹の脳裏に、これまでのすべてがよぎった。


目覚めた未来。

博物館で見た“自分”。

老いない身体。

何度も繰り返されたリセット。

消された記録、見えない勢力、そして――心だけで見つめてくれた観察者。


「俺が生きた意味は……」


問いかけたその先に、答えはなかった。

けれど、不意に通信機からカノンの声が届いた。


「直樹さん。あなたが生きた記録は、今、この瞬間から“再び”始まっています。

誰かにとってのあなたは、すでに“物語の登場人物”ではなく、“現実”です」


直樹は、ゆっくりとノートを閉じた。


「物語、か……。じゃあ、ここから先が“本当の物語”だな」


“リセッター”という名を与えられた男。

眠れば昨日に戻るはずだった存在は、未来に取り残されてなお、生き続けた。


そして今、ようやく“戻らない”朝が始まった。


新しい物語は、まだ始まったばかりだった――



---


第1部「目覚め」 完



---


以上で第1部が完結となります。

次回より【第2部「記録なき旅路」】へと進みます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ