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ログイン(仮)  作者: 江藤 乱世
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エピローグ その4

「まず、大事なことからだよ? あたしたちの目的はしのぶ君の元に行き、この現状を改善すること。それはいいかな?」


 そんなものは確認するまでもないと言わんばかりに怜央を含めた三人はすぐに頷く。


「よって問題は以下の二つになるかもだよ?」


 まるで報告書を読み上げるように言葉を続ける。


「一つ目はどうやってしのぶ君を止めるのか。そして二つ目、最大の問題はあの紫の鎧の対処法だよ?」


「ただ倒せばいいんじゃないのか?」


 怜央の言う倒すとはもちろん、殺すか行動不能にするという意味である。


「うんうん、そうなんだけど、その方法がわからなかったりするんだよ?」


「ちなみにさっき銃で撃って貫いたけど、意味はなかった」


 おそらく先ほど合流するまでの間に試していたのだろう。試していた驚きよりも銃を撃っても騒ぎにならなかったことに、この現象がどれほど混乱を招いているのかを怜央は理解できた気がした。


「ねぇ、あの紫の鎧ってどうやって動いているのかな?」


 佐奈は皆が疑問に思っていたであろうことを口にした。


「それが一番の謎だよな。しのぶは魔法使えるんだから、なんでもありとかもありそうだけど」


 怜央はあきれたようにそういう。


「それは魔法の性質上ありえなんだよ」


「どういうことだ?」


 怜央の中では魔法はなんでもできるイメージが出来上がっていた。しかし、魔法はそれほど便利なものではない。


「怜央君、魔法はプログラムを作らないと出来ないんじゃなかったっけ?」


 そういえばしのぶもそんなことを言っていたことを怜央は思い出す。理解できている現象を利用してプログラムを作成すると。しかし、怜央は同時にこうも理解していた。試行錯誤さえ繰り返せば、理解できていなくても使えるのだと。


 反論しようとする怜央。しかし声を出す直前、自身で自分の意見を否定する材料に気づいてしまう。そんな葛藤のせいで怜央は話そうとする途中で固まってしまった。


「怜央君?」


 佐奈が不思議そうに首をかしげるのを見て、怜央は我に返った。


「いや、悪い。ぼうっとしてた」


 怜央は自分の中で仕切り直し、話を続けた。


「縁寿の言いたいことはわかったよ。つまり、存在しない現象は起こせないってことだな?」


「そういうことなんだよ」


「あれ? どういうこと?」


 佐奈にはわからなかったようなので、怜央は佐奈に説明をした。


 魔法とはあくまでこの世界に存在している現象を再現するものだ。つまり、存在しない物理現象は再現できないことでもある。


「要はあの紫の鎧は何かしらの物理現象が使われてるってことだ」


「つまり、その現象を推測して紫の鎧の対処法を考えるてこと?」


 やっと四人は共通の認識を持って話を進められるようになった。


「さっき言ってたけど、丈が銃を撃っても貫くだけってことは、中身はないってことか?」


「そうだと思う。逃げながらだから確かじゃないけど」


 それが正しいのならば、あの紫の鎧は生物ではないということになる。その場合、倒すということそのものが不可能だ。


「じゃあ、あの紫の鎧は機械類なのかな?」


「それだと破損しても動いていたのが不自然じゃないか?」


 偶然重要なものを避けていた可能性はあるが、とりあえず怜央はその自分の思い付きを無視した。


「何はともあれ、生物でないのは僥倖だよ? 倒しても罪悪感なく済むからね」


 確かに生物でないのは嬉しい情報だ。いくら覚悟があっても殺すというのは未だに抵抗はある。その感覚が無くなった時、自分は人間ではなくなる。怜央はそう思っていた。


 この後話し合いは続いたが、これといった結論を出せないまま、数十分が過ぎた。


「これ以上の話し合いは無駄だな」


 怜央は頃合を見てそう切り出した。現に話し合いは先程から全く進展が見られない。


「そうだな」


「それじゃあ、話し合いはこれまでなんだよ。紫の鎧の対処法は全く進展しなかったけど、仕方がないんだよ」


「だね」


 そう言って四人は立ち上がる。これ以上話し合いをしないとなれば行動するしかない。それを四人はよくわかっていた。


「今回は不確定要素が多いから、四人でまとまって行く。異存は?」


 怜央の問い掛けに皆が頷く。その意見だけは満場一致だった。


 決まってからの四人の行動は早い。


 装備をすぐに整えると、四人は言葉も交わさず陣形を組む。前衛は怜央。その後ろに佐奈と丈、殿は縁寿だった。それは四人でよく使うひし形の陣形だった。


 紫の鎧の対処法はわからない。よって四人はできる限り紫の鎧に見つからないよう塔まで移動していくことになる。


 無言の進行。怜央にとっては二度目になる移動だが、この緊張感にはなかなか慣れない。緊張による精神的疲労はただ移動するよりも体力を削り取っていく。そんな緊張状態を、打ち破ったのは携帯電話の着信音だった。


 その場が一気に緊張に包まれる。今の音で紫の鎧に気づかれ、大挙する可能性があったからだ。


 鳴ったのは怜央の携帯電話だった。状況も忘れ、怜央は携帯電話を取り出す。そこに表示されていたのは『斉藤 創』の文字。内心に怒りを感じながら、同時にまだ携帯電話が繋がっていることに驚きを感じていた。


「状況!」


「異常なしだよ?」


「こっちも大丈夫」


「問題なし」


 怜央の見える範囲にいる紫の鎧にも反応は見られない。


 今の音は紫の鎧には聞こえなかったのか。そんなわけがないと怜央は自分の意見を即座に否定する。それでなくとも電子音というのは聞こえやすいようになっているのだ。いくらなんでも無反応はおかしかった。


 そんなことを考えながら怜央は携帯電話に目線を戻す。どうやらメールが届いているようだ。すぐにその内容を確認する。


『怜央、お前のことだから今の異変をどうにかしようと動いてるだろ? そこで俺はしのぶについて調べてみたんだ。そしたら一つ、気になる事実を見つけた。実際に確認してみてくれ』


 その文章の後にはあるURLが貼り付けられていた。すぐにそのサイトを確認する。そのサイトは『ログイン』に関する記事が載っていた。


「どうしたの?」


 怜央がずっと携帯電話を見ているのが気になったのか、佐奈が覗き込んだ。


 怜央はそれを気にしている余裕はなかった。そのサイトに載っていた事実で頭がいっぱいになったのだ。


「そうか…… しのぶはだからこんなことを……」


 そして怜央は理解する。しのぶがこんなことをしているその理由を。


 怜央は創に喫茶店でしばらく待っているようにとの旨をメールで送り、携帯電話をしまう。


「……行こう」


 怜央が何かを知ったことにみんなは気づいているだろう。しかし、誰一人として問いかけてはこない。今は話し合うだけの安全を確保できないとわかっているからだ。


 怜央は止まらない。どんな理由があろうとも怜央には聞きたいことがあり、許せないことがある。理由がある以上、怜央は止まらない。



「…………―――――――――」

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