出会い
「おはようございます」
「中野さんおはよう、今日は10時から来客あるから準備お願い」
「承知いたしました。」
私は中野 瑞穂 不動産会社で働く26歳
18歳で就職し転職を繰り返し、水商売やらエステ関連、飲食店などいくつも経験をしたが、今のこの仕事は割と好きだ。
飽きっぽい私でも、毎日楽しめている。
この、1年の半分は雪で覆われた広い北国に生まれ、
複雑な事情がありながらもここまで生きてきた。
「ねえねえ、今日の合コン年下くんだって!」
同僚の優衣がキャッキャと今日の夜に開催される合コンについて話す。
「合コンて得意じゃないし、年下くんはもっと得意じゃないなぁ」
「まあ、瑞穂は年上キラーだもんね!どうなった?21歳歳上のおじ様は」
「知らない、たまにしか連絡とらないから」
「新しい男、つかまえよ!」
恋愛ごっこは好きだけどそうそうピンと来る人がいない。
とか言いつつ行くからにはしっかりメイクも直す。
さっき話に出てきたおじ様は、そもそも不倫の関係。
彼の家庭状況に興味もないし、連絡が来て空いてれば
会うだけの関係。それ以上でもそれ以下でもないから
どうなったも何もない。
「山下優衣25歳OLです♡」
どうやら優衣はお目当ての男子が居たみたい。
優衣みたいにわかりやすく語尾に♡をつけるなんて私にはなかなかできない事だ。
優衣は女の子!って感じで小柄で守りたくなるような
見た目。ハニーブラウンのふわふわな巻き髪で
毎日いい香りがする女子力高めの女の子。
だけど見た目に反してサバッとしてる所もあるし、
色々経験したが故、話題豊富な一面もある。
だからといってはなんだけど、一緒にいて気が楽だ。
ここ数年の私を一番わかっているのはこの子と今日の合コンをセッティングした愛美。
会社も同じ家も近い優衣は身近で寂しさを埋めてくれる大切な友達だ。
「カシスソーダでお願いします♡」
普段一緒に飲んでるビールと日本酒は今日は封印するようだ。
「そっちの子は??」
「私はビールいただきます」
『新しい出会いにかんぱーい』
今日のメンツは知り合いが多い愛美が友達の後輩を紹介してもらい揃えたらしい。
男三人、女三人の少人数の飲み会的な感じだ。
男の方は2つ下の24歳。
私にはシワが足りない。大人の男のシワになんとも言えない色気を感じるのだ。
男の方は「涼太」「和樹」「匠海」って言うらしい。
涼太は爽やか系の犬っぽい男の子。
積極的に注文などをしてくれるいい子ちゃんって感じ。
和樹は、なんとなくミステリアスな真面目くん。
不思議な雰囲気を持っている。
匠海は、穏やかそうな子だ。優しく2人を笑って見ている。
合コンなんて来そうにもない雰囲気。
でもこういうタイプが1番、女たらしって私は思う。
会も終盤になり、二次会はどこに行こうかと盛り上がる
和樹と優衣。涼太と黒髪ショートで、赤リップが似合う綺麗系の愛美がどうやら盛り上がっている。
意外な組み合わせだ。と私は思っていたが、
愛美と涼太に関しては姉と弟って感じで恋愛関係になりそうな雰囲気は感じられない。
優衣は和樹のミステリアスな雰囲気に
結構やられている様子。
匠海はというと、そんな4人の様子をちびちびビールを
飲みながら見たり、静かに突っ込んだり。
派手に楽しんでる感じではないが、友達が楽しんでる姿がま楽しいタイプなのか、楽しそうにはしている。
恒例のトイレで女子会タイムだ。
「和樹くん、いいわあ。たまらないよね、あの雰囲気がどう豹変するのか見てみたい♡」
「奥手そうだけどね?涼太くんは、なんか弟って感じ。犬感がすごい笑」
「瑞穂は?誰が1番?」
「…。若いわ。2歳しか変わらないけど。シワがいいのよ」
「出た出た、おじ様キラー笑私は和樹くん狙いだから!カラオケ行こう!」
「優衣が楽しそうでこっちも楽しいわ」
愛美はクールな印象だが、優しい。
優衣は完全に戦闘モードのようだ。
トイレから戻るとなんと、もう会計が済んでいて
年下くんやるな。と思った。
店から出ると3ペアに自然となり私の隣には匠海。
身長が大きくて隣に並ぶとなんだか年下とは思えない感じがした。
「瑞穂さんて、あんまり合コンとか来ない感じ?」
「っていう匠海くんもあんまり来ない感じでしょ?」
「あいつらと飲むのが楽しいからそこに女の子がいるって状況は結構あるけど進んで参加はしないかな」
「うん、そんな感じした。2人が大好きなんだね。」
「腐れ縁。小学校から同じやつらと酒飲めるってなんか良くない?」
「ロマンチストなんだね」
「ロマンチストなの?それ。笑」
「私も、2人と飲むのが好きなの。イカの肝和えで。」
「しぶ!笑」
「ちょっと瑞穂!私はチータラだからね!」
「チータラもなかなかのチョイスだよ笑」
なんだかんだで楽しいなあって思えた。
匠海との会話も、波長が合う感じで
お酒も入ってなんだか心地よかった。
カラオケも盛り上がり、時計はシンデレラタイムを迎えようとしていた。
「次、どうするぅ??」
涼太が三次会を提案する。
「和樹くんはどうするの??」
優衣が少し酔った目付きで和樹に尋ねる。
「みんなが行くなら行こうかなあー」
このまま優衣に飲み込まれてしまいそうな和樹。
「じゃあ匠海も瑞穂ちゃんも決定ね!!」
涼太に三次会参加を強制決定させられ、
次に向かったのはダーツバー。
「なんかこの子達、チョイスがなかなかだね」
愛美が私の耳元でこそっという。
「ね、カラオケからのダーツバーはギャップ激しいけどね。笑」
「匠海くんはどうなの?」
「どうなるこうなるってほど話はできてないよね笑」
「まあ、たしかに。でも、彼、穏やかで優しそうね。」
「どうかなぁ〜、意外と女たらしだったりして」
「モテそうだしね」
「なーに話してるの!」
涼太が子犬みたいな顔で聞いてくる。
お酒が入って子犬感がマシマシだ。
「愛美ちゃん、ダーツ勝負しよーよ!」
「いいよ!負けないから。」
愛美が涼太とダーツ勝負をするらしい。
「負けた方が、テキーラね?」
なにやら、このバーテンダーは飲ませたいらしい。
「龍二!テキーラはやばいって!!笑」
三人のもう1人の仲間のようだ。
「涼太は急に酔いがくるタイプだからなぁ、愛美ちゃんに介抱してもらえ」
「俺、出会って初っ端から介抱とかださくね?!」
「姉と弟っぽいからぴったりだよ」
匠海が笑いながら茶化す。
一方、優衣は和樹と話し込んでるみたい。
優衣は軽そうに見えるけど色々経験もしているので
話は途切れないだろう。
「ふぅ…。」
トイレに行くと言って廊下に出た私は
少し酔いを覚ますために風にあたりにバーの一階にあるコンビニに来た。
タバコと、水を買い、そろそろ戻ろうと思った。
たまにある合コンで、三次会まで行くのはなかなか珍しく
私自身、なんだかんだで楽しんでるなぁとおもえた。
「でもそろそろ美味しい日本酒が飲みたいなぁ」
「イカの肝和えと?」
いつのまにか、コンビニに来ていたらしい匠海に心の声を聞かれていた。
「え、声に出てた?!」
「ははは、出てた。美味しい日本酒の店、行く?」
「なんかいいとこ知ってるの??」
「俺の兄貴がこの近くで、日本酒と刺身の店やってる。イカの肝和えがあるかはわからんけど。」
「イカの肝和えは、塩辛の初期段階だからなかなかないからね!イカの肝和え、ネタにしすぎ。笑」
「イカの肝和えはインパクト強すぎ。笑」
「でも、みんな残してきて大丈夫かな??」
「いい大人なんだから大丈夫だよ笑」
「じゃあ、イカの肝和え食べる!!」
「あるといいな。肝和え笑」