表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/17

「君と夕立と」


突然の夕立に駅まで走った。



仕事帰り。


「失礼!」といって、隣にいる君の腕に手をまわした。


そうでもしないと、おいて行かれてしまいそうだったから。



同じ職場で、いつも一緒にいる君だけれど、どこかバリアを外さない君。


とはいっても、まったく寄せ付けてくれないバリアでもなく、「ワタシのこと嫌いなの?」と聞くと、「あのね!嫌いだったら一緒に仕事なんかしてないし!」と叱られる始末。



それでも、やっぱり見えない“何か”のバリアを感じる。


私まで緊張して、上手く話せない時もある。



「あんなに意識されると、何も話せないよ」


そんなことを友達にも相談している始末。



“意識”といっても、どのような意識なのかも、まったく判らない。


ただの男女の意識?


職場の仲間意識?


それとも……恋愛モード意識?




いずれにしても、いい年して面倒だ!




ある日、いつも相談にのってもらっている友達に言われた。


「そんなに気にしてるってことはさ、アイツのこと好きなんじゃないの?」


友達がそんなことを言うものだから、今度は私が変な意識を持ってしまった。



それからが大変。


いつもは、君のそのバリアを外そうと懸命に歩み寄っていた私が、君に歩み寄れなくなってしまった。


電話も、「これから電話していい?」とメールをしてから。


メールも雑談的なメールを打つことも躊躇われる。


仕事帰りにプライベートで食事誘うなんて、それこそ出来ない。



そんな私に、君は「この頃、どうしたの?」なんて聞いてくるけれど、「原因はアナタよ!」とも言えず、愛想笑いで返すのが精一杯。




「これって、中学生くらいの時に味わったことある?」



よりによって……!


それもこれも、君と友達のせい!


と、人のせいにしては、自分の感情を否定しまくっていた、去年の夏。




あれから一年。


相変わらず、君と私の関係は進展もなければ後転もないまま。


変わったといえば……やっぱりない。




急に降り出した雨の中、一緒に走って、ふたり、びしょびしょになりながら駅へ着いた。


つかまっていた腕から手を外そうとした時、何気に見上げた場所には、君の笑顔があった。


走った後の鼓動とは別の鼓動が全身を覆っていた。


慌てて目をそらそうとしたけれど、君の視線から動けない。


ふたりとも、しばらく黙ったまま。



やっと君からの視線が外れ、君の隣で、夕立の後、赤く染まった空を見上げた。



そして、口にした言葉は……。




「今年は逢えるかな」



君が隣にいた、七夕の日。




~ 了 ~


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ