1-6.【閑話】親友からのアドバイス
朝の光が、明るかった。
窓から差し込むそれが、部屋の中のあらゆるものを、無防備に見せている。
「んーっ、あつっ!」
フレンチトーストをくわえたアリーが、変な声を出した。
焼きたてのそれは、まだほんのり湯気を立てている。
にもかかわらず、彼女は待てない。
皿から直接持ち上げ、そのまま口に運んでしまう。
「はふ、はふ・・・」
口の中で状況不利な格闘をしながらも、しっかり笑っている。
その様子を、部屋の隅で静かに見ている影。
ライリューンである。
★ ★ ★
実は、入ってきた時に、声をかけるタイミングはいくらでもあった。
けれども、声は、かけなかった。
部屋の隅から、私に見られているとも知らず、アリーは、無邪気に活動を始める。
「よしっ!今日は、これでいこっと♪」
さっと、おなかの四次元ポケットから新しいお皿を1枚取り出すと、テーブルの上に置き、フライパンに乗ったフレンチトーストを高らかに宙に放り投げたのである。
「表ならショート、裏ならロング!」
宣言は、やけに堂々としている。
まるで、世界に向けてルールを提示しているみたいに。
その言葉にわずかに目を細めた。
・・・変わらない
心の中で、短く呟く。
昨日、すべてを失ったはずなのに。
その事実は、彼女の動きにほとんど影響していない。
むしろ・・・
「いくよー!」
アリーは、楽しそうだった。
本当に、楽しそう・・・
テーブルの上のお皿に着地したフレンチトーストをニコニコと並べて笑っている。
アリーが、身を乗り出した。
「うんっ、ロング!」
ぱっと顔が明るくなる。
まるで、それが最初から決まっていた正解みたいに。
「よーし、今日も、目一杯いくよっ!」
すぐに、モニター画面に目をやり、迷いなく画面をタップする。
その指の速さに、ためらいは一切ない。
一連の動きを静かに見つめていた。
判断も、行動も、全部が早い。
だからこそ、届く場所もある。
ただ、落ちる時は、加速度的・・・
アリーは、すでに相場に夢中で、もう周りは見えていない。
フレンチトーストは、半分かじられたまま皿の上に戻され、シロップが少しだけ垂れている。
その無造作さに、ライリューンは、わずかに視線を落とした。
そして、ゆっくりとポケットに手を入れる。
取り出したのは、小さなメモ帳。
いつもと同じ、使い慣れたもの。
ぴりりと静かに破る。
音は、アリーの世界には、届かない。
ペンを取り出す。
カチリとひとつ小さなノック音。
一瞬だけ、手が止まる。
けれど、何も残さないよりはいい気がした。
ペン先が、紙に触れる。
流れるようなインク。
無駄のない、簡潔な文字。
自分の書いたそれを見つめ、ほんのわずかに息を吐いた。
これでいい。
それ以上は、書かない。
全部、余計だ。
アリーは今、画面の中の数字を追いかけている。
その世界に、長い言葉は、届かない。
机に近づく。
アリーのすぐ横を通るが、彼女はまったく気づかない。
「よしよし、いい感じぃ!」
その横で、自然な動作で手を伸ばす。
フレンチトーストが置かれ、コインとサイコロが転がったすぐ近く。
そこに、紙をそっと置いた。
まるで、最初からそこにあったかのように、違和感なく。
指先を離す瞬間だけ、ほんのわずかに緊張が走る。
気づいた時に、読めばいい。
それだけでいい。
ゆっくりと手を引き、体を離す。
一歩、後ろへ。
アリーは、気づかない。
「お、上がってるじゃん!やっぱ、私天才!神だねぇ。」
無邪気な声が、朝の光の中に広がる。
それを聞きながら、静かにドアの方へ向かった。
ドアノブに手をかける直前、ほんの一瞬だけ振り返る。
机の上。
コイン。
サイコロ。
食べかけのフレンチトースト。
そして、小さなメモ。
『夢も大事、でも、利確はもっと大事!』
言葉は、賑やかな空気の中で、やけに静かにそこにあった。
何も言わず、ドアを開け、そっと閉めた。
部屋の中では、まだ、アリーの声が続いている。
「いけいけいけー!」
その声のすぐそばで、誰にも気づかれないまま、一枚の紙が、静かに未来を待っていた。
* * * * *
「ちょっと、待ってぇぇぇぇ。おかしいって!私、そんなに占い好きじゃないしっ!」
叫んだ 瞬間、目が覚めた。
寝汗がひどい。
「アリー様、ずいぶん、うなされておりました。大丈夫ですか?」
マーガレットが、心配そうに 声を かけてきた。
夢・・・。 ずいぶんと ひどい内容の夢だった。
去年以上にひどい。
そもそも、この「占い好きじゃないし・・・」ってセリフにしても、占いのシーンは、あまりに面白くなかったので全部カットしたような気がする。
もし、これが小説なら、読まされる読者が、かわいそうなレベルだ。
立ち上がり、窓を 開けた。
窓枠に、へばりついた 桜の花びらを、指で そっと払う。
舞う 花びらが、ひらひらと 飛び去った。
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今日は、4月1日。
春の 夜の夢は、短く そして 儚い。
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頑張って最後まで読んだ人は、高評価を押して次の話へ⇒
今回のお話は、次のお話と一対ですが、ここまでたどり着くような方には、そんな説明は不要な気がしました。
【美容師の娘】 【閑話】パンケーキとメープルシロップの危険な香り
https://ncode.syosetu.com/n6487gq/233
【風と水の魔女】 2-44.【閑話】観測者の笑い
https://ncode.syosetu.com/n9635hm/81
【蛇足4】いつ終わるの?2 (1は、【美容師の娘】にあります)
中国との会談前に終わってくれればいいなぁ・・・
米中首脳会談前に戦争が終わるのは、普通に考えれば、無理なような気がしますが、実は、簡単です。「終わり!あとは、頑張ってね♪」って宣言すればいいだけですから。後始末もしない。散らかったままで、とりあえず、終わりを宣言し、「ホルムズ海峡?何それ?おいしいの?」と言えば、終了するだけはできます。ただ、それをした瞬間、サウジUAEカタールオマーンなどは、米国にそっぽを向きかねませんし、原油危機の本質は解決しないため、大変なことになる気がします。ただし、イラン産原油の輸入を自由にしてよいと、アメリカが西側各国に認めた場合、日本は、出光さんのおかげでちょっと楽になるかもしれません。塞翁が馬・・・「逃げ出しても、戻って来ても、トラブルを起こし続ける面倒な馬の話」を思い出しました。
【蛇足5】エイプリルフールなので、下の内容は、きっと嘘のはず!
もうやらないって、去年、言ったような気がするけれども・・・もちろん今日はエイプリルフールです♪
2月12日、1ドルは、152.73円であった。これは、いいネタになりそう。そう思ったあるなろう作家は、ドル円で遊ぶことを考えた。
面倒なので、結果だけ♪
3月12日、159.02円で売却。
いや、ずーっとそんな相場見続けているわけにもいかないですし、介入が怖かったので160円に近づく前に売らなきゃダメだなぁって、売りました。でも・・・売ってすぐ気づいたのです。
「日米首脳会談」より前に、介入は、無いことに・・・
そうですね。ここら辺をちゃんと考えてやっていれば、あとちょっと・・・159.5円近くまで頑張れた気がします。まぁ、ここに書く蛇足のために遊んでいるだけなので、そこは、気にしませんが・・・
その場合でも、首脳会談終わったら、即、売ったでしょうね♪そこからは、介入ありですから。
と、言うことで、今回は、去年より頑張らずに、1か月放置で遊びました♪
※なお、これは、エイプリルフールのネタなので、(なぜか相場を見る私は、お金がかかっているかのようにドキドキしていますが)もちろん嘘のはず!




