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#13 お風呂に浸かります。

 でも。

 彼はいつも、人間の世を護るために動いていた。

 サルフィーア2で唯一の、人界守護の暗黒神。


 ──そこに気づいているのは、きっとボクだけだ。

 だって。

 これはメインストーリーの中に巧妙に隠された、サブストーリーだから。


「姫? 俺は、姫の選択に従うよ」

「従者なんでしょっ。当然……ッ!」


 すっくと、立ち上がる。

 目の前に広がるのは、曇天。

 今日の打ち上げ花火は、あまり綺麗じゃないかも。

 だから、中止でも(・・・・)仕方ない(・・・・)


 夜空に浮かぶふたつの月をバックに上がる大輪の花火が、好きだった。

 それは、メインクエストをやり切った達成感とセットの光景だったから。


「反乱軍から、犠牲者を一人も出さない!」

「御意」


 駆け出したボクの両手には、食べかけのりんご飴。

 締まらないけど、仕方がない。

 食べ物は粗末に出来ないのだ。

 向かう先は、どこへ?


 決まってる。

 商人ギルドだ。

 ──商人ギルドは、反乱軍に秘密裏に武器を供給する役どころ。


 でも、ずっと先までメインクエストを進めたボクは、知っている。

 彼らは、この国の王族からも金銭を得ている情報収集組織。

 裏の顔は、盗賊ギルドと繋がる闇の商人。


 王族の意向で、反乱軍決起を理由に、領主の首を挿げ替えるために。

 ──庶民の犠牲を、わざと見過ごすのだ。



────☆────☆────☆────☆────☆────



「はい、目を拭きましょうねー。お鼻もちーんしましょう」

「むー。うぶぶぶ。ちーん」


 ……完全に子供どころか幼児扱いな件について。

 いや、両手の飴を食べながら夜道を走ってたら、転んじゃって。


 顔も体も、べとべと。飴まみれで泥まみれです。

 商人ギルド本館に着いてすぐ、大衆浴場に強制連行されました。

 ……彼にじゃないですよ。

 商人ギルドにいた、見知らぬお姉さんに、です。


「あの人が、こんな可愛い娘さんと知り合ってるなんてねえ」

「むぇ。え、彼と知り合いなんですか?」


 ぷるぷる。

 顔を洗って、温めた布を髪に当てて、べっとりくっついた飴を取る。

 面倒なので切ろうと短剣を当てたら、お姉さんに慌てて止められたし。


 ──実は今、ちょっと、緊張しています。

 ゲームの頃は、サルフィーア2は全年齢層ゲームだったので。

 お風呂や水浴びのシーンっていうのは巧くカットされてたんだけど。

 今は、普通にお湯に浸かってるんですよね。

 当然、裸で。


 ……いや、これでも三十三歳独身男性。軽々に動じてはいけない。

 何事も、広い心で落ち着いて。

 それに、このアバターの姿とは、オープンベータから二十年の付き合い。

 慣れてる、はずなんだけど。


 ──うわあ。小さいけど、ちゃんと膨らんでる。

 ──え、何、ほんとに下、つるつるだ。

 ──えええ。何これなにこれ、敏感すぎるんだけど。


 ……アバターの下着を脱いだの、初めてですよ。

 もちろん、その内側に触れたのも。

 お姉さんが居なかったら、脱衣所で混乱してたかも。

 その、お姉さんも、一緒に隣で湯船に浸かってます。

 ……人間のお姉さんだけど。


 ……ちらり。

 でかい。

 くびれ。

 えろい。

 ……いろいろ、負けてる気がするぅぅ。


 彼?

 いくら従者だって言い張っても、お風呂までは一緒しませんよ。

 ボクは男だけど、アバターは女の体ですもの。

 そういうところは、きっちりしないとね。


 ……昨晩は、どうやらボクを抱っこして一緒のベッドで寝たらしい。

 宿の主人にゆうべはお楽しみでしたねなんて言われて、顔から火が出た。


 それは、ともかく。


「彼と、知り合って長かったり?」

「ええ、それはもう、とてもとても長い付き合いよ。あなたとは短いけど」


 ……あれ?

 なんか、敵意っぽいものが。

 って、いうか。

 なんか、このお姉さん。

 見覚えがあるような。


「──あら。そうね、前に会ったときは、髪を上げてたから」


 ぱしゃり。

 両手で濡れた髪をかき上げて、髪を上げて見せるお姉さん。

 ……。

 やっぱり、確実に会ってるぞ、これ。

 でも。

 プレイヤーさんじゃ、なさそうだし。

 じゃあ、NPCなのかな?

 ええっと。

 直近で、こういうオールバックでポニーテールな髪型した女性NPC。


 ──。

 ────。

 げっ。

 思い当たった。

 っていうか、恨まれてて、当然。


「先日の討伐戦では、ボッコボコにしてくれてありがとう」

「──ひっ。そ、その節は、失礼しました」


 そうだ。

 魔王第二軍、参謀。

 雷神ティース・オキィタ。

 それが彼女の名前。

 黒の魔王討伐戦の途中、ボクたちが討伐した魔王軍四天王のひとり。


 そして。

 彼女は、黒の魔王の二番目の妻だ。



総合評価100ポイント超えましたー。

評価ブクマして下さった方々っ、感謝感激雨あられ!

引き続きご愛顧お願いしまーっす。

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