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◇01.実質クビになったうえに、魔法が使えなくなったんですけど。


 宮廷魔術師なのに魔法が使えなくなった。


 わけがわからない。

 昨日までは普通にできていたのに、一晩経ったらいきなり魔法が出なくなった。

 唯一思い当たることは、前の日に王太子から贈られた魔石の装身具。

 「いつもありがとう」とねぎらいの言葉をかけられて、異国人の俺にこんなものをくれるなんて王太子はいい人なんだなと思っていたが、どうやら俺が馬鹿だったらしい。


「うん、その魔石には、付けた人間が闇属性の魔法しか使えなくなる呪いがかかってるんだ」


 悪びれもせずに笑顔で言われた。

 なんだそりゃ。

 どうしてそんなことをしたのかと問うと、彼お気に入りの公爵令嬢のためだとか。


「実は僕の大事なアンリエッタが、ようやく次の聖女になることが決まったんだ。よって、今まで代理として結界を張り続けていた君は、これでお役御免になる。でも、君はもともとこの国の人間じゃないだろう? 人種だって違うし、何より聖女の代わりに中年のさえない男が結界を維持していたなんて聞こえが悪い。これまでの結界は実はアンリエッタが張っていたことにしたいんだ。だから君の魔法を封じさせてもらったんだよ」


 ……ということらしい。


 アホか。

 ぶん殴るぞ。


 そう心の中で思っても、できないのが宮仕えの辛いところだ。

 しかも俺は他国から逃れてきた亡命者。宮廷内では奇異の目で見られ、味方になってくれる奴は一人もいない。

 次の聖女が決まればこの任を解かれることはわかっていたが、それでも魔法を使えなくなるというのはさすがに予想していなかった。


 だいたい魔法が使えないなら、王宮で働くことすらできなくなるじゃないか。

 普通に口外するなと言えば従うのに、こちらの要である魔法を封じるとか……そもそも人として見られていないらしい。

 よくある話ではあるんだが。


「唯一使える魔法は闇属性だけか……」


 手のひらにぐっと力をこめると、そこから黒い帯のような魔力が湧き出してきた。

 『闇』は忌み嫌われた属性で、国内でもほとんど研究がなされていない未開の分野だ。

 逆に言えば、色々試す余地はあるということだが……それでもすぐには無理だろう。


「この帯みたいな魔力……使えるのかな」


 黒い魔力を鞭のようにしならせて壁を叩いてみる。すると帯はパチンと弾けて消えた。

 ちょっと面白い。何かに活用できるかもしれないなと思った。


 それにしても、公爵令嬢が次の聖女になるといっても、魔力は足りているのだろうか。

 この国の聖女に求められるのは家柄でも品性でもなく、まずは魔力だ。

 国土全域に張り巡らされた結界に聖の魔力を注ぎ込み、外界からの侵攻を遮断する。それが聖女に求められる役割。

 王宮の大魔法陣で術者の魔力は何十倍にも増幅されるが、それでも人並み外れた力がなければ結界の維持は不可能だ。

 確か、公爵令嬢の魔力は俺の半分にも満たなかったはずだが……。


 そんな俺の心配は当たったらしく、公爵令嬢が聖女に就任するのは一旦保留され、別の聖女候補も異世界から召喚されることになる。

 二人を比べて、よりふさわしい方を聖女とするらしい。

 どちらが聖女に選ばれるのか、まあそれは俺には関係のないことだ。


 それより次の仕事をどうするか、そっちの方が今一番に考えるべきことだった。

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