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9話:吸血娘は少しだけ成長した

 うぅ、ま、まぶしい。今度は本当に知らない天井だ。


「ん?あ!主殿ぉぉぉぉぉ!!!!」


 ボン!!

 うぎゃ、ぐ、ぐるじい。


「ちょ、ちょっと、なんで今日はこんなに激しいの」


「じゃ、じゃが主殿ぉ」


「はぁ、おまえ1週間も寝てたんだぞ。そいつが心配するのも無理ないだろ」


 え!1週間も!?

 そっかあのとき神眼を使ったらなんだか異常に疲れて、そのまま眠っちゃってたのか。


「そうだったんだ、2人がずっと看病しててくれたの?ありがとう」


「いや、僕たちというよりは・・・」


 ガシャン!!


 急に音がしたので、その方向を見てみたら、リリアとその足元に散乱したタオルやらがあった。

 彼女はすこし驚いていたようだったけど、すぐに冷静に、だけど優しい顔でしゃべった。


「あら、起きてたのね。もう体は大丈夫なのかしら」


「うん!ありがとうリリア、おかげで元気いっぱいだよ」


「おや?起きたんだね」


「フランさんもありがとう」


「いや、お礼を言うのは私たちのほうだよ。君は私の恩人だからね。ありがとう」


 う~、なんだか面と向かってお礼を言われちゃうとなんだか恥ずかしいな。


「あぁあとすまなかったね。お仲間さんたちも、うちのリリアがミーコさんの面倒を見ると聞かなくて。」


「ちょっ、ちょっとお父さま!!」


「そうじゃ!!主殿の面倒は童が見るというのに」


「いや、別に僕はもとから他に任せようと思ってたから」


 グゥ~~~~。


「・・・あはは、そういえば1週間なにも食べてないんだった」


「待ってなさい、今クッキーを持ってきてあげるわ」


 あれ?リリアってクッキー作れたんだ。


 リリアがクッキーを持ってきてくれたけど。


「えっと・・・これって、チョコクッキー?」


「違うわよ、ちょ、ちょっと焦げちゃっただけよ」


 ちょ、ちょっとかぁ。


「別に、嫌だったら食べなくていいわよ。すこし失敗しちゃったし」


「いや、食べるよ」


 んっ、ん~。なんというかまぁ苦い。そのまんま焦げてるっていう味だ。

 でもこの味なんだか似てる、この家に初めて来たときに食べたあのクッキーと。

 さすがに味に関しては到底、及ばないけど、でも、とっても似てる。


「うん!とっても温かい味!!」


「べ、別にそこまでじゃないでしょ」


「いやいや、とってもおいしいよ。まぁ苦くはあるけど。」


「や、やっぱり失敗しちゃったから、もう食べちゃだめ!!」


 あぁ、下げられちゃった。でもお皿を片付けに行く少女の顔は少し笑っているように見えた。


「そういえば主殿、なにか忘れてはおらぬか?」


 え?なにか忘れてること。そんなのあったっけ?いや、ちょっとまって、確か旅の目的って・・・


「あ!!神獣!!!」


「?神獣ですか?」


「そう!!フランさんは何か知らない?」


「えぇ、知っていますよ」


 ・・・・え!?知ってるの!?


「神竜様のことでしたら今、どこにおられるのかぐらいならわかりますよ。」


「お願い!!教えて!!!」


「もちろんいいですが、神竜様と会ってどうなさるのですか?」


「ふっふっふ、驚かないでよ。将来私は、神獣をテイムするんだ」


 ・・・・・ってあれ、なんかフランさんなんかすごい真剣な顔してる。もしかしてまずいことでも言ったかな。


「はっはっは、あなたは面白いことをおっしゃるのですね。神竜様は今私たち吸血鬼の崇拝するお方ですが、私からすればあなたのほうが、恩がありますからね」


 フランさんによると神龍はここからずっと西にある天空山にいるらしい。


「天空山といえば、麓にかなり大きな温泉街があったのぉ。ギルドも大きいから、更なる情報も聞けるのではないか?」


「いいね、次の目的地も見つかったことだし、今日中にはもう出る?」


「僕は異論なしだ」


「童も構わんが、主殿はもう少し休憩した方がいいのではないか?」


「大丈夫、大丈夫。もう元気いっぱいだから。でも・・・・うぅお腹空いた」


「はっはっは、クッキーだけでは足らないだろうね。まぁ食べていきなさい。その後ゆっくり準備するといい」


 私たちはお昼を過ごした後、すぐに準備を終えてまた旅に出ることにした。


「あぁそうだ、これを渡すのを忘れていたよ。ほらこれ、依頼料」


「わぁ、こんなにいいの?」


「はっはっは、私も冒険者で食べているからね。それなりに余裕はあるから持っていくといいよ。」


「うん、じゃあ、ありがたくもらっていくね。それじゃあバイバイ!!」


「あっ・・・」


「?リリアもバイバイ」


 次は本当に神獣に会えるかもしれないなんて、とってもワクワクする!!それにお母さんかぁ。

 ・・・・会いたいな。


「いいのかい、彼女たち行ってしまうよ」


「え?」


「はっはっは、私を甘く見るんじゃないよ。自分の娘が考えてることぐらい分かるさ」


 少女は幼い。それゆえまだ自分で決断する勇気が持てない。だから父親である彼は少しだけその勇気は分けてあげるのだ。


「私が、後先短いことを気にしているのかい?大丈夫だよ、昔は血を吸えない理由があったけれど、今は死んではいけない理由ができたんだ。魔物の血でもすすって生き延びることにでもするよ。君がいつか帰ってくる場所を失うことだけはあってはならないからね」


 少女は幼い。けれど学び、成長する。今、この決断は場合によっては後悔することになるかもしれない。それでも彼女は成長していた。だから少しは勇気があった。


「待って!!!!」

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