プロローグもしくは茶番劇の始まり
もう書かないなんて嘘吐きました。
反省はしていませんが、ごめんなさいです。
「フィーリア・デイマック嬢。ガゼイン王国第四王子たる麗しき僕、サリオ・デ・ガゼインは、不快なる貴様との婚約破棄を宣言する」
王国の貴族子息が通うディアム貴族学院の卒業記念パーティーは在校生代表として生徒会長による開始の宣言が終わり、丁度ファーストダンスの開始を宣言されるところで、舞台となる中央にみんなの視線が集まっていた。
華やいだざわめきが一瞬で静まり、その場にいた皆の瞳が僕に集まる。
ついに始めてしまった。僕は最後までちゃんとやり切れるだろうか。
いや、最後まで絶対にやり切るんだ。
「そして同時に、僕の天使、男爵令嬢リズベット・エネス嬢と婚約する。みんな祝ってくれ!」
腕の中にすっぽりと収まっているやわらかな身体。濃い蜂蜜色の髪をした少し垂れ目のピンクブラウンの瞳の少女が嬉しそうに見上げてくる。
「殿下、嬉しいです」
これからの僕の人生で唯一無二の大切な存在。安心させるように微笑んでみせた。
「サリオ殿下。私、フィーリア個人としては殿下の御意志に背くつもりは全くありませんが、それでもこの婚約は陛下のご下命によるものでございます。陛下のご許可はすでに頂いているのでしょうか。そしてなにより、”何故”とお聞かせいただけますか」
目の前に立ちふさがるのは、双月の妖精とまで謳われているサリオの婚約者だ。
月光のように煌めくような銀の髪と朱と紫の神秘的な瞳をした美貌をしようと、才媛と呼ばれる優秀な頭脳をもっていようと、理想の令嬢と言われようとも、サリオにとっては自分の人生を狂わせた原因でしかない。
フィーリア、僕はお前が大嫌いだ。
絶対に成功させる──
最後までやり切ったその先には、きっと、愛する二人の物語が始まるんだ。
まさかのサリオ殿下のターン