11話 宴
「んー!おいしいです!」
ルノアは幸せそうな表情で大量の料理をむさぼっていた。様々な魔物が次から次へと食卓に料理を運んでくる。味は文句なしの絶品だ。
「…なんか、めっちゃ自然な感じで始まってんだが」
ユウキは苦い顔をしている。
「でも、うまいだろ?」
キースにそう言われ、ユウキはスープを飲む。
「…そうだな」
その言葉を聞き、キースは笑みを浮かべる。
「…で、魔王が一人じゃないっていうのはどういうことだ?」
ユウキは魔王に問いかけた。
「ああ。魔王は多く存在する。この世界は20人の魔王がそれぞれの世界を支配しているんだ。まあ、その他の魔王もいるっちゃいるがな」
「…すると人間は魔王によって支配されているということか?」
「まあ、そんな固いもんじゃない。自由にさせている魔王もいれば…人間を支配している魔王もいるな」
「…」
「だが、大抵の人間は魔王に逆らおうなんてしない。圧倒的な力の差があるからな」
「…本当にそれだけの理由か?」
「…やはり、お前は賢い」
「どういうことです?」
今まで料理を貪っていたルノアが口を開く。
「圧倒的な力の差があるからといって誰も魔王に逆らおうとしないなんてことは考えにくい。これまで誰も魔王の支配に反発しなかったというのは不自然だ」
「おいおい。さすがに反発する者が今までいなかったということは無いぞ。それこそ今も他の魔王の支配下の人間には魔王の支配に反発する者もいる。魔王を脅かしかねん組織もいるが…そうじゃない。魔王の支配。これは契約なんだ」
「…契約?どういうことだ」
「昔、勇者と呼ばれる一族と魔王はどちらが世界を支配すべきかで対立していた。そして勝った方が世界を支配するという契約のもと大規模な戦争が起こりその結果魔王が世界の支配権を得たという事だ」
「…よく、人間は今そんな契約で納得して今まで支配されていたものだな」
「俺も詳しくは知らん!ただの言い伝えだしな。人間もこれを覚えているものはいないだろう。実際は生まれてきた時から魔王の支配下。こういうものだからと常識になっているのが大きい」
「ほんと、周りの環境って大事だよな。…ところでさっき20人の魔王がそれぞれの世界を支配していると言っていたが、それぞれの世界とはどういうことだ?」
「簡単な話だ。世界は基本行き来のできない20の世界に分割されていて、それぞれの世界で魔王が支配しているという事だ」
「何でそんなめんどいことになってんだ?」
ユウキが問うとキースはおかしそうに笑い言う。
「勇者の時と同じだ。魔王は世界の支配権をめぐってお互いに争った。数多の魔王はお互い殺し合い、魔王の数はどんどん減っていった」
ユウキは呆れたような表情をする。まさに歴史は繰り返すとはこのことだ。
「その現状に危機感を抱いたある魔王は自分に賛同する魔王を引き連れ圧倒的な力で争いを終わらせた。そして世界を20に分割し、自分に賛同した魔王に支配権を与え、そのほかの魔王たちは魔界という領土を奪われ追放された。世界の各地で細々と生きているのは違いないが詳しい場所は知らん。この世界のどこかにもいるかもな…ちなみに魔界の外では魔王は本来の力を発揮できないから、追放された魔王が下剋上しようとしても無理だな」
「なるほどな。…大体は把握した。だが、お前の目的が分からん。どうして俺たちについてこようとする?」
「さっきも言った通り、配下の幹部がな——」
キースはそこまで言うと口をつぐむ。ユウキの視線が鋭くなっていたからだ。何を言いたいか声に出さなくても分かる。本音を言え。そう言いたいのだろう。キースはその視線の迫力に思わず固唾を飲む。そして、溜息をついた。この男には本音で話さなければ通じないのだろう。
「俺は自分が支配している世界の民の暮らしを自らの目で見たいのだ。だが、それは魔王としてではなく、一人の冒険者としてみてみたい。一人の冒険者としてありのままの世界を見てみたいのだ。そして、思いたいんだ。ああ、この世界はもう安心なんだ。一人の魔王が恐怖をもたらしていた世界はもうないんだと。…そのためにはまず、反旗を翻した幹部を止めなければいけないけどな」
キースはそう笑顔で言った。優しい笑顔だった。ユウキは驚きの表情で魔王を見る。この魔王が優しかった親友と重なったからだ。
「…いつも…何でいつも優しい奴からいなくなるんだよ…」
ユウキはそう小声でつぶやいた。
「ん?なんか言ったか?」
「…何でもない」
ユウキはキースをまっすぐ見る。キースの目には一切の曇りを感じなかった。
「いいぜ。キース。…お前を認める」
「お、じゃあ…!」
ユウキは答える代わりにルノアの方を向く。
「いいか?」
「いいんじゃないですか?別に悪い魔王ではないみたいですし」
ルノアが食事をしながら答える。というか、いつまで食べているのだろうか。ユウキはキースの方へ再び向く。
「…よろしくな。キース」
ユウキはキースに手を差し出す。その表情はとても優しかった。
「おう!」
魔王は屈託のない笑顔でその手を取った。




