これが、私
真っ暗闇から目を開ける。
大分薄ぼんやりした視界に、青い瞳の整った顔の美人がまるでゴキブリを見たかの如く睨み付けている。
私が何かしただろうか?
呆れるほど使えないパートなのは理解しているが外国人相手に、しかも初見で睨まれるとは思ってなかった。
しかも、何語かわからない言葉で喚き、両手をスッって私の首へ伸ばしてきた。
ああ、死んだな。
ゆっくりと暗くなる視界と、息苦しさ。
瞼がおちる寸前に見た彼女は、何故か眉寄せて、今にも泣き出しそうだった。
……死んだと思ったのに、しばらくたって騒がしい声で目を覚ますと言葉を失った。
「ここ、どこ?」
私の回りは子豚の顔をした赤ん坊に囲まれている。
しかも、私を含む皆素っ裸。ついでにみんな男の子。あまりに驚いたが正気に戻り自分の股をみる。
……私は女だったはずだ。まさかの男の子が主張している。
「嘘だ…」
慎ましい胸も、伸びた足もない。
視界に入った身体は、丸みを帯びた赤ん坊の身体になっている。
顔をペタペタと触ると、回りと同じく顔に豚鼻がついて小さな手は上手くいかない。
深呼吸して、考える。
私が、“私だった記憶”の最後。
夜勤のデータ入力でふらふらになりながら、家に帰る帰り道。
人気のない交差点で、信号無視した軽自動車に突っ込まれて確か…
「ああ、私死んだんだ」
だとすれば、今の私は最近スマホで見てた“異世界転生”ってやつか。
回りや、触った感触からわかるのは今の私は、オークのようだ。
ああ、なんてゆうか…
「厄介な転生しちゃったなぁ」