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声を失った公爵様に嫁ぎます 〜前世の夫から逃げたいのに、なぜか執着されてるんですが!?〜  作者: 無月公主


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40/72

40話目

その夜――。


ヴィヴィアンは既に寝室にいた。

しかし、どうにも落ち着かない様子で、ベッドに腰掛けたまま、何度もシーツの端を握り直している。


(……大丈夫だ。冷静に、冷静に。)


深く息を吐き、額に手を当てる。

しかし、扉が開く音がして、ふわりと 石鹸と花の香り が漂ってきた瞬間――。


彼の意識は、一気に吹き飛んだ。


ミシェリアが、ネグリジェ姿で寝室に入ってきたのだ。


「なっ……その…格好は……。」


ヴィヴィアンの顔が一気に赤く染まる。

視線を逸らしながら、喉を詰まらせるように言葉を絞り出した。


ミシェリアは、そんな彼を見てクスリと微笑む。


「私じゃないわよ? ここのメイドさんのオススメ。」


「お、おすすめ……?」


まじまじと見つめるわけにはいかない。

だが、彼の理性を試すかのように、その 柔らかなシルエットを映し出す薄い生地 は、明らかに「誘惑」を目的としていた。


「それで……隣で寝るつもりなのか?」


「えぇ。」


――終わった。


ヴィヴィアンは頭を抱えた。


これは試練だ。間違いない。


そんな彼の苦悩など気にもせず、ミシェリアは 何の遠慮もなくベッドに滑り込む。


「抱きしめる?」


「こ…小悪魔だ……。」


何度も自分に言い聞かせる。

"落ち着け。今すぐ深呼吸をしろ。動揺するな"――。


だが、震える手が、いつの間にか彼女の 華奢な肩をそっと抱き寄せていた。


ミシェリアは、その様子を見て 不思議そうに首を傾げる。


「ねぇ、ヴィヴィアンって、本当に変だわ。」


「……?」


困惑した顔のヴィヴィアン。


「だって、舞踏会で声をかけたときは、急に泣き出して、その後は、ニコニコしてたじゃない。まるで草しか食べないみたいな顔して。」


「草……?」


ポカーンとするヴィヴィアン。


「……あれは……。」


少し視線を落としながら、静かに呟いた。


「呪いで話しかけることができなかった……そんな俺に、お前が初めて話しかけてくれたから……。嬉しさと……安心が同時にきたんだ。」


「そういうことだったの。不便ね……。」


「不便過ぎた。」


ミシェリアは、そんな彼の率直すぎる言葉に思わず笑い声を漏らす。


「あっははっ。おかしな人。」


――その屈託のない笑顔。


それが、 彼の心を最も揺さぶるものだと、ミシェリアはまだ知らない。


ヴィヴィアンは 衝動に駆られるように、思わず彼女の唇を奪った。


「……別人だわ……。」


「そうか?」


ミシェリアは、軽く唇を拭いながら じっとヴィヴィアンを見つめる。


「でも、騎士だった頃は……今のままだったかも。でも、敬語だったから……。」


「今は?」


「………野獣?」


ミシェリアの一言に、ヴィヴィアンは 衝撃を受けたように仰向けになり、頭を抱えた。


(……がっつきすぎたか!?)


あぁ、なんということだ。

彼女のことを 大切に扱いたいと思っていたのに、ただの猛獣のように思われているなんて。


「…………。」


しばらく動かないヴィヴィアンを見て、ミシェリアはクスリと笑った。


「そんなに落ち込まなくてもいいのに。」


「……いや……。」


彼は目元を押さえながら、小さく溜め息をついた。


"俺は、もっと優雅でスマートな夫になりたいのに……。"


ヴィヴィアンは、じっと天井を仰ぎながら、ゆっくりと息を吐いた。

そして、静かに言葉を紡ぐ。


「……俺は、もう、本当に大丈夫なんだ……。」


ミシェリアは、その言葉に小さく瞬きをした。

けれど、次に紡がれた言葉には、張り詰めたような 切実な響き が宿っていた。


「だから……もう王太子には会わないでくれ……。でないと……。」


「でないと……?」


ミシェリアは首を傾げる。

そのまま、そっと手を伸ばし、ヴィヴィアンの喉元へと触れた。

そこには 夫婦の証である刻印 が浮かんでいる。


三日月の上に輝く 星のマーク。


――これは 二人だけの紋様。


過去の王太子との神殿婚で刻まれたのはクローバーだった。

それとはまったく異なる、まるで 運命を形にしたかのような印。


「ミシェリア……。」


ヴィヴィアンの声がかすれた瞬間。


彼女の体が、彼を覆いかぶさるように近づいた。

影が重なり合い、熱を孕んだ視線が絡み合う。


「お望み通りの野獣に……。」

ヴィヴィアンの低く甘い囁きが、夜の空気を震わせる。

その声には、これまでの理性を捨て去るほどの熱がこもっていた。


次の瞬間――。


彼の手が、強引にミシェリアの頬を捕らえた。


そして―― 激しい口づけ が落とされる。


「……っ!!」


まるで独占するように、貪るように。

息をする隙さえ与えず、何度も、何度も深く唇を奪われる。


(……ヴィヴィアン……!)


絡みつく舌、逃さないように噛みしめる唇――。

今までのどんなキスよりも、激しく、支配的だった。

求めるだけではない。

まるで彼の欲望すべてをミシェリアに刻み込もうとするかのような、圧倒的な熱。


「んっ……はぁ……。」


荒い息が混じる。

喉の奥まで舌を差し込まれ、逃れる術もないまま、ヴィヴィアンの強い腕に閉じ込められる。


彼の指が、滑るようにミシェリアの顎をなぞる。

指先が、唇の端を撫でる。


「……っ……。」


指の間からこぼれた息を、ヴィヴィアンの唇が すくい取るように 触れた。

焼き付けるような熱――。

その温度が、喉の奥まで染み込んでいく。


(この人、今……何を考えているの……?)


戸惑いと共に見上げると、目が合う。


そこにあったのは―― どこまでも深い紫の瞳。


そこに宿る光は、あまりにも熱く、危ういほどの執着と欲を滲ませていた。

まるでこの先に待つ結末など考えず、ただひたすらに彼女を飲み込もうとする獣のように。


「……ミシェリア。」


彼の囁きが耳元を震わせる。


ゆっくりと―― ヴィヴィアンの唇が、首筋へと落ちた。


「……っ……!」


甘噛みするように、何度も何度も肌に触れる唇。

ちゅっ……と音を立てながら、舌が僅かに触れ、吸いつく。

鎖骨へと降りていくたびに、ぞくりと背筋が震えた。


(……こんなの、ダメ……!)


そう思うのに、身体が熱に侵されていく。

肌の感覚が敏感になり、指先が震えた。


ヴィヴィアンの指が、そっと肩紐に触れる。


「――綺麗だ。」


まるで宝石を愛でるような声音。

彼の手が、 ゆっくりと衣服をずらしていく。


それでも、決して無理やりではなかった。

あくまで、彼の動きは紳士的で、慎重で――それが、逆に余計に情熱的だった。


呼吸が乱れる。


(ヴィヴィアンが、こんな風に……。)


護衛騎士だった頃の彼を知っているからこそ、今の姿が信じられなかった。

かつては彼が、彼女を守る壁であり、決して超えてこない存在だったはずなのに――。


(今は違う……。)


ヴィヴィアンの 熱を帯びた指 が、ミシェリアの太ももをなぞる。

それだけで、腰が僅かに跳ねた。


そして――


「開いて。」


低く甘い命令が、耳元で囁かれる。


「……っ!」


今までとは違う、圧倒的な支配。

心臓が跳ねる。


ヴィヴィアンの 指が、ミシェリアの膝を押す。


抵抗したわけではないのに、自然と足が開かされていく――。


(ダメ……! これ以上は……。)


そう思うのに、ヴィヴィアンの瞳に囚われて、動けなかった。


彼の唇が、ゆっくりと下へと滑る。

指が、柔らかな肌の上をなぞる。

熱が、どんどん身体の奥へと染み込んでいく――。


その時だった。


「ゴフッ!!」


突然―― ヴィヴィアンが吐血した。


「――!? ヴィヴィ!!」


ミシェリアの 血の気が一瞬で引く。


彼の唇がミシェリアの肌を離れ、ぐらりと体を揺らした。


「ヴィヴィアン!? しっかりして!」


彼の背を支えようとするが、その身体は予想以上に重く、力を失っていた。


(まずい……!)


慌てて支えようとするが、 彼の体重がそのままのしかかるように傾く。


「くっ……またか……。」


低く苦しげな唸りが漏れる。

紫の瞳が揺らぎながら、それでも、まだミシェリアを求めるように彼女を見つめていた。


「ヴィヴィ……どうして……?」


ミシェリアは、咄嗟に 近くの布を掴み、彼の口元へと押し当てる。


(こんな時にまで……!)


しかし――そのまま 意識が遠のくように、ヴィヴィアンの身体が崩れ落ちた。


「ヴィヴィ!!ヴィヴィーーーーー!!」

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