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『ウナスコッサ』

4話です!

 


 1



 訓練が始まった。

 広い特訓室と呼ばれる所で、エモーション全員で特訓をしていた。

 俺は、ミラと共に魔法の練習をしていた。

 慣れれば使える時間を増やしたり、効果を上げることも可能らしい。

 俺は、ミラにコツを聞きながら半日の訓練に汗を流した。


 一方のレビウス。

 レビウスは弓の特訓を1人でやっていた。

 小さな的を何度も射抜いていた。

 それも一度もミスはないように見えた。

 彼女の弓の腕は本物らしい……。


 休憩の時にちらっと他のエモーションの人達の訓練を見る機会があった。

 彼らは発達した機械技術を応用し、銃や剣を改造していた。

 特に驚いたのは、銃。

 同時に何発も撃てたり、自動で弾が補充されたり。

 俺の考えていた銃より何歩も進歩した銃を使用していた。


 でもそんな銃を使ってもアパシーの足止めしかできないという。

 昨日、遠くから見えたアパシーの外見はエモーションの人達と差異がなかった気がしたのだが……。

 機械に乗っ取られるだけでどれほど強力な力を手に入れたのだろうか。

 少し興味があった。




 今は昼時。

 特訓終わりのレビウスを連れて食堂に来ていた。



「どうだい? 魔法の調子は」



 2人で黙々と食べているところに話しかけてきたのは、レントだった。



「まぁ、ボチボチと言ったところです。でも使えるまでのレベルには達してないです」

「焦ることもないだろう。まだ時間はある」

「1週間後でしたっけ? なんか大きな会議があるのは」



 昨日、ミラが言っていた。

 《エモーション全体会議》に出てもらうと。



「《エモーション全体会議》の事かい? エモーションの9つのグループの隊長とそれぞれのセイヴィアーとアンドロイドが参加して行う戦略会議のことだよ」

「レントさんは出ないのですか?」

「僕は戦闘隊長でしかないからな。こういうのはミラの仕事だ」


 

 レントは、コップの水をぐいっと飲み干す。

 レントの昼食はカレーのようだ。

 ちなみに俺はパスタでレビウスはピザだ。

 この食堂は、食べたい食べ物が何でもあるからとてもありがたい。

 それに全部機械が作っているとは思えないほどのクオリティを出していて、味は抜群に美味い。



「俺、アパシーを間近で見たことないんですけど、どんな感じなんですか?」



 見たといえば見たのだが、特に差異は感じられなかった。

 アパシーの事をよく知る彼なら知っているだろう。



「外見は、エモーションと特に変わりない。だから分かりにくい」

「どうやって見分けるんですか?」

「感情がない。だから表情に変化もないんだ。それに会話は出来るが、常にトーンが同じなのがアパシーだ。まぁ、話したことはないけど」



 話したことないのは、当たり前だろう。

 彼らにはエモーションを殲滅するという任務、義務がある。

 それを目的とするなら、無駄な会話など必要も無いだろう。



「アパシーって話せるんですか?」

「アパシーは、人間を乗っ取った機械だから基本的な人間の機能はそのままなんだ」

「機械同士の会話はするんですか? さすがにワンマンプレーだけじゃ勝てないってことくらい、アパシーも理解しているでしょうから」

「彼らはあくまでも機械だ。会話は、機械同士でメッセージのやり取りをして行っている。つまりメールで会話しているってこと。だから言葉を口にすることは、基本ないはずだ」



 俺はパスタをフォークで口に運ぶ。

 咀嚼して、小麦の香りを味わいながら食べていく。

 そして会話を続けるため、口の中のものを飲み込み水を飲んだ。



「あの……。人間の機能が残っているって言ってましたけど、その人の記憶って消えずに残っているんですか?」

「消えて無いはずだよ。確かめる手段がないから絶対とは言えないけど……」

「記憶が残っているってことは、『機械の魂』を破壊できれば、元の人に戻るってことですか?」

「そういうことになるね。君、凄い頭の回転が早いね……。若い人は羨ましい」

「そう言うレントさんも若いじゃないですか」

「僕は別に若くはないよ」



 周りの人々は、食事を終えどんどんと姿を消していく。

 俺達もあまり長居すると、午後からの訓練に間に合わない。



「レントさん。訓練に行くので、これで。色々教えていただいてありがとうございました。レビウス、行くぞ」

「はい」



 俺達は、レントに一礼した後食堂をあとにした。



「向上心があるのはいい事だね〜。さ、僕も行くかな」



 俺達が見えなくなった後、レントも食堂を出た。



 2



『ピロロロロ……』


 ミラと武術の訓練をしていた。

 すると突然、ミラの電子手帳らしきものから着信音が聞こえた。

 どうやら携帯電話らしい。


 ミラは電話に出た。



「こちらはミラ。……。え? アパシーが来たって? ……分かった。300ね。……あなた達も一応準備しておいて! ……今回もレビウスの実力を試すつもりよ。じゃあ、よろしく」



 ミラは電話を切った。

 そして、再び胸ポケットにしまう。



「聞こえたと思うけど、アパシーが300来たわ。レビウスと一緒に行くわよ!」

「分かりました」



 俺はレビウスを連れてミラが向かう先へと移動した。



 着いたのは、ここの入口。

 外から建物全体を見るのは初めてだ。

 白を基調とした西洋の城風の建物。

 特に驚いたのはその大きさ。

 思っていたよりも何倍も大きく、壮大だった。


 俺は、森の方を見るがアパシーが来る様子はまだない。



「敵の数は約300。この前の《スパンディメント》は、対策してくるだろうから難しいわ」

「《スパンディメント》ってこの前の弓の魔法ですか?」

「そうよ」



 《スパンディメント》は、火のカーテンのような火柱をつくる魔法。

 それに巻き込まれて倒れていくアパシーを見て残りのアパシーは逃げ帰っていった。



「今回はどうするつもりだ? レビウス」



 俺はレビウスにそう問う。

 レビウスはスタイルチェンジをした。

 彼女は戦闘の時、必ずスタイルチェンジをする。


 ……、俺は彼女の異変に気付た。



「あれ? 弓は?」



 彼女の種族は弓だ。

 その弓を今回は装備していない。

 だが変わりに長い日本刀のようなものを右手に持っていた。



「彼女の種族は確かに弓よ。でもそれだと近接戦は圧倒的に不利になる。彼女は弓以外の武器も使えるのよ。剣の種族には、及ばないけどアパシーくらいならおそらく行けるわ」



 ミラは俺にそう説明してくれた。

 彼女は剣を鞘から出した。

 何とも美しい刀。

 刃こぼれ1つないその刀を持つ彼女は、昨日の印象とは少し違っているように見えた。



「来たわね」



 ミラが言う通り、森の奥からここに近づいてくる大きな足音が聞こえた。



「頼むぞ! レビウス」

「任せて下さい」



 300もの大群で来たアパシーたちは、一度足を止めた。

 レントの言う通り、アパシーは見ただけではエモーションと大した差がなかった。

 防具を付けたただの人間。


 だが彼らの表情から、戦意が感じられない。

 無表情だからだろうか……。


 レビウスは刀を構えた。


 そして、気を刀に集中させた。

 すると刀に激しい炎がついた。

 刀を握っても火属性であることは変わりないらしい。

 それを見たアパシー達は一気に攻め上がる。


 レビウスはそれを待っていたかのように、刀を左にゆっくりとスライドした。

 そして、力を込めて左から右に思いっきり刀を振った。



 ……、一瞬の出来事だった。



 刀の炎が横に広がった。

 そしてそれは、前線にいたアパシーたちを飲み込んだ。

 前線のアパシーは火達磨になって地面に倒れた。


 それを見て後ろにいたアパシーも攻めに来るが、レビウスが次は右から左に刀を振ると同じように火達磨になって倒れた。



「えっ……」



 あまりの強さに驚いた。

 自分が得意な弓でなくても十分に彼女は強かった。

 これでも剣の種族のアンドロイドに及ばないのか……。

 もし、相手が木属性ならまたしても水属性だったら、全く歯が立たないのだろうか……。



「私も驚きだわ。私たちがどれだけ頑張っても足止めしか出来ないというのに、彼女は刀を一振するだけで大量のアパシーを倒せるのだから」



 ミラはあまりの強さに感心していた。



「この魔法の名前は……?」

「《ウナスコッサ》よ」



 彼女はその後もただ右から左、左から右に刀を振り続けた。

 そして、あっという間に300のアパシーを全滅させた。

 地面には大量の死体が転がっていたのだった。



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