第二十一節 河川敷の思い出
k氏の死後、半日後、後ろ美人、kは空腹に悩んでいた。
「そうら……まちゅもちょきゅんなら……」
後ろ美人、kは何かを思いつく。そして――、
「ダッ」
神速のスピードで走り出した。
数分後――、
「タタタタタタタタ……!」
「!」
「まちゅもちょきゅーん」
「!?」
「ドッ!」
松本は後ろ美人、kにボディブローを食らわせられた。
「かっ……かはっ! な……お前は……?」
ドヤ顔で立ち尽くす後ろ美人、k。次いで口を開く。
「あのぉ……8千円のリッチなランチが食べたいんれすけどぉ……」
「ふざけるな! なんでいきなりボディブローを食らわせてきたやつをそんな高価な店に……。それに俺はお前の彼氏でも何でもないんだぞ!!」
漸く呼吸を整えた松本は、強い口調で後ろ美人、kを突き放した。
「! ……」
「?」
松本は後ろ美人、kが下を向き、暗い表情で居たのでどうしたものかと首を傾げた。
「スン……グスン……スン……」
後ろ美人、kはボロボロと両目からあふれ出す涙をこらえきれず、泣き出したのだった。歯茎をむき出しにして――。松本はさすがに心配したか、後ろ美人、kに声をかけた。
「お……おい、お前……」
「ぎゅ……牛丼でいいれすー。ぐすん」
「ズッコー」
松本は後ろ美人、kのふてぶてしさを前に盛大にずっこけた。
「〇野家派なんれすー」
(コイツ……どこまで図々しいんだ……?)
松本は言葉を失う。
「奢って……くれましゅか……?」
「……」
「……?」
「他を、当たってくれ……」
「ダッ!」松本は走り出した。明日に向かって――。
夕日が傾く、河川敷にて――。
「畜生!! なんで俺はこんなに不幸なんだ!! 小さい頃はでかいって理由で周囲から恐れられていたし、ヤクザに絡まれる、学校間抗争に巻き込まれる。野球もろくにできないし、後ろ美人、kに付きまとわれる!! 畜生ぉぉおお!!」
松本は大声で叫んだ。その叫び声は向こう岸(?)まで届いた。と、そこへ――、
「言いたいことは、それだけか?」
タカマサが現れた。セキズとフタエもいる。
「嘆いてたってなにも変わらないぜ?」
「そうだ、タカマサの言う通りだ」
「キワミ!」
「自分なりで、いいんだ。松本」
「それにお前の人生だ。他の誰もが変わってくれやしない、お前自身の人生なんだぜ」
「フタエノキワミ、アッー!」
「タカマサ……セキズ……ただしフタエ、お前は駄目だ」
「! ! !?」
タカマサとセキズの言葉に勇気を貰った松本だったが、ここでフタエにくぎを刺しておく。すると……
「フフフタエノキワミ、アッー!」
フタエが突進してきた。それを
「ゴッ!!」
松本は右ストレートで返事した。芝生の生えた河川敷を転々と転がっていくフタエ。
「アッ――――――……あぁん」
喘ぎ。喘ぐな。
――、
「ふー、お前らのお陰で、気持ちがスッとしたよ。もう少し、無理ない程度に頑張っていく。俺の人生だからな。タカマサ、セキズ、ありがとう」
フタエは気絶している。
「帰るか!」
「松本、昨日新しいエロ本買ってよぉ」
「なんだよ、セキズ。また買ったのか」
「俺はDVD派だけどな」
「タカマサは流石だな」
「今度家で上映会しようぜ? セキズも来いよ」
「ハハッ親バレしないようにな」
三人は家路を辿る。河川敷にフタエを独り、残して――。
翌日、〇△□×(丸さんかっけぇ死角無し)高校にて――、
「あぃぃいいいいいい!!!!」
後ろ美人、kが廊下で、松本を待ち構えていた。松本が玄関で上履きに履き替えた後、廊下を歩いてると――。
「ん?」
「あぃぃいい!! まちゅもちょきゅん。昨日は、照れ隠しであの場を去ってしまっらえど、今日はきっろリッチなランチを奢ってくれまるよえ?」
後ろ美人、kに気付いた松本だったが、奴は再び飯を奢れと言ってきたのだった。松本は呆れて口を開いた。
「お前はそんな妄想をしていたのか?」
「ふぁ?」
「そんなチンケなイメージじゃあホログラムしか作れねえ。.そんなのじゃあアートは描けねえよ。もっと美しい、綺麗なイメージを描いてアートを作ろう。その時に頭にあるのは……良い、イメージだ」
「ゴッ!!」
後ろ美人、kは松本の右ストレートを食らい、宙を舞った。
めでたし!




