第十二節 延安の大冒険
冬――、
×2△□×(バツ2さんかっけぇ死角無し)高校1年の延安(ヤンキー。弱そう、人質を取り武器を使う。卑怯。176cm、58kg)は放課後、独り家路を辿っていた。
「うーさみー、マフラー無しじゃあ辛えな」
と、そこへ――、
「ひらっ」
1枚の諭吉が舞い、延安の手のひらに着地した。
「こ……これは!!」
明らかに動揺を隠せないでいる延安。辺りをあたふた確認する。
「シーン」
閑静な住宅地。そこには人は歩いておらず……。
(諭吉だ! 諭吉を手に入れたぞ!! でも……)
毎月のお小遣い(昼飯含む)は五千円ほどだった延安。今、手にあるのは彼にとってあまりにも高価な紙幣だった。
(――!!)
そして――、
「ありがとうね」
「あっ、ハイー」
結局延安は交番にその諭吉を届けるコトとした。
「フ――、柄にもねぇコトしちまったぜ」
顔を赤らめた延安は路地を歩いていると、
「キラ」
銀色に輝く何かが目に入ってきた。
(百円か!?)
「チリーン」
一円玉だった。
(1円じゃあなぁ……他の、心優しき民にでも拾ってもらいな。俺様延安はクールに去るぜぇ)
――、
「あと7分くらいで家に着くっと。帰ったらネトゲすっべ」
と、そこへ――、
「ヒュー」
凍てつく北風が吹き付けてきた。
「だぁああ!! さみーっつーの!!」
更に――、
「パサパサ」
「!」
延安の顔面に何か一切れの紙が貼り付いてきた。
「あんだ!? クソッ!!」
ばっとそれを鷲掴みにした。目を凝らすとそれは……一枚の英世だった。
「これは……英世……!?」
再び辺りを確認する。そして誰も居ないのを良いコトに、
「すっ」
ポケットにくすねた。
「へっ、へへ。今日は運が良いなコレでコーラでも買って来よ……」
「ヒュー」
再び凍てつく北風が吹き付けてきた。
「だぁああ!! またかぁああ!! さみーっつーの!!」
更に――、
「パサパサ」
「!」
延安の両目に何か紙切れが二枚貼り付いてきた。
「何だっつーの!?」
今度は両手でそれらを鷲掴みにした。目を凝らすとそれは……二枚の英世だった。
「あっ」
丁度いい金額なら盗む延安。本日は三枚の英世を手に入れた。




