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◇14.珍しい魔石を手に入れたんですけど。


 俺が鉱山に入ってから二日後の晩。

 店を閉め、俺はリリアと雑談をしながら、その週の収支を計算する最後の作業を行っていた。


「──それで、無事に鉱山の採掘は再開されたんですね」


「ああ。ギルドからはあらかじめ報酬として提示されてた金額と、鉱山で採れた魔石をいくつかもらったよ。まあ、大した額とはいえないけど」


「でも……カイトさん、いつもより嬉しそうです」


「そう……かな。……そう見えるか?」


「ええ。それって、お金がもらえたことより……イアンって子に感謝されたことが嬉しいんですよね。……違いますか?」


「……よくわかるな、リリア」


「えへへ、よかった。カイトさんなら、きっとそうじゃないかなって思ってたんです」


 実際のところ、報酬にはそれほど興味がなかった。身代わりの影布の売れ行きが良いせいで、今のところ収入源を他に求める必要がないからだ。

 それよりも、リリアの言ったように人に喜んでもらえたことの方が何倍も嬉しい。

 イアンは俺のおかげだと涙まで流してくれたが、俺の方こそそんなに喜んでもらえて……なんというか、グッと拳を握り締めたくなる。

 この森に越してきて良かったと、しみじみ思う。

 宮廷魔術師だった頃は人に好意を向けられるなんてほぼなかったからな……我ながらちょろい性格だと思うが。


 そんなことを考えながら硬貨と魔石を整理していると、リリアが驚いた声を上げた。


「あれっ、カイトさん。お金の方はともかく、いただいたこの魔石……これって、クリアライトダイヤじゃないですか?」


「え、何それ。知らない」


 見せてもらっていいですかとリリアが言うので、俺はそれを手渡してやる。

 彼女はまじまじとその親指大の原石を凝視すると、「やっぱりそうだ」とつぶやいた。


 クリアライトダイヤモンド。

 それは世にも珍しい無属性の魔石であり、所有者の込める魔力によって、いかようにも性質を変化させるものだという。

 たとえば火の魔力を込めれば火の魔石として使用でき、それが水属性だったら水の……という具合に、使い方は幾重にもバリエーションがあるとか。

 そして、それ以上に特筆すべきは魔力の貯蔵量であり、なんとこの大きさで生活に必要な一ヶ月分の魔力を貯めることができるらしい。


「これ、とても貴重なものですよ。本音を言えば鉱山のお仕事の報酬、ちょっと少ないなって思ってたんですけど……これがあるならむしろお釣りが来るくらいです」


「でも、これって多分ギルドの職員さんも気付いてないよな。文字通り玉石混淆って感じで、他の魔石と一緒に袋の中に詰め込まれてたし……」


「いいじゃないですか、もらっておきましょうよ。カイトさんはそれだけのお仕事は十分されたと思いますよ?」


 むふんと鼻息荒く主張するリリア。

 結構しっかりしてるなと、俺はそれを見て苦笑する。

 まあ、悪いことをしてるわけじゃないし、彼女の言う通りありがたくいただいておくことにしよう。

 問題は、この魔石をどんな用途で使うかだが……。


「無難なところで暖炉の薪代わりかな……。少なくとも、闇属性では使い途がないよなあ……」


 少しもったいない気もするが、他にいい案もないし、そこはしょうがないよなと俺たちは顔を見合わせ笑いあったのだった。


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