女子会1 魔王との甘い空間、新しい友達
すみません!!大分遅れました。
本当にすみません!!
では、本編をどうぞ!
『ただいまー』
「おかえりー」
扉が開くとともに中へと、二メートル位の大柄で、服は黒の燕尾服を着て、頭に人の頭が収まるくらいの大きな山羊の頭蓋骨を付けた人物、魔王で本名アーサ・ケイジ・アバドーラ、アーサが部屋の中へと入ってくる。
その人物を出迎える暖炉の前で揺り椅子に座り編み物をする小柄な女性、白の膝掛けを掛けて、服は赤色のワンピース、髪は乱れがなくまるで作られたかのような綺麗な銀髪、人形のような整った顔立ちである。
彼女は元神の子、現在改名し『現世』や『天界』で勇者と詠われる女性、名をユーリファである。
勇者と名付けた人物は──まぁ、ここはあとで紹介することにする。
女性は何かを編んでいたらしいが、燕尾服の男が入ってきたことにより、手を止めて立ち上がる。膝掛けを畳みその人物へと抱きつく。
燕尾服の人物は女性を受けとめ抱き返す。
「お疲れ、今日はアーサ遅かったね」
『ごめんね、本当は早く帰れる予定だったんだけどね・・・・まぁまだ八時すぎなんだけ』
「そっか・・・・んっ」
燕尾服の話を全部聞かずに、女性は唇を軽く付きだす。
『せめて最後まで言わせてもらいたいんだが、いいか・・・・ん』
愚痴をユーリファにこぼすのだが、早くしてとユーリファが目で訴えてくるので、仕方ないかとしゃがんで山羊の頭蓋骨を気持ち左横にし軽く前へと出す。
ここでは絶対に魔王アーサからはユーリファの唇をくっつけにいかない、理由は結婚して何回かはアーサからすることもあったのだが、三日目にユーリファから「アーサの頭は骨だから自分の歯とぶつかって痛い」言われてしまい今度からは彼女からすることにしたのだ。この時はアーサ的にもかなりショックだったらしい。
それからアーサが山羊の頭を左横にする理由は、ユーリファ的にはそこら辺が地味にキスしやすいのだそうだ。
身長について常に悩むユーリファだがこの時は、膝を折り彼女に合わせるアーサに対しムカつきより、早くしやすい体勢になれと可愛らしくかかとを浮かしたりして待っている。
数秒後、満足したのか頬を紅色に頬を染めながら唇をはなし、大きなアーサの体に深く抱きつく、この時アーサ的には物足りなかったのだが、ユーリファが幸せそうに抱きついているのでいいかと抱き返す。
ユーリファとアーサの身長差がかなりあるので、今の光景をみている第三者がいるならそいつ的には『父親に甘える娘』と思うだろう。まぁアーサのほうは頭が山羊の頭蓋骨なので無理があるかもしれないが。
「ぷはぁ・・・・相変わらず無味無臭だね、エイルが言うにはキスはあまずっぱいって言ってたんだけどなぁ、アーサその頭どうにか出来ない?」
『いやそんな無茶言わないでくれ、いまでも十分じゃないのか?』
「ん、確かに・・・・ならいっか」
そういいながらユーリファは頬を赤く染めながら、自分の唇に手を当て、上目遣いでアーサを見る。そんなユーリファに照れながら、痒くもない山羊の頬らへんを人差し指でかく。
『よっと』
「わっ!」
照れくさくなったアーサは、抱きつくユーリファをお姫様抱っこしながら乳白色のソファーへと腰からダイブする。
ユーリファはいきなりのことだったので一瞬頭が追いついていなかったのだが、アーサーにお姫様抱っこされながらソファーで軽く弾んでいるんだと気づくと軽く微笑む。それにつられアーサーも笑う。
実に幸せそうだ。今の二人を見たものは昔敵対していたなど誰も考えられないだろう。それに今ユーリファといる魔王を見た『現世』と『天界』の者達は、「誰だこいつ?」と頭に゛?゛を浮かべながら疑問に首を九十度くらいに捻るだろう。『魔界』では時々あるらしい。
そう言えばとアーサが口を開く─実際には骨の口は開いていない─。
『そういえばユリはどうした?』
彼の言う『ユリ』と呼ばれた者は、アーサーとユーリファとの間に産まれた二人の大切な娘のことである。
産まれたのは三年前。今の年は二歳なかばである。
ユリの特徴は肌は白く少しぷにぷにとして滑かで、整い顔立ちでパッチリと開いた碧眼はお人形さんみたいだ。
髪は神の血をひくユーリファと魔王のアーサとの間の子を表すかのようにちょうど真ん中で輝く銀色と光を反射しない漆黒、長さは腰まで伸びるストレートロングだ。本当に可愛らしい女の子である。
ユリが産まれた頃に二人で初めて話す言葉は何と言うかを話していたのだが、ユリが初めて話した言葉が「ママ」や「パパ」ではなく「まんま」だった。これには二人とも最初は自分達のどちらかを呼んでくれると思っていたから少し落ち込んだ。
まぁそれもありかと最終的に笑いあった。
いつもなら八時に帰って来たとしてもユーリファと一緒に出迎えてくれるのだが、今日はリビングにすらいない。
その疑問をアーサの胸元に頬ずりしているユーリファが答える。
「今日はファフがユリ連れて遊びにいってた、疲れたんだろうね」
そういうことこと、納得し頷くアーサ。
ユーリファのいう『ファフ』という名はあだ名であり、本名『ファフニール』、ユーリファにとっては義母であり師である。
ユーリファがアーサとの結婚していることを知っているのは、『魔界』の者達に四騎士のエイル達、神官長にファフニール。
『魔界』の者達に知らせたのは、『魔界』へと移り住むユーリファを知らずに攻撃を仕掛けなりしないようにとのためだ。
ファフニールは最初、アーサとの結婚を初めて聞かされたときは孟反対していた。まぁ仕方のないことである、『現世』を苦しめた国の王なのだから、反対されて当たり前なのだ。
だが、反対されても毎回毎回、アーサを連れて説得しようとしたりしてくるので、最終的に真剣で剣術のみでの決闘をし、ファフニールを打ち負かすことが出来れば認めるということになった。
結果はユーリファの勝利だ。
それからは、『魔界』へと移り住んだユーリファのもとへファフニールは時間が出来れば時々遊びにいったりしている。
だがユリが生まれてからというもの、あまりの可愛さに時々から月一のペースで遊びに来るようになった。
「ああ、そういうことか」と首を縦にふる。
『そういうことか、どこに連れてもらったんだ?』
「遊園地だって」
『そうかそうか、今度あったときにはお礼をいっておかなければね』
「ん」
アーサがユーリファを抱きながら髪を撫で、それを気持ち良さそうに目をうっとりと細めて抱きつく。
二人の甘い空間、この中を邪魔できる者はいない。いや、ユリ以外いない。ユリは容赦なく二人の間に飛び込んでくるのだが、他の者が邪魔で着ない理由は二つあり、嫉妬と嘆きに狂い部屋を飛び出すか、二人を暖かい眼で見守ったりしてしまうのだ。
暖炉でパチパチと燃える炎の音が甘く静かな空間に響く。
それを破ったのは思い出したとゆっくりアーサに顔を向けるユーリファだ。
「今日私急遽仕事入っちゃって行けなかったから、ユリに悪いことしたから今度の休み三人でどこか遊びに行きたいけど、大丈夫?」
軽く首をかかげて、上目遣いでアーサーを見る。
山羊の骨をした頭でも分かりやすくユーリファの上目遣いに照れて、ユーリファの頭をひいて深く抱き寄せる。
『ああ、日曜日ならあいてるよ』
「よかった」
『ん、ユーリファ急遽の仕事入ったって大変だったな、大変だったねお疲れ様』
アーサの労いの言葉を首を横にふってこたえる。
「んーん、あなたの方が大変で・・・・」
途中で言葉を区切り、顎に右手をそえて目線をそらし考えこむユーリファ。
『?』
数分がたち、ユーリファが何かを思い付いたのか「よし」と首を軽く縦に頷きアーサを見つめる。見つめながら頬を紅色に染め滑かに舌なめずりをする、そこから溢れるような色気が小さな体の可愛らしいユーリファの体から出ているのかというくらいに色っぽく感じる。
そんなユーリファから見つめられることでアーサは目をはなせなくなって、喉がゴクリッとなる。
そしてユーリファが口を開く。
「その労い受けとるよ、だから、ね・・・・」
アーサの耳であろう場所に口を近づかせ、
「・・・・ベッドの上でたくさん愛して」
と、囁く。
囁かれたアーサは上半身をビクンッ!と震わせ、今にもユーリファを愛したいと押し倒さんとする心を思考の奥へと投げ飛ばす。
返事を返す。
『ああ、もちろんだよユーリファ』
それを聞いたユーリファは口元を緩め、赤くなった頬に手を当て、アーサに抱かれながらいやんいやんと体をくねらせる
そしてアーサはユーリファの頬に手を当て顔を軽く前へと出す、アーサが何をするのかわかったユーリファは目を閉じて薄い桃色の唇を気持ちつきだす。
あと少しで当たるというところで
「ユーリむかえきたよー!もう皆先に店にいって・・・・る、よって・・・・」
・・・・ノックもなく勢いよく扉が開く。
「・・・・」
『・・・・』
「あっと、お・・・・お疲れ様でーす、ははは」
暖炉で燃える炎の音しか響くことのない甘く静かな空間が、今度は違う意味で静かな空間となった。
沈黙の空間、最初に口を開いたのはアーサだった。
『はぁ~カミエラ、いつも言っていると思うがノックはしなさい』
「あ、あはは・・・・ほんとすみません」
「はぁ~」
カミエラと呼ばれた人物は顔をそむけながら謝る。
気まずさからユーリファとアーサを見れないのだ。
そんなカミエラにいろんな思いをのせた視線で軽く睨むユーリファだったが、彼女が何しにきたのか思い当たり額に手をあて、ひとつ深いため息を吐く。
カミエラと呼ばれた人物、炎の赤い輝きを反射する金色に煌めく肩まで切られた髪と瞳、瞳孔は猫のように縦にのびている。金の髪を分けながらのびる二本の角と長い耳に、背中から生える翼は彼女が人間ではないのが分かる。だが、白く整った顔立ちに色気を感じさせる滑かで艶やかな肢体、角と翼を合わせてみれば悪魔に出てくるサキュバスのようだ。
そんな体を包む服は黒のレザースーツだ。
その美人の女性は魔王軍幹部の一人にして、<七大罪将軍>の<色欲>担当、名をカミエラ・チェック・アバドシータ。
見た目の色気からはわからないがこう見えてかなりの強者だ。
カミエラは今だ目をユーリファ達にチラチラと向けるもののすぐにそむけては、乾いた笑みを浮かべている。
ユーリファはもうひとつため息を吐く。そしてアーサに話してもらい、揺り椅子においてあったやりかけの編み物をバスケットにしまう。
バスケットを揺り椅子の上においてアーサのもとまでいき、袖を引っ張りながら話す。
「ごめんねアーサ、そういえば今日九時くらいから女子会するんだった」
袖を引っ張られたアーサは少しドキッとしたが、すぐに平常に戻す。
『あ、ああそうか、確かに朝そんなこと言ってたっけ・・・・は、ハハッ!ん、楽しんできてねユーリファ・・・・』
骨の頭をしていているが、誰が見ても分かりやすいくらいに落ち込んでいるアーサ。落ち込んでいる理由はさっきまでの甘い空間が終わってしまったことにだろうか、ユーリファとの愛し合うのがそれだけ楽しみだったのか・・・・それとも両方なのか・・・・
そんなアーサを見たユーリファは少し罪悪感を感じた。
から、「しゃがんで」とアーサに言う。アーサは何をするのだろうかとユーリファの身長に合わせて低くしゃがむ。
アーサがしゃがみこむのと同時にユーリファは山羊の骨の頭に軽く両手を添えて、
口づけをする。
「・・・・んっ」
『っ!!・・・・ん』
「ふふっ」
「あははー」
いきなりのことだったのでアーサは動揺するも、自分の頭にキスをするユーリファを見て、嬉しくなり彼女を軽く抱き寄せる。
カミエラは自分がいながらも二人の甘い空間を作り出されたことに遠い目をしながら、苦笑いする。
数秒後二人は顔を赤く染めながら─アーサは骨だから゛たぶん゛だが─はなし、二人はみつめあう。
お互いみつめあうことさらに数秒がたつ。
そんな砂糖を吐きそうになるくらい甘い空間を不穏な空気が流れてくることに気づいた二人は同時にその空気の発生源へと顔を向ける。
そこにいたのは部屋の隅っこで体育座りをしたがら、人差し指でゆかに『の』の字を書きぶつぶつと独り言を呟くカミエラがいた。
「なによなによ今日女子会するから~、迎えに行くよ~!ってちゃんと伝えたのに迎えに来ればお邪魔虫扱いされるし、最終的には人前でラブラブしやがって・・・・いいもん!私も帰ったら゛あーちん゛に甘えまくるもんねーだ!ちゅっちゅったくさんしてやる!・・・・」
そんなカミエラを見た後、二人はお互いを見合せ、ため息を吐く。
そして今にも泣きそうカミエラを慰める。
「あーあの、カミーは可愛いね、うんそんなところも私は好きよ」
『う、うんカミエラのへこんだところも、また、可愛いと思うよ』
「二人とも慰めるのは下手くそだ!ええーい!もういいもーん!」
だが、二人とも慰めるのはものすごく下手くそだった。
それに激怒し、二人を涙を端にためたカミエラはユーリファ達を睨みながら扉を開く。
そのカミエラにユーリファは聞く。
「ちょ、ちょっとカミーどこ行くの?」
カミエラはユーリファに肩口から視線を送り、
「私玄関に行ってるから、早く準備してね、プイッ!」
と、部屋を後にした。
カミエラが出ていった後アーサは骨の頭をかき、ユーリファは銀色の髪を撫でる。
そして玄関でいるカミエラを待たせ過ぎるのはいけないと、ユーリファは準備をして、
「ちょっと、行ってくるね」
『ああ、いってらっしゃい』
出掛けるときの挨拶をしたのちユーリファはリビングを出ていった。
残されたのは一人扉に向かって立ち、ため息を吐くアーサだけだ。
*
*
*
現在ユーリファとカミエラがいる場所は大きな酒場兼宿屋であり、女子会のために予約を入れておいた店『レッカー亭』の前にいる。
『レッカー亭』は『魔界』の住人が経営している店だが、魔王アーサの嫁であるユーリファやエイル達、時々、本当に時々来る商人のために『現世』の料理も出している数少なく、最も『魔界』からもユーリファ達からも人気のある店だ。
店の主人の名は、オーガス・イーザン、見た目は二メートル半ある背丈に筋肉隆々、顔は面長で皮膚を縫い合わせたような後があり、こめかみ辺りから大きな釘が刺さっている。
オーガスの種族はフランケンシュタインであるが、彼は見た目によらず物凄く紳士的な人物である。
店の名前である゛レッカー゛という言葉はオーガスが、戦争が終戦した後、アーサと結婚したユーリファのために人間に幻影魔法で変身しながら『現世』レシピ作りの旅をしていたときに
どこかの言葉の通じないらしい村で聞いたらしい。意味をジェスチャーで聞いてみたところ─通じたらしい─ ゛レッカー゛というのはどうやら゛おいしい゛といった意味らしい。なんとなく気に入ったオーガスは過去の店を捨て、新しい店を出すときに名付けたようだ。
店で一番圧倒的に人気料理は『キトゥネ・ウードン』だ。海の向こう側まで足を運んで、見つけた島国の店で出された料理らしい。ユーリファも好きな料理だ。
そんな店の中に入らず店前でたっている理由は、たんに今宴会でも終わったのか店前で騒いでいる魔人族達のせいで中に入れないのだ。実に迷惑な客達である。
ユーリファ達ならそこを通るだけで人を退かすことが出来る─力まかせという意味(美貌という意味もあるが)─のだが、楽しんでいる者達に水をさしたくないとユーリファはニコニコしながら眺めている。カミエラはユーリファがそんな人物であると知っているので、勝手に移動してくれるのをため息を吐きながらも一緒に待っている。
だが、彼ら彼女らは一向に退こうとしない、今も店の前で、
「二次会行く人ー!!」
「「「うえーい!!」」」
やどとさきほどから騒ぐのをやめない。
中には苦笑いしながらどけようとしたり、注意をしに来た店の人や通行人の人などに謝っている人がいるが、中心の者達は気づいていないようだ。
楽しんでいるのは勝手なのだが、ゴクゴクと勢いよく飲んで「ぷっはー!!」とおっさんくさいことをするのが楽しみなカミエラ的には早くしてほしいので、そろそろ注意しようと動く。
<七大罪将軍>の一人である<色欲>担当のカミエラなどを知らないものはいないので、彼女が軽く注意するだけで誰もがどけてくれる・・・・のだが、それは正常からただの酔っぱらいくらいまでの話しだ。
「ちょっとー、悪いんだけど、どいてくれないかしら」
「「「イエーイ!!フー!」」」 「「「ひっ!!」」」
気づいたやつはいるが、中心の者達は気づいてはいるのだろうが無視を決め込んでいる。どうやら中心の酔っぱらい達は皆悪酔いしている。暴力事件がおこらないことが不思議なくらい酔っている。
まぁ、そういったことが起こらないのは周りの通行人たちが、近づかないように急いで通りすぎているからであるのだが。
さすがに<七大罪将軍>の一人としてのプライドもあるので薄く青筋つけながらも、カミエラは少し声をあらげて注意する。
「おーいっ!無視とは辛いな~、まぁどうでもいいけど早くどーけーてー!他の人達が迷惑してるでしょー!」
「「「ああ!!!」」」 「「「ひっ!すみません!!」」」
それに対して水をさされた中心の者達はカミエラを一斉に睨み付ける。カミエラやユーリファの存在に気づいていたもの勢いよく頭をさげて謝る。
「だれだおまぇーは!みずさしてんじゃねぇーよ!アァ!!」
睨み付けるておきながらもカミエラに気づかない中心の者達。
その中心から代表して一人の男が青筋つけながら前に歩み寄りながら話す。
それを止めようとする者達はその男が睨むことで動きをとめる。
どうやらその男が一番上の立場らしい。
フラフラと歩きカミエラの前で止まる。
「んだよ!てめぇあよ!ああ!ぶっ△っ☆○!ごら!」
「ちょっとやめてよね!酔っぱらいの唾とか嫌いなんだから!ていうか早くどっか行ってよ!早く飲みたいのよ!」
そして唾を吐きながら途中何をいっているのか認識できないことを叫ぶ男と、唾の一つ一つをきように避けるながら軽くキレ気味のカミエラ。
そんな二人を見て「そうだそうだー!」と男に同意の声をあげる中心の者達と、「もうやめてくれー!」と頭を抱えながら嘆く者達と、さすがに止めるべきかなと苦笑いをするユーリファ。
「おいなめてんらねーぞこのくブボラッ!!」
「「「ああああああああ!!」」」
だが、そんなことも突如悪酔い中心の者達と、カミエラの前の呂律も回らなくなってきている男にぶつかった大きな光と、その光が地に勢いよく当たったことにより起きた大きな振動と砂埃によりあっさり終わった。
「あっちゃ~!気づいちゃったか~」
と、走りながらカミエラに言うユーリファ。
それに対して「そうだね」と首を縦にふりながら話す。
砂埃が少しずつ晴れたそこにあったのは赤の縁が入って、中心に真紅の宝石がはめられた金色の大盾と、禍々しく顔が浮かび上がった漆黒の大盾が地面を抉り突き刺さっていた。
二人はこの盾に見覚えがあると言うではなく、この盾を知っている。そしてその盾の持ち主も知っている。というか知らないものはいないだろう。
二人は店前へと顔を向ける。盾が降ってきたのは上なのだが、この盾は普通の盾ではなく遠隔しきの魔法で作られている武器であるからだ。
「テニア~、こんな奴等に宝具使っちゃダメでしょー」
盾の持ち主である人物に向かいながら軽く注意しながら歩くカミエラ。ユーリファは大丈夫かなーと思いながらも「死んでいなからいいか」とカミエラについていく。
カミエラの言った宝具とは、ユーリファが使っている神器の劣化版と呼ばれる魔法武器のことである。
宝具は過去に神が作り、初代神の子が使用を許した者にしか使うことが出来ないとされる武器で、『現世』『魔界』にそれぞれ十六個あり─『天界』にもあるが神器があったため数は四つしかない─、神器より付与スキルの威力、耐久力などはそれぞれと劣るものの使いようでは上回ると言われている武器の事である。エイル達四騎士もそれぞれ2つずつ持っている。いずれ出てくる゛かも゛なのでここでは紹介しない。
だが、すでに出ている宝具の名だけは紹介する。
宝具『メガイラの深き嫉妬』と『五行説の大盾』、持ち主は最初の宝具の名からも分かるだろう。
カミエラにテニアと呼ばれた人物。
髪と瞳は黒く、顔の半分を髪で隠している。肌は白いくスベスベなのが見ていて分かり、可愛く整った顔立ち。服は赤の袖無しワンピースを来て白のマフラーを首もとに巻いている小柄な少女である。
名をテニア・オバーラー・ンーヴィリア。宝具を二つ持つ彼女は<七大罪将軍>の一人<嫉妬>を担当している。
そんな彼女の武器である、2つ目の宝具は名の通り、『五行説の大盾』は五つで1つであるため、1つはカミエラに気づかず唾を吐きながら何をいっているのか分からない男の近くで地面に突き刺さり、あとの四つは彼女を中心に回りながら浮いている。
浮いていると言えば盾だけではなく少女自信も浮いている。
だから小柄な少女なのだが目線はカミエラと同じ高さである。
浮かなくてもユーリファよりは少し大きい。
「どうしたの?いつもなら絶対しないの、ニッ!!」
そんな可愛らしい少女に注意しながら近づくカミエラに対していきなり酒瓶が飛んでくる。
物凄い勢いで飛んできた酒瓶はカミエラですらギリギリでしか交わせなかった。
投げた犯人は
「なに!どうしたのテニア!」
テニアである。突然仲間からの酒瓶攻撃にビックリし少し混乱するも、テニアの白く綺麗な手に握られている物に気づき顔をひきつらせる。
「にゃんでこんなにおしょいのよ・・・・」
呂律の回っていない喋り方から分かるように、彼女の手にあったものは、酒の入ったジョッキである。
普段は物静かで大人しい少女なのだが、顔を真っ赤して呂律の回っていない喋り方、仲間への攻撃、それはつまり、
「テニア落ち着いて」
「ましんぞく、わらしだけでなんかさ・・・・びしかったんじゃー!!」
彼女もかなり酔っぱらっている。悪い方向で・・・・
新しい友達が出てきましたね、カミエラとテニアちゃん。
文字の間違い質問などがあったら教えてください。
では次回をお楽しみに!