表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/37

第2話 見知らぬ時代

---


第2話 見知らぬ時代


 記憶をリセットされている。


 その一文は、背筋を凍らせるには十分すぎた。だが、ページはそれで終わってはいなかった。ノートには、さらに続きがあった。



---


「君は『リセッター』だ。

毎晩、眠るたびに記憶も身体も“ある日”の状態に戻る。

これはその事実を伝えるために、君自身が何度も書き残したノートだ。」



---


 まるで他人が書いたような――けれど確かに、自分の筆跡だった。


「……そんなバカな」


 独り言は、返ってこない。壁の向こうに誰かの気配もない。無音の世界。ディスプレイの時刻だけが、じりじりと時間の経過を告げている。


 だが、すぐにノートの裏表紙に、貼り付けられた小さなチップのようなものを見つけた。指で触れると、自動的に映像が再生された。


 そこには、まさしく自分――若い姿の“自分”が映っていた。



---


「これを見ている君へ。おそらくまた記憶がないだろう。信じてほしい、君はここに何度も目覚めている。もう数年はこのサイクルを繰り返しているようだ。だが今日の君は、特別だ。今朝、リセットが起こらなかった。」



---


 思わず手が震えた。


 つまり今日の自分は、「初めて未来を記憶することができる自分」なのだ。昨日までは、何度同じ目覚めを繰り返しても、夜になればすべてが“ある日”に戻っていた。


「……記憶も、身体も。完全に巻き戻されるってことか……」


 手元を見つめた。傷一つない。けれど、それは昨日の怪我が治ったわけではない。そもそも“怪我をする前の自分”に戻ってしまう。


 そして、未来の自分は言った。



---


「原因は“あの日”だ。君がリセッターになった“ある事案”。それを思い出すことが、この現象を終わらせる唯一の鍵だ。」



---


 だが、自分にはまだ何も思い出せない。


 だが確かに、今日だけは違う。


「……よし。今日から、答えを探そう」


 そう呟いて、ゆっくりと立ち上がる。ベッドルームの扉に手をかけると、認識機能が作動し、自動で開いた。


 目の前には、広大な都市が広がっていた。


 空を走る電車、光の柱のようにそびえるビル群、そして空中を移動する無人ドローンたち。音のない、けれど確かに生きている世界。


 ——2114年。知らない時代が、目の前にあった。



---


次回、**第3話「リセットの理由」**へ続きます。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ