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海に浮かぶ島で、鬼は、鉄を守る

【美容師の娘】シリーズ

ある勇敢な冒険者の娘であるライリューンの物語

【美容師の娘】

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【美容師の娘シリーズ】

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春の夜は短く、眠りが、心地よい。


目を覚ませば、さえずる小鳥の声が聞こえる。


昨日の夜は、はげしい雨音がした。


雨風で桜の花びらは、たくさん散ってしまったことだろう。


ふと空を見る。


濡れた花びらが 窓枠にくっ付いていた。




[冒険者の娘 ライリューン]  【 1-3.泣いた赤オーガ 】




『スーパーウルトラエクセレントアメージングアタァァァック。』


 ライリューンのアメージングアタックが、アリーに襲い掛かる。 危ないっ。 間一髪のところで、その魔法を避けることが出来た。


「ライリューン。 なんで、オーガの味方なんてするの?」


「アリーこそっ。 なんで、平和に暮らしているオーガたちを、そうやって襲うの? そんなに、ヤマートン王国が 大事っ?」


 ライリューンの 悲痛な声が響く。


 そう、ここは、大昔から、あるところに存在する島・・・ オーガたちが居住しているメーギアイランドだ。 ここには、鬼の所有している不思議な力をもつ宝や、さまざまな財宝が ため込まれている。


「ライリューン、問答無用よっ。 アレックスの刀を作るには、鉄が必要なのっ。」


「アリー・・・もしかして、鉄を・・・ 製鉄技術を奪いに来たの?」


 そう、セトーナイン海に浮かぶこの島(ある所に存在した島じゃなかったのか?)は、オーガ製の鉄器を製造する拠点となっている。 ヤマートン王国の四道将軍キビツ・ヒコノミ・コートンを主将とする西道軍が、製鉄技術を得るため、アリーたちと一緒に、オーガたちの島を襲撃したのだ。


「モンキー、ドッグっ、2人は、ライリューンを無視して、オーガの集落へと向かってちょうだい。 バードは、空から、オーガ軍の動きを 監視だよっ。」


「アリー様、了解です。」


 アリーが、団子十郎というお店で 購入してきた キビ団子で 仲間になった モンキーと、ドッグは、一目散に駆け出した。 しかし、バードは、憂いを帯びた顔をしたまま、動かない。


「バード、どうしたの? 空からの監視は、あなたでなければ 無理なのよっ。」


 優秀な飛翔兵師であるバードは、その飛翔魔法で、空からの偵察を得意としている。


「アリー様、私の子供は、大丈夫なんですね? あの子は、あの子は、普通よりも少し、生きる力が 弱いのです。」


「大丈夫っ、人質だからこそ、大切に扱っているわ。 ただ、あなたが動かないのなら、話が変わってくるわね。」


 アリーは、ニヤリと悪い笑顔で、バードに ささやいた。


 バードの子供・・・男の子なのだが、彼には、軽い障害があるのだ。 オーガとの戦に、難色を示した彼女を参戦させるため、アリーは、一人息子を 人質に取ったのである。


「いえ、すぐに偵察飛行に入ります。 申し訳ありません。」


 バードは、パートナーに頼らず、ひとりで活動できるレベルの 優秀な飛翔兵師。 すぐに風魔法を発動すると、空へと飛び立った。


「ホント、グズねっ。 すぐに行けばいいのよ。 って、ライレーン・・・そうはさせないわっ。」


 一瞬のすきを見て、バードを狙い、ライレーンが、矢を放つ。 空中を飛ぶ飛翔兵師は、離陸直後と、着陸時に、墜落することが多い。 そのタイミングでの攻撃は、さすがライレーンとしか 言いようがない。


 しかし、アリーには、これを防ぐ手段があった。 猫だっ。 ライレーンが飼っていた猫を 空中に放り投げるっ。 クルクルクルと空中を待った猫は、パクリと矢を口にくわえ、地面に降り立った。 猫は、高い所から落ちても、着地できるのである。


「ちっ。 撃ち落とせると思ったのに・・・。 普段から、猫を攻撃していたのが、裏目に出たわっ。」


 ライレーンの猫は、その飼い主によって、普段から、魔法攻撃を受けていた。 そのため、強い攻撃魔法であっても、それを回避することが可能だ。 ましてや、今のは弓矢での攻撃である。 簡単に それを防ぐことが出来たのも 当然だ。


「ライリューン。ライレーン。 わたし1人では、あなたたち2人に勝つことはできない。 でもね、勝たなくてもいいの。 あなたたちが、ここで釘付けになっていれば、ヤマートン王国軍の本体が、オーガの集落を攻撃するわ。 わたしは、ただ、ここで時間を稼げばいいの。 わかる?」


「アリー、ひどい。 そこまで堕ちたのっ。 そんなにしてまで、鉄が・・ 刀が必要なの?」


「そうよ、一昨日は、日本刀作りは、こりごりだって言ってたじゃない。 書き始めたから、仕方なく 最後まで書いたけれども、工程が複雑すぎて、途中で、やめたくなるくらい 面倒だったんじゃないの?」


 ライリューンと、ライレーンの、非難の声も、アリーの耳には届かない。


「あのね、アレックスが、かっこいい日本刀を 欲しがってるの。 仕方ないでしょ? オーガの村の1個や2個、潰れたくらい なんてことはないわ。」


 どぉぉぉっぉぉん


 その時であった。 ライリューンと、ライレーンの後ろで、大きな爆発音がして、炎が上がった。


「きゃぁぁぁあ。」


 噴き出す炎に、2人が、地面に転がる。


「どうやら終わったみたいね。 もういいわ。 そうね、どうする? わたしと 一緒に 集落に向かう?」


 わるーい笑顔で、アリーが、地を這う2人を見つめる。 ライリューンと、ライレーンは、目を合わせ・・・ 頷いた。


「そうね、私たちの 負けだわ。」


 勝ち誇るアリーに続いて、2人は、オーガの村へと続く道をトボトボと、歩く。 その足は重く、魔力の枯渇により、体は、思うように動かない。 しかし、2人を育ててくれた、オーガの村人たちを・・・ もはや 何人 生き残っているか分からないが・・・ 1人でも救うためには、アリーの後についていくしかないのだ。


「ひ・・・ ひどい。」


 アリーと、ライリューン、ライレーンが、その村の入り口にたどり着いた時には、ヤマートン王国軍による攻撃が、まだ続いていた。 ただ、戦闘可能な大人のオーガは、既に殺されており、残っているのは、年老いたオーガと子供のオーガだけ・・・ そこで行われていたのは、すでに戦闘というものを通り越して、虐殺というべきものに なっていた。


 アリーの命令を受けて、村を攻撃していたモンキーが、子供オーガを槍で突き殺す。 負けじと、ドッグが、年老いた青オーガの首をナイフで切り裂く・・・。



「えいっ・・・。」


 その時、小さな子供オーガが、ライリューンに向かって、石を投げつけてきた。 王国軍の兵士と勘違いしたのだろう。 アリーは、ふっと笑うと、子供に近寄り、その右足を振り抜いた。 子供オーガの体が、ゴムまりのように 跳ね飛ぶ。


「アリー。 その子が何をしたって 言うの。」


「そうよ。 もう決着はついてるはずよ。 停戦を命令するべきだわっ。」


 しかし、アリーは、止まらない。 すたすたと前に進み、首を切られ倒れた 物言わぬ青オーガの頭を 踏みつけて言う。


「人のことを 気にする余裕があるの? わたしが、人を裏切ることはあっても、人が わたしを裏切ることは許さないわ。 ライリューン、ライレーン。 今回のことは、目をつぶってあげる。 ただ、2度目は無いわよ。 わかってるわね。」


 オーガの集落の建物からは、白い煙が上がり、その壁は、無残にも崩れている。 血を吐き、もはやピクリとも動かない 子供オーガの体には、母親と思われる赤オーガが、覆いかぶさって 嗚咽する。




=== ===== === ===== ===



 そこには、ただ 赤オーガの 泣き声だけが、響いていた。



=== ===== === ===== ===

【美容師の娘】3-43.で、アリーが4月1日に見た夢のお話。

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