表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
帰ってきた松本達  作者: 時田総司(いぶさん)


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

10/31

第十節 ラストバッター

9回、裏の攻撃は――、3番中堅守、天音そぷら




(インコース……)




3番、天音そぷらは考える。


(インコースでカウントを取って、のけぞらせてからアウトコースにギリギリ決めて打ち取りに来る……)※深読み


第1球――、3番、天音そぷらに対し、投げた!!


「インコース!! でも……」


ボールの軌道はストライクボールではない。


(スライダーだ!! ここから曲がるはず……!!)


しかし――、


(曲がれ、曲がれ、曲がれ、曲がれ!!)


白球は曲がら……




ない!!




「!!」


「ガギンッ!!」


バットの根っこ、どん詰まりの打球はフワフワっと上がった。


「レフトー!!」


遊撃手小山田は言った。レフトボールと――。


「ショート!!」


左翼手フタエは言った。ショートボールと――。




「どっ!」




打球は不運にもレフトとショートの間に落ちた。


「わっ!!」


ノーアウトのランナー出塁に、三塁側ベンチは沸いた。


「すんません、小山田さん!」


「サッ」


謝るフタエを右手で制止した小山田はマウンドに近付き、言った。


「すまん、タカマサ。打ち取った打球だったのに俺らの声掛けが足りなかった」


「仕方ないっス。飛んだところが悪かっただけです」


タカマサは軽く返し、次のバッターを睨み付けた。


次は、4番投手、アダム。捕手山田次郎はサインを送る。


(ここは長打だけはダメだ。最悪、フォアボールでもいい。クサイとこついてしぶとく勝負していこう)


(初めから逃げてるようで気が気でないが……)


コクリとタカマサは頷いた。


「(逆転ツーランを浴びる様なマネだけはしたく)……ねェ!!」


「ビュン!」


ボールはアウトローギリギリへ!


(このコース、ストライク、ボールどちらに判定されてもおかしくない!! さあ、どうする!?)


捕手、山田次郎の頭で考えが駆け巡る! 




しかし――、




「キン!」




「!」


「!?」




「どっどど……」


打球はレフトへ。


「二者連続のレフト前だぁああ!!」


三塁側ベンチは更に沸いた。それでも山田次郎は冷静にタカマサへ声を掛ける。


「ただの単打だ。しかも初球。4球投げてフォアボールよりよっぽど良い」


「ああ、悪い……次のヤツは必ず仕留める……!」


次は5番左翼手、奏夢りずむ


奏夢りずむは打席でバントの構えを見せる。キラキラ高校の監督、海音マリンは考える。


(クリーンナップのお前にバントのサインだ、さぞ悔しかろう……。しかしこれは勝負事、一切の私情は捨て、勝ちに拘ってもらうぞ)


奏夢りずむに対し、第1球――、投げた!


「ビュン!」


「コツン……」


奏夢りずむはバント、打球は三塁手セキズの前に転がり、一塁へ投げるしかなかった。


「パシッ!」


「アウッ! 1アウ!!」


(流石にうめえな……)


セキズは三塁側ベンチを睨み付ける。そのベンチでは――、


「初球から行かなくても良かったんだぞ、奏夢りずむ。何も1球で1アウトくれてやらなくてもいい」


「……」


黙り込んでしまう奏夢りずむ


「でもナイスバントだ。よくやってくれた!」


「ハイ!!」


完全に押せ押せムードの三塁側ベンチ。サヨナラのランナーを2塁に背負ったタカマサだったが、彼は、




笑った。




(いいぜぇ……このピリピリとした緊張感……堪んねぇな……。ここで抑えてこそ、真のエースだ……!!)


次は、6番右翼手、一心ぴゅあ




「ビュン!」


「ドパァン!」


「ストライーク!!」




「ビュン!」


「カッ!!」


「ファー!」




「ビュン! ググッ」


「ブン!」


「ストライーク!! バッターアウッ!!」




ストレート、ストレートからのスライダーで、タカマサは三振を奪った。


「よっしゃー! 2アウトー!! あと一人だ!!」


小山田が声を上げる。


「……」


捕手山田次郎は考える。


(結果的に3球三振にできた……。タカマサ、凄いピッチャーだ。一緒にバッテリーを組めて良かった……)


「ブルッ」


山田次郎は少しだけ武者震いを起こした。


(あと……1アウト)


タカマサは、ここに来て更に集中力を上げる。


ラストバッターに対し第1球――、


「ビュン!」


「ドパァン!」


「ストライーク!!」


アウトロー、ここにしかない1球を放った。


(あと……2球……)


(くっそー、絶対打ってやる。ヒーローになるのは、僕だぁー)


ラストバッター、ディスボールを何としても打つぞと、身構える。


次の1球――、




「ビュン!」


「振る!!」


「ゴシャァ……」


結果はどん詰まりのピッチャーゴロ! タカマサはそれを捕球し、1塁に投げる……!



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ