1-5.【閑話】ライアーヌの苦悩と、ライリューンのお手伝い
★★【ライアーヌの苦悩】
王都の魔法道具地上波液晶ビジョンエイプリル放送局。
王国にあまねく放送を普及させ、豊かで良い番組による放送を行うことなどを目的として、王国放送法の規定により設立された法人である。
ここでは、毎日、ニュースやスポーツ、ドラマや映画、ミュージックなど、充実した番組を放送している。
そんなある日のこと。
地上波液晶ビジョンエイプリル放送局に激震が走った。
多数の番組を担当していたエグゼクティブディレクターによるパワハラが確認され、さらに上層部の不適切な対応により、世間から非難を浴びた結果、番組にCMを提供していたスポンサーが、次々とその広告をおろし始めたのだ。
3月までは、特定の時間帯枠に広告料を提供するCM契約が残っているのでまだ良い。
しかし、4月の番組改変からは話が別。
スポットCMと呼ばれるその場限りのCM契約の予定しか入っていないのだ。
液晶ビジョンエイプリル放送局の制作統括であるライアーヌは、苦境に陥っていた。
予算が足りない・・・いや、今というだけならば、足りている。
しかし、その場限りのスポットCMの契約だけでは、先の資金繰りが見えないのだ。
新番組立ち上げの期限は、すぐそこ。
しかし、この番組の視聴率が悪ければ、今後のスポット契約とて、簡単に取れるわけではない。
彼女は、決意した。
あの伝説の映像制作プロデューサーを呼ぶことを・・・
[冒険者の娘 ライリューン] 【 1-5.今日は、エイプリルフール 】
「ようこそ、お越しいただきました。ヘドファン=アリー様。」
その伝説の映像制作プロデューサーは、豪華な6頭立て馬車に乗って現れた。
「うん。ご苦労さんっ。えーと、番組を立ち上げるんだよね?」
「はいっ。詳しくは、中で・・・」
しかし、ほどなくして、ライアーヌは、自分がとんでもない人物を招き入れたことにショックを受けることとなるのだった。
ヘドファン=アリーの映像制作は、スターシステムと呼ばれる。
まず、人気のあるタレントを中心に据え、企画は二の次。
キャスティングできたタレントのファンが喜びそうな企画をタレントに合わせて用意するというものだ。
だが、今回は、それがうまくいっていない様子が見受けられた。
そう・・・伝説の映像制作プロデューサーが、タレントの出演交渉に失敗しているようなのだ。
だが、ここは、我慢である。
タレントさえ・・・スターシステムにおける視聴率を持っているタレントさえ配置できれば、あとは、なんとかなるはずだ。
なぜならば、彼女は、ヘドファン=アリーであるのだから!
湯を沸かし、秘蔵の茶葉を取り出した。
この茶葉は、エセクタ魔法魔術学院より取り寄せたもので、手に入れられるものの中では、最上級のモノ。
我慢、我慢、我慢・・・
ライアーヌは、じりじりする気持ちを押さえつけながら、紅茶を飲み干した。
しかし、我慢というものには、限度が存在する。
そして、その限度は、アリーのある行動で、決壊した。
あろうことか、彼女は、視聴率を持っていない嫌われタレントにオファーをし始めたのだ。
いや、通常であれば・・・そして、深夜枠のどうでもいい番組であれば、実験的な意味でそれも良いのかもしれない。
しかし、今のエイプリル放送局は、CMの提供が無いのだ。
そこに、不祥事を引き起こしたことのある問題タレントを使った新番組をゴールデンタイムに始めようなどというのは、自殺行為である。
このままでは、スポンサーの足は、エイプリル放送局からますます遠のくことになろう。
これは、どうするべきか・・・
紅茶をすすりながら、妙案を考える。
あっ・・・
この紅茶は、エセクタ魔法魔術学院より取り寄せたもの。
エセクタには、もう一人の敏腕プロデューサーが居たではないか!
ライアーヌは、飲み干したカップをテーブルの上に置くと、馬車に乗り込んだ。
エセクタ魔法魔術学院まで足を運んで、もう一人のプロデューサーを迎えるために・・・
「ようこそおいでくださいました。ケイシー・リィデング・エトガン様。」
あのアリーという名前のゴミくずプロデューサーには、ケイシーさん招聘については、編成局長のヒエー・タヒサスの差し金ということで伝えておこう。
そう考えながら、ライアーヌは、ケイシー氏を迎え入れた。
本当に助かった。
ちょうどケイシー氏のスケジュールが空いていたため、彼女がエイプリル放送局の新番組企画立案の仕事を受けることには、障害がなかったのだ。
彼女のために、アリーの向かい側の部屋をあけ、手足となるスタッフを多めにつける。
これで、なんとかなるはずだ。
★★【ライリューンのお手伝い】
王都の魔法道具地上波液晶ビジョンエイプリル放送局。
親友のライアーヌは、そこで制作統括の仕事をしている。
しかし、相次ぐ不祥事で、今、その現場は、大変なことになっているようだ。
ある日のこと。
私は、親友が、外部から怪しい映像プロデューサーを招き入れて番組を作ろうとしているという噂を聞いた。
これは、まずいことになりそうだ。
親友が詐欺師まがいの人間に騙されるのを見過ごすわけにはいかない。
私は、立ち上がり、エイプリル放送局へと向かった。
「ライアーヌ?大丈夫なの?」
顔をあげたライアーヌは、目の下に大きく黒いクマを作った顔でにっこりと笑った。
「来てくれたのね。ライリューン。でも、大丈夫。敏腕プロデューサーを呼んだから。きっと何とかしてくれるわっ。」
本当に、大丈夫なのだろうか?
疲れ切った様子の彼女に少しだけでも横になるようにすすめ、私は、プロデューサーの様子をこっそりと、うかがうことにした。
ダメだっ!こんな人間を信用してはならないっ。
このプロデューサーは、得体の知れないタレントをキャスティングして、炎上覚悟の番組作りをしようとしている。
こんなことで、新しい番組がうまくいくはずがないっ!
そもそも、地上波で炎上覚悟の番組など今の時代あり得ないのだ。
ここは、一肌脱がなければ、女ではない。
私は、親友のライアーヌのため、何かをしなければならない気持ちでいっぱいになった。
「オリヴィアさん。手を貸して欲しいの!」
そこで目を付けたのは、料理研究家のオリヴィア・ボナム=カーター。
快くYesの返事をくれたオリヴィアさんは、私が説明するまでもなく、今のエイプリル放送局の状況をよくご存じであった。
そうなのだ。
ライアーヌが連れてきているプロデューサーとやらは、頼りにならない。
それならば、私が、番組を作る手伝いをしようではないか。
こう考えた私は、オリヴィアさんがお料理を放送で紹介する料理番組の企画をライアーヌのために考えたのである。
「ライアーヌっ。起きてっ!」
疲れ切って机につっぷしたまま眠ってしまっているライアーヌの肩を揺さぶり目を覚まさせる。
「あっ、ライリューン。ごめん、寝ちゃってたのね。えーと、後ろに居るその子は、誰?」
「この方は、料理研究家のオリヴィアさん。今のエイプリル放送局の状況もよくご存じで、料理番組をやるんだったら、出演してくださってもいいって、快諾してくださったわ。どうかしら?」
「ら・・ライリューン・・・」
ライアーヌの目から、大粒の涙がこぼれおちる。
「うん、分かってる。でも、番組作りはこれからなのよ。泣いている時間は、無いわ。」
「ありがとう、ライリューン。そして、オリヴィアさん。すみませんが、どうぞよろしくお願いします。」
手の甲で涙を拭き、勢いよくライアーヌが立ち上がる。
うん。きっといい番組が出来る。
しかし、悠長に企画を細かく考える時間など、もはや残っていない。
私たちは、局のスタジオを押さえると同時に、オリヴィアさんが言う通りの食材を集めた。
出演するタレントが欲しいが、予算もそれほど無い上に、そもそも交渉しても、出演を断られてしまう。
ならば、どうすればよいか?
私たちが、出演者になればよいのである。
こうして、オリヴィアさん、ライアーヌ、私の3人が出演する『キュートでピーチな3人の歓談クッキング』・・・略して『キューピー3人歓クッキング』というお料理番組の撮影が始まるのであった。
えーと・・・まずは、お米を洗って、ざるに入れておく・・・とっ
「ライアーヌっ、お米をお願いっ!」
ビリビリドッカーン
私が、お米の入ったボウルをライアーヌに渡した瞬間、スタジオ内に強い雷が落ちた。
その発生源は、オリヴィアさんの指先。
あっ・・・そういえば、この子、エセクタ魔法魔術学院の魔女だった。
一瞬にしてさらさらのストレートヘアから、アフロヘアに髪型をイメージチェンジしたライアーヌが、オリヴィアさんにたずねる。
「あの・・・なにか問題がございましたでしょうか?」
人が変わったように厳しい声のオリヴィアさんは、冷たく言い放った。
「ふたりとも、手、洗いました?」
あぁ、そうだ。
慌てすぎて、手を洗うのを忘れている。
私たち2人は、流水にざぶりと手を突っ込んでごしごしと手を擦った。
うん。これでよしっ。
ビリビリドッカーン
再び、ライアーヌがお米の入ったボウルを手にしようとした時、2撃目の雷っ!
「洗えてないっ!手には、見えない汚れやばい菌がいっぱいついています。きちんと指先から肘まで丁寧に洗ってください。」
き・・厳しい。
手を濡らしたら、まずは、ハンドソープを適量取って泡立て、手のひらを合わせてすりすりと擦る。
両手を使い指の間に指を入れながら、手の間をごしごしすりすり。
次は、両手を重ねて手の甲をすりすりすりっ。
それが終わったら、両手を握ってぎゅっぎゅっと洗う。
右手の親指を左手で包んで付け根からぎゅぎゅぎゅっと洗っていき、終わったら反対側。
ツメの中もきれいにしなければダメ。
手のひらにツメを立ててごしごしごし。
そして、手首から肘までをすーいすいと泡立てながら擦ったら、よくすすぐ。
最後は、清潔なペーパータオルできちんとふき取って出来上がり。
「これが、正しい手洗いです。分かりましたか?」
うーん。手洗いだけで、番組の撮高が十分にできた気がする。
さて、お料理の始まりだ。
にんじんを薄くせん切りに。
ごぼうは、小さめで食べやすく。
お豆腐で作った模造肉は、7ミリ角の大きさでサイコロ状に。
私が大好きな油揚げは、細切りにする。
用意出来たらお鍋に、ごま油をさらっと流す。
ここで、にんじん、ごぼう、模造肉、油揚げを適度に炒めたら、さっきの米をざらっと上から入れて、さっと混ぜよう。
くるっ くるっ
適度に混ざったら、あらかじめ用意していたお出汁を入れる。
これをぐるりと混ぜた後、お醤油、料理酒の順番で放り込んで、もう一度混ぜたら、強火にしてふたをする。
ぐつぐつしてきたら、ふたは取らずに弱火にして10分強。
最後に強火にして、火を消したら15分蒸らす。
「わぁっ、出来たぁ。」
ふたを開けると同時に、ぶわっと湯気があがるお鍋を見て、アフロを揺らしながら、ライアーヌが歓声をあげた。
しかし、歓声をあげるのは、まだ早いのだっ。
小さく切ったネギを上からパラパラと振って、おいしい五目御飯の出来上がりっ!
ふぅ。終わったぁ。
雷を何回も飛ばされながら、撮影を終えると、オリヴィアさん、そしてライアーヌとハイタッチ。
料理が絡まないならば、オリヴィアさんは、温厚そのものだった。
ご機嫌なライアーヌは、とっておきの紅茶を飲ませてくれると言う。
楽しみにしながら、ライアーヌの後ろについて制作室へと向かうと、そのお部屋には、先住民が・・・
「まだ、ここに居付いていたのですか?さっさと出て行ってください。」
ライアーヌが、冷たい声で言い放つ。
そこに居たのは、得体の知れないタレントをキャスティングして、炎上覚悟の番組制作をしようとしていたプロデューサーのヘドファン=アリーだった。
「失礼しました。オリヴィア様。このゴミくずプロデューサーが、まだこんなところに居付いていまして・・・すぐに片付けてきれいにしますので。」
ライアーヌは、オリヴィアさんに頭を下げると、アリーの襟首をつかんで、お部屋の外っていうか、放送局の外へと投げ捨て・・・
* * * * *
「ちょっと、待ってぇぇぇぇ。おかしいって!番組制作じゃなくて、私も、料理お手伝いできるよ!」
叫んだ 瞬間、目が覚めた。
寝汗がひどい。
「アリー様、ずいぶん、うなされておりました。大丈夫ですか?」
マーガレットが、心配そうに 声を かけてきた。
夢・・・。 ずいぶんと ひどい内容の夢だった。
いつも以上にひどい。
本当に、一昨日、途中まで書いていたエセクタ魔法魔術学院文芸部の話のほうにしておけばよかった。
いや、頑張ったんだけどねぇ・・・
もし、これが小説なら、読まされる読者が、かわいそうなレベルだ。
立ち上がり、窓を 開けた。
窓枠に、へばりついた 桜の花びらを、指で そっと払う。
舞う 花びらが、ひらひらと 飛び去った。
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今日は、4月1日。
春の 夜の夢は、短く そして 儚い。
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頑張って最後まで読んだ人は、高評価を押して次の話へ⇒
【蛇足】スイーパー
今日は、人が幸せになる嘘をつきたいのに、なぜか暗い嘘しか思いつかない。
そもそも、嘘で人を幸せにしようとするのが、間違いなのかもしれない。
大谷さんが右打席でホームランを打つ絵を平然と描いた前田健太画伯がうらやましい。
あれこそ、人を幸せにする嘘だと思う。
そういえば、一昨日、なんとなく付けっぱなしのテレビでチラリと見たNHKBSの中継。
前田投手は、スイーパーと呼ばれる大きく曲がるスライダーを投げていた。
でも、自分の特徴は、打者の近い場所で曲がるボールだから、スイーパーは、もう止めるって、開幕前に言っていた。
う・・・嘘つきだっ!
一昨日は、エイプリルフールじゃないのに・・・
まぁ、予定が変わったんでしょうけれども、なんで使わないって言っていたスイーパーを使うことになったんでしょうね?
【蛇足】関税と保険料
関税ってありますよね?
あれ、かけられた海外の企業が支払うんじゃないんですよね。
お支払いは、輸出企業ではなく、輸入企業。
なので、実質は、輸入企業への【増税】になります。
そして、販売される商品やサービスに価格転嫁されます。
ってことは、買う人・・・つまり国民への実質【増税】です。
実は、見えない増税をして税収を上げ、目に見える国民への減税の財源とするならば、なかなか頭が・・・い?いや、全然足りないか・・関税での税収じゃ・・・
ということで、世界には、関税でこっそり増税しようとする国や、保険料でこっそり増税しようとする国があるらしいですね♪あっ、国債で孫とひ孫に増税っていう手段もあるらしいです!
『ご案内』
【美容師の娘】 !本日投稿しました アリー視点
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【かわいい 風と水の魔女】 !本日投稿しました ケイシー視点
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