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◇09.商売繁盛なんですけど。


 翌日から、店は冒険者が詰めかけて大賑わいとなった。

 どの客も目当ては闇属性の布。前日にエイラがお礼とばかりに町で広めてくれたらしい。

 宣伝してくれるのはありがたいが、まだテストすら終わっていないので、正直言ってこの時点で客が来るのはちょっと困る。

 とりあえず、矢くらいの攻撃なら耐えるがそれ以上は調査中として、自己責任で使ってもらうこととし、数を絞って売ることにした。


 そして、その日は午前中に店を閉め、午後は布のテストを早々に行うことにした。

 リリアに竜に変身してもらい、地面に刺した木の杭に布を巻きつけ、それにさまざまな攻撃をぶつけてもらう。

 炎の魔法、氷の魔法、風の魔法、あるいは竜の爪による斬撃。

 自分で弱いと言っていたが、さすがに竜なだけあって、リリアの爪はかなりの鋭さがあるように見えた。


 そうしてダメージの上限を測定しようとしたのだが……。結論から言おう、なんと上限は天井知らずだった。

 つまり、どんなに強力な攻撃をぶつけても(今の俺たちができる範囲でだが)、内側までダメージは届かず、布が身代わりになってくれるのだ。


「マジかよ……」


 と、思わずつぶやいてしまう。


 ただ、それでもすべてにおいて万能というわけではなく、欠点も見つかった。

 それは、一回でもダメージを受ければ、逆にどれほど弱い攻撃でも布は弾けて消滅してしまうのだ。

 たとえばもし最初に弱い攻撃を受けた場合、その時点で布はなくなるので、無敵どころかかなりコストの悪い運用方法となってしまう。


(身代わりになるっていっても、そう都合よくはいかないよな。まあ、こんなんで金儲けとか、端から期待してなかったけど……)


 ところが、次の日以降も客足が途絶えることはなく、逆に何故か購入者の数はうなぎ上りに増えていった。


「……なんで? 普通に欠陥あるのに、おかしくないか……?」


「何言ってるんですか。どんなダメージでも肩代わりしてくれるって、こんなすごいアイテム他にないですよ? 普通の防具みたいに重くて動きが鈍ることもなく、身体に巻いてるだけで効果があるんですし。その程度のことで売れ行きが落ちたりしませんよー」


「そういうものなのか……」


 あまりピンとこないが、現役の剣士であるエイラが言うのだから、そうなのだろう。


「お嬢ちゃん、『身代わりの影布』、五枚売ってくれ。ついでに上級回復丸薬も小瓶で三セット頼むわ」


「はいっ、毎度ありがとうございます!」


(ああ、複数枚装備してれば欠点もカバーできるわけか……)


 そんな感じで、布はどんどん売れていく。

 ていうか、何か勝手に布の名前付けられてるし。


 そして、店の奥で布を生成している俺の代わりに、リリアがかいがいしく接客をしてくれていた。ありがたいことだ。


「いやぁ、森の奥にこんないい店があるなんて知らなかったよなぁ。お嬢ちゃん、また買いに来るから、あんたの旦那さんにもよろしく言っといてくれや」


「はーいっ、ありがとうございます! 今後ともごひいきにお願いしますね!」


 ……ってあれ? いつの間にか、俺たち夫婦ってことになってない?

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