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24話 想い


「ぐ…!」


 ウィーブスが再生しようとする。が、ユウキはそれに構わず斬りつけ続ける。


「…いくら、斬ったところで無駄だろう。が、痛みは与え続けられるだろう?」

「が…ふ」


 ユウキが斬り、ウィーブスが再生を繰り返す。ユウキはやがて攻撃をやめ後ろに下がる。


「がは…っ。…はあ…はあ…」


 ウィーブスが再生する。四つん這いになり大きく息を吸っている。


「…どうした?終わりか?俺はまだまだ斬り足りないぞ?」


 ユウキが冷めた視線をウィーブスに向ける。


「…そんなに俺が憎いか…なら…なら!もう一つ教えてやるよ!あの魔王にはな。かつて親しくしていた魔族の女がいたんだよ!女は人間と手を取るべきだと言う俺にとって不都合な存在だった。キースの野郎がそれに感化されて人間を殺さなくなるのを恐れたからな。だから、俺はその女を殺した!人間に変装してな。それでもあの女は人間も魔族と同じ、と死に際に言い、キースは犯人追及をやめ、迷いながらも人間を殺し続けていた!無様だよなあ!想いなんてものは無駄なんだよ!」


 ウィーブスは醜く笑う。


「…無様なのはお前だよ。ウィーブス」

「…あ?」

「…無様なのはお前だよ。いや、哀れとでもいうべきか?」


 ユウキはウィーブスを睨みつける。ユウキはユウイチの葬式の帰り道の出来事を思い出す。——あの日は自分の支えを何もかも失い、何も見えないような気分だった。ただ暗い顔をして、歩いていた。


「…ユウキ」


 ミナが心配そうな表情をのぞかせる。ユウキはミナをちらりと一瞥しうつむく。


「…何で、いつもいなくなるんだ」


 ユウキはつぶやく。


「どうして、いつも…いなくなるんだ…?俺が悪いのか?」


 ミナは黙ってユウキの言葉を聞いていた。


「ただ、俺は大事な人たちといたいだけなのに…たった数人でいい。多くは望まない。なのに、何でいつも…いなくなってしまうんだよ!」


 ユウキは立ち止まり、その白くなりかけた頭を押さえながら叫ぶ。


「一人にしないでくれよ…。孤独にしないでくれ…。いや…大切な人がいるから苦しいのか…?なら…いっそ…誰とも…関わらないまま…」


 その姿はまるで怯え、殻にこもった小さな子供のようだった。


「…ユウキ」


 ユウキは顔を上げ、ミナを見る。とても優しい笑顔だった。


「…好きです。付き合ってください」


 ミナがそう言った。ユウキの目が驚きで見開かれる。


「…は?何言って…」

「あなたが好きです。いつも私を守ってくれたあなたが。私はいつもあなたを想っているよ。あなたの側にいる。孤独じゃない。だから…関わることを…恐れないで」


 ミナは構わず続ける。


「私は何度でもいうよ。あなたが好き。あなたは孤独じゃない。私はずっとずっとユウキに告白し続けるよ。ユウキが前を向くまで。ユウキが乗り越えて、私と歩き出してくれるまで。毎日、毎日。答えを出してくれるまで」

「俺は…」


 ユウキがうつむく。それを見て、ミナは首を振る。


「答えを出すのは今じゃない。ユウキが立ち上がり、乗り越えようと決心した時。だけど、覚えていて。あなたは孤独じゃない。そんなこと、忘れてしまうくらい私は毎日、言い続けるんだから」


 ユウキがハッとし、ミナを見る。慈愛。そんな言葉を表すかのような優しい笑顔だった。


「あなたが…好きです」




(…あれがあったから、俺は今の俺がある。どんなに下を向いたって、最終的には上を向けた。それは彼女の想いのおかげだ。想いは…想いは…)


「他人の想いは人を強くする!それが…どんな結果になろうと…自己を見るきっかけになる尊いものだ。それを知らず、ただあざ笑うだけのお前は無様なんだよ。…ウィーブス!」


 ユウキは駆け、その刃をウィーブスに振り下ろす。


「…戯言を!」


 ウィーブスが手で防ぐ。だが、結局は押し切られその手は宙を舞う。


「…ぐ!」


 ウィーブスは再生し、ユウキを憎悪の目で睨みつける。


「…もういい。もういい。キースなど、どうでもいい。この力のすべてはお前を殺すために使う!人間!」


 ウィーブスから禍々しいオーラが発される。


「おおおおおおおお!」


 ウィーブスが咆哮すると象くらいに大きくなり、今まで以上の無数の腕、さらに無数の首が生える。


「…気持ちわりぃ。まさに怪物だ」

「いつまでも余裕でいられると思うなよ!」


 複数の首が炎や雷などをユウキに向かって吐き出す。それと同時に無数の腕がユウキを襲う。


「終わりだ」


 ユウキがそう言うと村人が一斉にウィーブスに向かって魔法を打ち込む。


「ぐあああ。こんなもの…こんなもので…」

「こんなもので終わるわけないだろ?ウィーブス」


 ユウキはニヤリとする。


「まだ、一人残っている」


 ユウキはそう言いミナを指さす。ミナの魔法陣が光り出す。


「今度こそ、感じるだろ?あの力強いマナを」

「あ…が…」

「ウィーブス。俺はお前に一つだけ感謝しなきゃならないことがある」

「感謝だと…?」

「ああ。お前が俺をこの崖の底に引きずり込んだおかげで…俺はミナと再会することが出来た。…いわば、お前は恋のキューピッドだ。ちょっと怪物じみた見た目だが」

「戯言をおおおお‼」


 ウィーブスが怒りに叫ぶ。


「邪悪なるもの。その檻に縛り」


 ミナが詠唱を始める。するとウィーブスを中心としてもう一つの魔法陣が展開され、ドーム状の透明な壁が現れ、村人たちの魔法を防ぐ。


「どういうことだ…?」

「燃えろ。燃えよ。その檻で炎に狂え」


 次の瞬間、壁の中に業火が発生し、ウィーブスを襲う。


「狂いし罪人、静けさを求めよ。されど、その狂気を静けさは受け入れん。手にするのは、終焉のみ」


 壁の中に水が発生する。そして、それはやがて業火と混ざり——


「”相容れぬ狂気と(ウラノス・)静けさの檻(ガイア)”」


 大爆発を引き起こした。その爆発で地面は揺れ、煙が巻き起こり、やがて透明の壁が消えて、煙が外へと流れ出していく。


「やったか!?」


 一人の村人がそう叫ぶ。ユウキは声がした方を軽く睨みつけ、煙の方へ視線を向ける。煙が晴れるとそこには——ウィーブスが立っていた。


「…マジかよ」


 先程のような巨体ではないもののしっかりと立ち、こちらを睨みつける。


(クソ…あれで燃え尽きなかったのかよ!…さっきはでかい口叩いてたが実際、さっきのウィーブスの攻撃で俺自身の身体も相当なダメージが来てる。ヤバイ。気ぃ抜くと倒れそうだが…)


 ユウキはちらりとミナや村人を見る。全員、大きく息を吸っている。


(…たぶん、全員マナを使い果たしたんだろう。俺自身もほとんどマナは残ってないが…やるしかねえ!)


 ユウキは刀を構えウィーブスに向かっていく。


「…人間。お前らのような卑怯で軟弱な生き物がこの俺に勝てるわけがない。この手で…葬ってやる‼」


(…叩き込め。その一撃を…!)


 ユウキは上半円を描くようにウィーブスを斬る。


「ぐふっ…!」


(…一撃で駄目ならその次を!)


 続いて下半円を描くように斬りつける。


「っ…が…あ」


 (そして、最後はスピードを乗せて断ち切れ!)


「”月閃(げっせん)”‼」


 そして、高速で重さを乗せてウィーブスを斬りつけた。…そして、刀が折れる。


「…え?」


「…最後の最後でしくじったな!人間!」


 ウィーブスの魔の手がユウキを襲う。


「ユウキ!」


 ミナの悲鳴が響き渡る。



















 地面に鮮血が飛び散った。




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