第二節 秋の予選
関東のどっかの高校野球選抜選手権大会予選、〇△□×(丸さんかっけぇ死角無し)高校の高名もベスト8に名を連ねていた。
「母校〇△□×高校が、あと3勝で甲子園か……決定というわけではないが……」
大会が今まさに行われているグラウンドを一望できるスタンドに、松本は佇んでいた。
「アタイもいるぜ!」
イブキも居た。
「お前は静かにしていろ」
松本はイブキの首根っこを掴み持ち上げ、スタンドの座席に座らせた。
漢松本、黒髪短髪、身長185cm、体重100kg、金持ちで少し不幸。
「黙れ」
おっと口が過ぎた様だ。
「さて、今日のお相手は――、と」
松本はバックスクリーンのスコアボードを見上げた。
『キラキラ高校』
「……は?」
松本はわが目を疑った。
「キラキラ……高校だと……?」
何がキラキラなのか? そんな名前の高校が存在していいのか? 松本は戸惑った。〇△□×(丸さんかっけぇ死角無し)高校も、大概だが……。
「その口を俺の右手で塞いでやろうか?」
…………。
松本は再びスコアボードを見上げ、思いを巡らせる。
(キラキラ……だと……? どういうコトだ? ヤバい集団なのか? ……!)
ふと、松本はキラキラ高校の異状性に気付くのだった。スコアボードを見上げた松本の目に飛び込んできたもの、それは――、
『一番二塁手、光宙』
「!!!!」
松本は驚愕した。更に、
『二番遊撃手、紅葉、三番中堅守、天音』
「な……!?」
『四番投手、男、五番左翼手、奏夢、六番右翼守、一心、七番一塁手、皇帝、八番三塁手、純羽、九番捕手、愛莉』
「何だコイツら!! 全員読めねぇ!!!!」
「どうしたマツモン?」
「! ああ……相手高校のキラキラ高校、出場選手の名前が全く読めなくてな……」
「はぁー? なぁにを言ってんだ松三郎。アタイが読んでいってやろうか。いちばん、セカンドぴかちゅう」
「!?」
「えーっと、お次は……にばん、ショートめいぷる。さんばん、センターそぷら。よばん、ピッ……」
「ええい! もういい!! お前が相手高校の選手の名前が読めるのはよーく分かった。しかしどうしてそんなにキラキラネームに精通しているんだ?」
「なーにを言っとるんだぃ? アタイの業界では常識だぜぃ」
(中学2生で何の業界に精通しているんだ……?)
松本の疑問は絶えない。
そこで――、
「ウゥ――――ウゥ――!!」
試合開始のサイレンが鳴った。
「行くぞ――!!」
『応!!』
痛いほど真っ白な、光が反射しそうなユニフォームを纏い、〇△□×高校のナインが整列した。ハッとなった松本は、携帯電話を取り出す。操作をし、とあるメールを読む。送信主はタカマサだった。
『今日も勝って絶対甲子園行くからな! 見ていてくれ!!』
松本は思わず口元が緩み、クスリと笑った。
「礼!」
『お願いします!!』
青空に響き渡るような球児たちの大声を皮切りに、大一番のゲームが始まった。




