第三節 先攻!
一回表――、
先攻は〇△□×(丸さんかっけぇ死角無し)高校。守る三塁側、キラキラ高校のピッチャー男アダム。投球練習をしている。
「ビュン!」
「ドパァン!!」
男の投球に、バックネット裏はざわつき始める。
「おい……球速くないか?」
「知らないのか……? このピッチャー今大会で3本の指に入る程の直球投手なんだぜ?」
スピードガンを持つスカウトも、真剣に投球練習を固唾をのんで見守っていた。
「ビュン!」
「ドパァン!!」
「! 出た!! 自身最速の149kだぁ!!」
バックネット裏は騒ぎ始めたが、〇△□×高校の一番、セカンドお腹君は冷静だった。
(ここで……こうか?)
投球練習中の相手に対して、お腹君は1球も見逃さずにタイミングを取り続けていた。
投球練習が終わり、ホームベースの土を払う主審。遂にはプレイボールのコールが言い放たれた。
「イケ――!!」
「当たれ――!!」
「先頭出ようぜ――!!」
「先頭抑えろ――!!」
両ベンチから声援が飛び交う。
ピッチャー男、振りかぶって第1球――、
「ビュン!」
(来た!!)
「キン!」
一番お腹君の放った打球はライナー性の当たりで一二塁間を抜けライト前へ。
「俺はストレートと分かっていればいつでも引っ張れる自信があるんだよ」
一番お腹君の第一打席は、左打席から初球140k台中盤のストレートを一振りではじき返す結果となった。
「……」
ピッチャー男は右翼手の方をぼんやりと見つめていた。
その様子を観察していたキャッチャー愛莉、男の胸中を察する。
「(……自慢のストレートだ。簡単に引っ張られてヒットにされて、さぞ出ばなをくじかれた気分だろう。でも……)ナイスボールだ! 良い球来てるぞ」
愛莉は男に声を掛けた。
「…………ニチャァ」
男は、
笑った。
次は二番、ファースト千葉――。
〇△□×高校の監督はサインをランナーとバッターに送る。
(サインは……)
(送りバント……!)
お腹と千葉はサインを確認した。左打席に立つ千葉は初めからバントの構えを見せる。セットポジションからの千葉に対しての第1球――、
「ビュン!」
「!(うおっ!)」
「ドパァン!!」
「ストラーイクッ!!」
インハイぎりぎりの直球、千葉は思わずバットを引いたがストライクの判定。
「ノーボール、ワンストライク……プレイ!!」
2球目、サインは――?
(継続……)
(送りバント!)
バントのコツは――、
千葉に聞いてくれ。
(自分で解説せんのんかい!)
「コツン」
作者への愚痴を垂れながら、千葉は一塁方向へのバントを無難に決めた。
1アウト2塁! 次は三番、ピッチャータカマサ。
「シャア!!」
投打においてチームの中心にいるタカマサ。スコアリングポジション、2塁にランナーを置いたこの場面に燃えていた。
(甘い球来たら、容赦なくいくぞ……!)
「プレイ!」
三番タカマサに対しての第1球――、
「ビュン!」
「!」
「ドパァン」
アウトロー一杯!!
「ストラーイクッ!!」
(厳しい! だがこのピッチャー、制球力が凄く良い訳ではない……!)
第2球――、
「ビュン!」
「甘い!」
「カン!」
2ストライク目を振り抜いたタカマサの打球はショートの頭、レフト前! 打球を見て走り出した2塁ランナーお腹君は3塁も蹴り――、
レフトからホームへと送球が返ってくるが……
送球がやや一塁ファールゾーンに逸れ――、
ランナーホームイン!!
1-0!
〇△□×高校先制!!