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ある兵士の夢  作者: 画策
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それから

 じわじわっと沸いてくる怒りにまかせて、罵詈雑言で騒いでやろうかという衝動にも駆られたが、ここは僕の家の前であり近所の目もある。なにより高校生にもなって家を放り出されたなんて恥ずかしすぎるし、僕はとりあえず暖かい我が家を背に歩き始めた。あのくそやろうが…いい大人のくせに…。


 突然放り出された人間はまずどこに向かうものだろうか。経験のある方ならわかるかもしれないが、答えはそう、コンビニエンスストアである。季節は秋の終わりで、風が吹くと寒さを感じる。コンビニ…あと少しだ…。財布がないことが悔やまれて仕様がないが、手持ち無沙汰で訪れてもなんとなく許される雰囲気があるコンビニはありがたい。

 店内をぶらつきながらこの事件についての対応策を考え始める。伯父さんはまず間違いなく頑固なタイプである。その上子供相手にも容赦ない悪質な負けず嫌いだ。適当なノリではとても家に帰ることはできないだろう。


『大切なもの』


 伯父さんはそれがわかるまでは家に入れない、と言っていた。なんなのだろうか、J-POPの歌詞かなにかか。そういえば伯父さんはJ-POPばかり聞いていたっけな。今は伯父さんに関する何を思い出しても腹が立って仕方がない。


 そもそもどうしてこんなことになったのか、ということに考えを移してみる。真っ先に思い浮かぶ理由としては、伯父さんがせっかく家に来ているというのに、挨拶もせずに部屋にこもっていたことだろう。でもそんなことでいちいちあんな素っ頓狂な行動する性格でもないように思えた。伯父さんの思考回路を読むことなんて不可能に違いないのではあるが...。

 確かに、100歩、いや1000歩くらい譲って考えてみれば、親戚が来て楽しく会話をしているわけだから、長男だし、参加する義務があるとも言えなくはない。伯父さんだって昔ほど頻繁に来るわけでもなかったし、久々の再会ではあったのだ。

 ふと、以前ある芸能人が亡くなったニュースのことを思い出した。そこではその友人がインタビューを受け、「大切な人はいついなくなってしまうかわからない」というようなことを言いながら涙を流していた。伯父さんのことに考えを移す。すると、確かにあの人はいつ行方不明になったり死んだりしてもおかしくないなという気がしてきた。別に伯父さんのことを嫌っているわけではないのである。思い出もいろいろとあるし、例えば今、もう一切会うことができなくなったとしたら…。

 そしてこのことはなにも伯父さんに限ったことではなかった。母さん、父さん、そして妹。そう思うとさっきまでうっとおしく思っていた談笑の声が、大切なもののように思えてきた。


『大切なもの…』


 小さくつぶやくと僕はすぐに家へと歩き始めた。なんて言えばいいのだろうか。いや言葉なんてものは所詮は媒体であって、気持ちさえあればどうとでも思いは伝わるものだろう。なんていったって、家族なのだから。

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