表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/31

第八節 今日で一番長い打席

関東のどっかの高校野球選抜選手権大会予選の一戦。


エースタカマサ率いる〇△□×(丸さんかっけぇ死角無し)高校と、キラキラ高校との試合は佳境を迎えていた。


シチュエーションは、9回表。2アウトランナー2塁。バッターは3番投手タカマサ、打席上で吠える。




「こいやー!!」




気合十分。初球からストライクゾーンなら叩きに行く姿勢でピッチャーに対面する。


初球――、


「!」


「ドパァン!」




「ボー!!」




インハイのボール球。


「おい! こっちはピッチャーだぞ!!」


一塁ベンチは、相手ピッチャーアダムが投げた厳しいコースのボールにエキサイトする。それに対しタカマサ、右手を差し出し一塁ベンチの選手を制止する。


「! ……」


一塁ベンチはタカマサの心情を察し少し静かになった。キラキラ高校の捕手、愛莉らぶりはそっとタカマサに話し掛けた。


「キミはピッチャーでも、並のバッターじゃないからね。厳しくいかせてもらうよ」


「上……等……!」


タカマサは更に集中力を上げる。


第2球――、


「ビュン!」


「!」




「ドパァン!」




「ストラーイク!!」


インコースぎりぎり。タカマサはストライクボールを見送る形となった。


「! ……くっ」


「ボールに見えた? ウチのピッチャー、この勝負、今日一番集中できてるよ?」


愛莉らぶりはタカマサをドヤ顔で煽りおる。


「(相手も必死なのは……)トーゼン!」




――第3球、


「キン!」


「!」


「!?」


打球は!?




「どっどど」




レフトポール左横のファウルゾーンに吸い込まれていった。


「惜しい!」


タカマサは打席に入り直す。すると――、


「ほら、ピッチャーでも、並のバッターじゃない。それでも追い込んだね」


愛莉らぶりはタカマサに話し掛けてくる。


「……」


タカマサは無言で、立ち尽くした。


カウントは1ボール2ストライクと追い込まれていたが、精神的な面ではまるで追い込まれてはいなかった。


(ストライクゾーンは全部振る。クサイのも振る。最悪ファウル。空振り厳禁。ストライクからボールになる球に引っかからない!)


タカマサにはもう、ピッチャーしか見えていない。


4球目――、


「ビュン」




(ストライク!! 来た……! 振……)




「ググッ」


ボールはほぼストレートの速さで鋭く落ちていき――、


(スプリットか!!)


「ピクッ」


「パァン!」


「ボー!」


タカマサが出しかけたバットは何とか止まり、カウントは1つボールが増えて2ボール2ストライク。


(まだ1つ分ボールの余裕があるピッチャー有利のカウントだ。セオリー通りに行けばさっきよりもっと厳しくストライクからボールになる球を投げたいはず……しかし!)


タカマサは打席の土をならしながら考え事をしていたが、不意にピッチャーアダムを見つめる。


(集中しているとはいえ、このピッチャーがどれだけコントロール良くゾーンに投げ込んでこれるか……)


アダムはセットポジションから第5球目――、


「ビュン!」


「高めのスプリット! 甘い!!」


「カン!」


ボールは大きな放物線を描いてレフトスタンドへ――。


「!!」


「やられたか!!」


アダムは振り返りボールの行方を追い、愛莉らぶりはマスクを外し立ち上がった。ボールは――、




良く伸びていくが、ポールを巻くことはなく――。


「ファウルボー!」


「くっ! 惜しい!!」


タカマサは悔しさで顔を歪ませる。キラキラ高校サイドでは、フーと、大きくため息をつくアダム。一方で愛莉らぶりは――、


(シメた……。少々危なかったが、大ファールの後は空振りするって、相場が決まっている。アウトローにストレートだ。スプリットが目に焼き付いている頃だろう。振ったら三振、振らなくても見逃しで、抑えられる……!)


運命の第6球――、


「ビュン!」


(厳しい! スプリットか!?)


タカマサはコンマ数秒の世界で様々な思いを巡らせる。


(当てられるか? ボール? 見逃し三振……振れ! 2アウト……凡打……残塁……)


「ピクッ」


タカマサの出かかったバットは止まる。


「ドパァン!」


判定は!?

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ