Return to love
彼女が来るまではまだ時間があった、けれど長い大学の春休み、
特にやる事もない僕は待ち合わせの1時間以上も前からこうして駅前のお店でコーヒーを一杯で時間を潰している。
そこまで大きな駅ではないが、土曜日の午後、人通りは少なくない。
禁煙の風潮が高まる中、テーブルの上に置いてある灰皿がありがたいと感じる。
また一本 新たな煙草に火をつけてタイル敷きの駅前を眺めていると、高校生くらいだろう、
きれいな黒髪の女の子がしきりに携帯を見ながら立っていた。
「・・・?」
いや、あの女の子が何をしているかはもちろん分かってる。・・・はずだ。
白いプルオーバーのロング丈のパーカーはこの頃の春の匂いをより一層強く感じさせるし。
何より彼女が隠しきれていない笑みは友達を待つものではないだろう。勝手な妄想ではあるが、
気になったのはあの女の子と僕の間にある信じられないくらいの差だった。
もちろんあの子が彼氏を待っているとは限らないし、違うかもしれない。
でも自分が現在の彼女と付き合い始めたころは確かにあんな感じで、逢えることが素直に嬉しかったのを思い出した。
今、自分があの女の子を見て疑問を持ってしまったのはそんな自分がいなくなり、すっかり忘れていたからだろう。
「あらら・・・」気がついたら灰皿の煙草はすっかり灰と化してしまっていた。 ・・もったいない。
ちらりと目に入った腕時計はもうすぐ彼女が来ることを教えてくれた
いつからか熱も冷めてたのだろうか?
それでも彼女と一緒に居たのはただの情からだろうか?
よくわからないが正直そんな事、考えるのも面倒くさいとも思い始めた。
何回ほったらかしにしたことだろう、
返せるメール、出れる電話をわざと気づかないフリしたのも一回や二回じゃない。
自分の都合で彼女を利用してきたとしか思えない。
そろそろ残りも少なくなってきたカップを一気に飲み干したら、口の中にじんわりと苦味がひろがった。単にコーヒーが苦いだけじゃないと思いたかった。
「そろそろかな・・・」そう思いながら見上げたらあの女の子はもうどこかに消えていて、そこにはいつもの代わり映えのしない彼女が立っていた。
携帯も鳴って急かされた。「会うの久しぶりだね-(’v') つぃたょ??」
「久しぶり」お店を出ながら思った。
一週間くらいだろうか、いつも一緒に居たから7日間がものすごく長く感じられる。
一ヶ月くらいだろうか、さめた思いに浸っていたのは。
急に早く会いたくなってきた。
本当はわかってる。
もっと構って欲しかっただけなことに。
近づきながら彼女がこっちに気づいた。
心のもやもやはが一瞬にして晴れた。
やっぱり彼女を大切にしたいと思う自分が居た。
「倦怠期」という言葉だけが最後の抵抗のようにふとよぎった。
中二病が抜けません。ごめんなさい、自覚はしてマス。