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私は魔王の妻になりました。後編

先週は出せなくてすみません。

あと遅くなりました。

では本編をどうぞ!


『結婚しないか?』


「は?──うわっ!」


『あっ』


攻撃を仕掛けるつもりだったユーリファは、魔王のそんな場違いの言葉に驚愕し、つまずき、声が裏返っりながら転んだ。


受け身をとらずに転んだユーリファに魔王は、魔王なのに自分を倒しに来た神の子を心配する。


『だ、大丈夫か?』


魔王からはよく見ないと分からないくらいだが、動揺しているようだ。


「いててっ、って!あなたはいきなりなにをいっているんでしゅか!?」


ユーリファもユーリファで動揺している。いきなり魔王からの求婚に、少しテンパりかみまくりである。


『えっ、いやだって死にたくないって言ってたじゃん』


「あ、あぁ・・・・あぁはいはい、いや!でもそれだけの理由で魔王が私みたいなのにプロポーズって、貴方それでも魔王ですか!?」


『まぁ、これでも魔王やらせてもらってます』


ユーリファは落ち着くため一つ大きくため息をつく。


「はぁ、それで理由はそれだけですか?」


『?・・・・あぁ理由は三つある、まず一つ目』


魔王は手を前に出し人差し指を立てる。

この時ユーリファは魔王が手に前に出してきたとき、攻撃してくるのかとびっくしりて、肩をビクッと震わせていた。


『お前が死にたくな』


「分かりました、次いってください」


『ああ』


魔王が理由を言いきる前に、ユーリファは顔を真っ赤にしながら遮る。

さすがに無意識でもそんなこと言ったんだ、それで魔王が気を使ったと思うと恥ずかしいらしい。


『え、えーっと二つ目はだな、私がお前を求めているからだ』


「ふぁっ!!」


さっき以上に声を裏がえしながら、顔をこちらもまたさっき以上に真っ赤にそめる。

頭から湯気が出そうに赤い。


ユーリファは恥ずかしさや驚愕、疑問などが頭の中でこんがらがりそうになるのをなんとか止め魔王の最後の理由を聞き逃さないために意識をしっかりと持つ。

自分は敵である魔王になに照れてるんだろうと、そして魔王は何の恥ずかしさもなくそんなことを言ってくることにたいし少し悔しさくて、赤くそまった顔で奥歯を噛みしめ、魔王を睨み付け口調がきつくなる。


「で、最後は?」


『え、えーと、最後はだな』


そこで溜めにはいる魔王。

こんな時に何溜めているのかと苛立ちが増すユーリファ。


『最後はね・・・・勝手な理由かもしれないが・・・・』


「分かったから早くして」


まだ溜めるかといい加減にしてほしいとさっきまで赤かった顔は冷めたように元の白く綺麗な肌に戻っていた。


『あ、ああ、・・・・それで最後の理由だが、私達・・・・あー、元から『魔界』に住んでいた者たちは、争うことに疲れたんだよ』


「?」


ユーリファは聞き間違えだと思い、剣を床に刺し右手のガントレットを外す。鎧から取り出した細くて綺麗な指を、念のために懐にあるバックにいれてあった綿棒で耳をかいてみる。

だが、ユーリファはここに来る前ファフニールに耳を掃除してもらった綺麗で綿棒には何もついていない。


と言うことは耳はつまっていない。


ユーリファ自身、戦闘凶であるはずの魔王があんなこと言うなんて信じられないので今度は精神魔法のせいかと思い、左手の手盾の能力を発動する。

が、手盾は発動するものの効果はない。


じゃあ、精神魔法でもない。


だが、ここで彼女は考えを改める。

初代神の子ですら作れたかった回復アイテムを作るほどの力を持つ魔人。


もしかしてだけども、いや、ありえるのかもしれない。


チラッとユーリファは魔王を見る。

魔王はユーリファが考え込んでいるのに気づいていないのか、動作をつけながら理由を語っているみたいだ。


『みたいだ』というのは、ユーリファは魔王の声は聞こえているのだが、さっきの魔王の発言を深く考え込んでしまっているせいで内容は右から左へと抜けてしまっていた。


それから彼女は考えるのをやめた。

馬鹿らしくなってきたのである。


自分がいったい何をするためにここへと来たのかを思い直すことにした。

だから、今ユーリファてきには、魔王の語る理由などどうでもよくなった。

今新たに思い直す彼女の中にある感情は、怒りである。


「ふざけないで!!」


『?』


突然の怒鳴り声に魔王は話すのをやめた。

魔王が話すのをやめユーリファは顔を下に向けて口を引き結んでいるから、広く大きな玉座の間には静寂が姿を表す。


最初に口を開き、静寂を破ったのはユーリファだった。


「ふざけないで!・・・・なにが争うのに疲れたんですかっ!これは貴方達『魔界』が始めた戦争でしょう、貴方達が始めたこの戦争で一体何人の人が、者達が死んだと思っているの?」


奥歯を噛みしめ、右手の剣を強く握りしめる。


「それに、それに貴方達は、魔王貴方は神を殺すだけでなく、あの人を・・・・初代神の子をも殺したのよ!そんな事をしておきながら争うのに飽きた?・・・・なんでよ」


何故だろうかユーリファは胸が締め付けられる感覚がして、胸元にてを当てる。そして、ふと頭を過ぎた何々より目尻には涙が溜まった。溢れそうになるのを必死に抑える。


今なにが過ぎたか分からないが、この苦しさは知っている気がした。


ユーリファの中にある初代神の子は、話では聞いたことがある。

それだけではなく顔も声も知っているはずなのだが、思い出しそうになれば上から押さえつけられたかのように、ゼロに戻ってしまうから、初代神の子については『知っているようで知らない』と言った感じである。


だが、時々初代神の子の墓参りに行くと、急に胸が締め付けられ涙が溢れて頭には鈍い痛みが走ることがある。彼女自身理解ができなくて怖くなるから出きるだけ近寄らないようにした。


今何故かは分からないがその時のような思いが胸にいっぱい広がり困惑するユーリファだったが、すぐにその上から怒りで塗りつぶされる。


目を強くつむり、俯きながら自分の出せる大声で叫ぶ。


「『魔界』が始めたことなのに!・・・・そんな事を言うんだったら最初っから戦争何てしないでよ!私を貴方達に勝手理由に使わな──!!?」


突如ユーリファの口が閉じ、唇の上に何かが触れる。

驚き自分の口元に目を当てると、黒い革手袋をはめた右手人差し指があった。


革手袋をはめた手の主が一瞬に気づき顔を勢いよくあげる。


ユーリファは気付かなかったのだ、魔王に対する怒りをぶつけたり、初代神の子の事を思い胸が苦しくなって周りの注意を粗末にしてしまっていた。

本来の彼女であればそういった行為はしないのだが、つい怒りに任せた行為だったためだ。


距離をとるために後ろへと下がろうとしたが、いきなりだったためここでもまた、普段はしないのだが足が絡まり尻餅をつく────、


その前に魔王はユーリファの脇に手を差し込み持ち上げる。

もし魔王の顔が骨ではなくて人の顔であれば、身長差から周りからみた感じ、親が子にする『高い高い』に見えてしまうだろう。


『たかーい、たかーい』


「!!おろして!コノヤロー!!」


魔王的にはユーリファに落ち着いてもらう──少しは面白いから──ために言ったのだが、よりユーリファをムカつかせるだけだった。


神の子としてはどうかと思う言葉づかいなのだが、どこか微笑ましいものだった。


ユーリファがジタバタと暴れるなか、そのままの体勢で魔王は一言一言力強く話す。


『小さい頃に教わらなかったのか?人の話しは最後まで静かに聞けと、いやこの場合は魔王の話しはか?』


「そんなのどーでもいいよ!話し聞いてほしかったら降ろせやコノヤロー!!ぶっ飛ばすぞ!」


紹介していなかったのだが、ユーリファは身長は152で、彼女は神の子として小さく伸びない身長に──後胸──悩んでいた。

もともと、身長に触れられ子供扱いされると、気の知れた者にたいしては言葉づかいが荒れてしまう。

だが今回怒りの矛先である魔王に身長についてふれられ彼女は今までは以上に荒れ狂っている。


『言葉づかい汚すぎだろ・・・・だがそこも可愛いな』


さすがの魔王もユーリファの言葉づかいに引いてしまうが、最後にボソッとユーリファに可愛い宣言をしていた。


それが聞こえたのか、


「なに魔王が可愛いとか言っとるんじゃ!んだよコラ!いい加減降ろせ!」


完璧にユーリファはぶちギレた。


さっきまでのシリアス展開がぶち壊しである。


ここで分かってもらいたいのだが彼女は普段こんな口調ではない。いつもはゆったりとして誰に対しても敬語を混ぜたりした話し方なのだ。

そのせいでこのキレた状態を知る者達からは影での二つ名は『多重人格のエンジェル』である。

名付け親はフィンだ。


エイルがどうしてそんな二つ名名のかを聞いたら、


『両方とも可愛くて癒されるからだ!ピッタリだろ?ガッハハハハッ!!』


らしい。


いっこうに手を離さない魔王。

そんな魔王にジタバタと暴れるユーリファの足が光の線を描きながら蹴りが飛ぶ。


たまたま飛んできた蹴りに避けることもないと思いかわそうともしない魔王。


何度も言うのだが、蹴りはたまたま魔王の顔へ飛んだ蹴りなのだが、そこから白く輝く光が装甲靴から放たれる。これは鎧の能力の発動の意である。


『ガッ!グハッ!』


それに気づかず受けた魔王は火花を散らしながら上へと弾かれる。上へと流した足を──たまたま──踵落としで更に魔王の顔にぶつかり下へと下ろされ、魔王も下へと顔を落とした。


ダメージをくらった魔王はよろめく。

二、三歩後退するが、ユーリファを上へとかかげたままでいる辺りさすが魔王である。


よろめく魔王と、光る自分の装甲靴を見て流石に何があったのか気付くユーリファ。


下をうつむき反応を見せない魔王に、もしかして求婚しているのに攻撃され起こってしまいこのまま殺されるかも知れないと思い、背中に冷たいものを感じた。


だが、魔王の見せた反応は予想とは全然違った。


『今のはかなり効いたぜ』


「心配して損した!」


その後玉座の間では一時間くらいユーリファの怒鳴り声が響いていた。



*閑話休題*



「で?」


『で?って?』


話が進まないと思った魔王はユーリファをおりした。

やっと下におろしてもらえたユーリファだが、魔王を睨み付けてかなり不機嫌そうだ。

しかし、話をさっさと進めたいので魔王に話すようにうながすのだが、いきなり振られてことにより魔王はユーリファの思いを汲み取れず質問を質問で返してしまった。


魔王が聞いてほしいと言っていたにもかかわらず、自分のうながしに気づかないことに対してムカつくのだが、怒ってたらいつまでたっても進まないと思い気持ちを抑える。


「話し、聞いてほしいんでしょ」


『ああ、そうだった、そうだった。でだが、何から話すべきか・・・・』


「いや、さっき話してたこと言えばいいんじゃないの?私聞いてなかったし」


『ん?いやそれもそうなんだが、新しく話さなければいけないことが増えたんだよ』


顎の部分をさすりながら『うーん』と唸っている。

何をそんなに話すことがあるのだろうか、首をかしげるユーリファ。


まとまったのか山羊の骨の顔を軽くあげ、ユーリファの肩に手をのせる。


『まとまったよエ、ユーリファ』


「ふーん、それで?」


『ユーリファ君は何か勘違いしていないかい?』


「うん?どういう意味?」


『思い出してもらいたいのだが、君がさっき戦争を始めたのは私達と言ったな?』


目をつぶって思い出そうと考える。


数秒後確かに言ったと目をあけて、頷く。


「うん、言ったよ」


『うん、それでね間違っていたら悪いんだが、君が言う戦争は初代神の子が死んだって後の話だよね?』


それがどうしたと、殺したことへの言い訳でも言いたいのかと眉をひそめる。


「そうだけど、貴方達があの人を殺した後の」


『やっぱり!君は、いや多分だが君らは勘違いをしている』


ユーリファの言葉を遮る。

遮られ、勘違いをしていると言ってくる魔王に徐々にイライラが積もっていく。

今日は生まれて初めてユーリファが怒っている日だ。


刃先を床に打ち付け、腰に手を当てイラついてますよアピールをとるユーリファ。


「私達が何を間違っているっていうのよ?」


『そうだね、えーっと確かに初めの神との戦争は私達『魔界』が始めたことだ、だけどね?二回目の戦争は君達『現世』と『天界』が始めたことだし、私達は初代神の子を殺したりなんかしていないよ』


「?」


『あーよかった、彼女たちの間違いを直せることができて、スッキリだわー』


両手を重ねて伸びをしだす魔王。

ユーリファのほうは頭の中で話しをまとめながらボーッと立ち尽くす。


そしてまとまったのか目を大きくあけ、魔王につかみかかる。


「ちょちょちょ、ちょっと待って!それどういう事なの?えっ?だって神官長や『天界』、周りの大人たちもみーんな『魔界』が全部始めたって言ってたんだよ!?」


首をかしげる魔王。


『あれ?見せてもらっていないのかいユーリファ?』


「見せてもらっていないって?」


『初代神の子が最後に残した置き手紙の事だよ』


<初代神の子が最後に残した置き手紙>


これについてはユーリファが知らないわけはない、だって、その 手紙と一緒に置いてあったのは彼女自身なのだから。

ユーリファ自身手紙を見せてもらったし、私のアルバムに挟んであるのだから。


だが、所々穴が空いていて読めない場所もある。

しかし、穴が空いていない場所を読んだことのある人や天使達は皆謎の死を遂げていたのだった。

これは『魔界』軍でもっとも呪いなどを得意とする情報がある─生き残りの情報であるため実際にそうなのか断言は出来ない─<七大罪将軍>の<怠惰>ベーモス・カウラウ・モノモフスキーの仕業ではと伝えられている。


そこには『魔界』にとって知られたくない情報があるために見たものを殺したのではと考えていたユーリファ。

だから、彼女的には嘘でも言うつもりなのかと身構える。


「初代神の子が残した手紙がどうしたの?あそこには所々に穴が空いているから分からないけど、貴方の復活より先に出来ていたものらしいから、魔王貴方の嘘には騙されませんよ!」


『?所々に穴?まぁいいかそんな事より、また新しい勘違いをしているようだね』


「今度は何?」


『言っておくが私は復活、てはない。正確には二代目として生まれただ。それに私はその手紙の内容を知っている、つまりその時には私はこの世界で存在していたのだよ』


「生まれた?二代目?・・・・それに手紙の内容を知っている?う、うそ!嘘よ!」


『何なら言ってみようか?手紙の内容?』


「覚えているの?」


『ああ、まぁねちょっとね』


もごついきながら話す魔王、だけどそんなことどうでもよい。


もし、本当に魔王が内容を知っているのだとすると・・・・嘘なのは本当なのかは聞いてからにすればよいと考える。


「なら内容を言ってくれる?」


『ああ、えーっと最初は・・・・』



全部聞き終わり困惑する。

魔王が内容を知っているのは事実らしい。所々「?」となるところもあったのだが、そこは穴が空いている場所だったから仕方がない。

穴が空いている場所で耳を疑いたくなる『魔界は関係がない』といったところだった。


だけども、一つ魔王に対しての疑いがでてきた。


「ねぇ魔王さん、貴方が言っていたことは確かに手紙に書かれていたことですよ。ですが、私の中では一つの疑いがでてきた。」


『おや、それはどういったことだい?』


「うん、もしかしたらだけど手紙は貴方の偽装工作じゃないのかと言うこと、分かっている魔王さんの力があれば盗み見ることも簡単だろうけども、手紙は魔王さんの力があれば忍び込み用意することが出来るのではと」


彼女は自分でそんな事を話すも、これでは分からない、謎が出てくる。


『そうだね、確かに昔初代神の子が住んでいた部屋には悪意あるものが入れば警報、天使達を召喚できる『ワープ』空間があらわる力を宿していたね、それも私クラスの力があれば簡単ではないけども忍び込むことはできる』


言葉を句切り、腕を組む魔王。


『だけども、神の子が残していったのは手紙だけではないよね?』


そうここでの謎というのは、初代神の子が残していったのは手紙だけではないのだ。


装備品、神の子の血液、そして彼女ユーリファだ。


これが初代神の子が置いていったというのなら、神の存在を途絶えたくないと、姿を消した神をいずれ帰ってくるその日まで世界をまとめる存在を残したいという考えが読み取れる。


だが、もし魔王が置いていったというのらば何がしたいのかが分からなくなってしまい頭を抱えてしまいたくなる。


確かに今日みたいな日に見せしめとして私を殺すとかと言ったことに用意したとかではと考える。


ユーリファはチラリと魔王を見る。

見られたことに小首傾げた魔王は、ただ彼女の前に腕組みしながら立っているだけだ、考え込む無防備のユーリファに何かするわけでもなく本当にただ突っ立っているだけだった。


こんな魔王がそこまで考えるだろうか?と悩む彼女だが相手は魔王なのだからと頭を振った。


「まぁこれについては後からにする、とりあえずまだ言いたいことがあるのでしょ?続けて」


このまま唸りながら考えても意味がないと考えるユーリファは魔王に先を進めさせるために声をかける。


『了解だ』


大きな山羊の頭を軽く縦に振る。


『それでたが、この話には二つユーリファ君達にとってメリットのある話を用意してある』


「メリッ、ト?」


『うむ』


「へー、へーそうなのか、それで?」


もう戦う気力が無くなり─自分達にとってのメリットという言葉に反応し─話を聞くために腰にたずさえていた鞘に剣をしまう。

それを見、やっと話しを聞く気になったのかとユーリファは見えなかったが、玉座まで瞬間で移動して座った。自分だけ座って話すのはどうかと思い魔法で椅子を作成後、ユーリファに座るよう言った。


見えない移動速度だけでも目を丸くするのに、ユーリファの前に魔王の座っている漆黒の玉座と変わらないほどの豪華で目を奪われるつくりだった。唯一違うのは魔王の闇をも飲み込みそうな漆黒と反対の色は少し眩しくキラキラ輝くシルバーホワイトといったところだった。


もう驚愕しすぎて逆に冷静になってしまったユーリファはもし帰れたら神の子を降りることを宣言してやると密かに心に誓いながら椅子に腰を下ろし座る。座ってもなるべく魔王に警戒の念のためにいつでも剣を抜けるよう、抜きやすい位置に用意しておく。


そんな事を知らない魔王は足を組み話し出す。


『あーメリットについてだが、一つめ『魔界』はユーリファ君達のもとに下り永遠の『停戦協定』を結びぶことを誓うよ』


永遠『停戦協定』、これは確かに魅力的な話だ。魔人に力がどうしても劣る人間はそんな相手と戦争をしなくてすむのだからフィンみたいな筋骨隆々の大人でも恥ずかしげもなく、跳ねて喜ぶだろう話だ。


「ぶふっ!」


これを聞かされたフィンの喜びのあまり踊りまくる姿を思い浮かべてしまったユーリファは吹き出してしまう。


『どうかしたのか?』


「なんでもない」


『・・・・そ、そうか』


話の途中だったのを思い出しすぐに表情を冷静に戻す。


再び考え直す。

そこでふと思う。


「でもその『停戦協定』を結んだところで悪の王と詠われる魔王が約束を守るとは到底思えないけど?」


『はぁ~『現世』と『天界』から見て魔王ってそんな位置付けですか、そうですか』と呟きながら額辺りに手を当てる。


『まぁ仕方ないよな、初代が酷かったらしいし。・・・・えーっと、私が約束を守もれないだろ?、だったっけ?』


「うん」


『それについてがメリット二つ目にかかわっ────』


魔王の言葉を遮りいきなり玉座の間の巨大な両扉が大きな音をたてながら開く。


『<傲慢>ヴィントゥルです、入ります』


<七大罪将軍>のヴィントゥルの登場に体をこわばらせるが右手を鞘に添えて椅子から軽く立ち上がり戦闘体勢をとる。


だけども、ヴィントゥルはユーリファのもとまでこず入って直ぐのところで止まり、何かが床に落ちる音が聞こえた。

落とされたせいか金属がぶつかる甲高い音と人の呻き声が聞いたユーリファは床へと目を向ける。


そして彼女は驚愕のあまり目を大きく広げ固まる。


床に倒れていたのは四人。

彼女ユーリファ自身が力を認め、自分の護衛へと命じた存在。


フィン、ローラン、エイル、 アウロラ達である。


皆それぞれに酷い重傷であった、それは仕方のないことだ。どれだけ力があれと絶対的強者でない限り無傷といつことはありえない、傷は治すこともできるから胸のモヤモヤを消し仕方がないと考えられるが今の彼女の驚きはそこではないのだ。


自分の選んだ選りすぐりの強者であり、ユーリファの数の少ないアイテムを渡してあるにもから<七大罪将軍>であろうとギリギリの戦いは出来るようになるのに、目の前にいるまとめ役であり<強欲>のヴィントゥルは怪我どころか服に汚れやほつれがなかい『無傷』であるのだ。


「<強欲>さん貴方はどうやって彼らを無傷で倒したのですか?彼らの能力はここへ来る前にかなりレベルをあげたはずなのですけど?」


ユーリファはつい魔王を背に剣を抜く体勢に入っていることに気づき、両方から攻められても防げる位置に体を向ける。


『いえいえ私も無傷ではありませんとも』


「そうは見えないけど」


ヴィントゥルの下で苦痛の色を見せて呻くフィン達に苦悶の視線を向け、そしてヴィントゥルの上司である魔王に凍えそうになるほど冷たい目線を向ける。


そのとき目線を向けられて魔王はユーリファの冷たい目に気づき一瞬身震いしていた。


ヴィントゥルはユーリファの苦悶に軽く笑い声をあげる。


『ハハッ、いえ簡単な話ですよ、私は魔王様から何個か頂いたのですよ<制限無しの回復>アイテムを』


それを聞いたユーリファはバッと首を魔王へと向ける。


「一体何個ここにあるの!?」


『えっ、あ、あぁえっと私の部屋の大きさからしてだいたい1億はあるかな』


「へ、へーそんなにあるんだー」


すごい喧騒で聞いてくるせいで部下の前で詰まってしまった。

ユーリファはユーリファでもう驚く様子はないようだ。


『まぁなあのアイテムは小さいからたくさんあったところで収納には困らないんだよ』


「うん、もういいや、で私達の仲間をどうするきなの<強欲>さん?」


『ええ、貴方の『弱すぎる』部下達は念のために捕まえておいたのですが~、どうやらそれも杞憂らしいですから・・・・どういたしましょうか魔王様』


いちいちムカつく<強欲>の話し方を無視することに決めたユーリファであった。


魔王は懐へと手を入れ、掴んだアイテムをヴィントゥルへと綺麗な曲線を描きながら放り投げる。


『それをその者達に使ってやれ』


『よろしいのですか?』


『ああ、数だけはあるんだ使わなくては勿体ないしな、まぁそれを使うのは監獄にでも連れていってからにしろ』


『了解しました、では連絡を』


『いやそれは私がしておこう、またいきなり連れてきたのかとアイツに怒られてしまうからな』


『あの方の叱咤を受けるのなら私がするべきかと』


『大丈夫だ私は怒られ慣れをしているから苦にも思わんよ』


『分かりました、では時間をかけて向かわせていただきます』


『ああ、そうしてもらえるとありがたい』


『フフ、では失礼します』


「いや、ちょっ!」


ユーリファが止める前にフィン達を担いで部屋を出ていったヴィントゥル。


魔王に訴えるために首を向けるも後ろを向いて憂鬱そうに誰かと連絡をしていた。


『捕虜をそっちに送ったので監視をお願い、いや本当にごめんなさい!はい、はい、いやいやわざとじゃ・・・・え?ああごめん聞きとりずらかった、ごめんごめん今度何か作ってあげるからさ、ほらこのあいだほしいっていってたやつ、うんうん、本当にごめんね、はーいはい、じゃあそういうことで、はいはーい、了解だ、そろそろきるよ、あとでなー』


そして電話をきり振り向く魔王。


『すまない、では話の続きを』


「貴方もう恋人いるだろ!!?」


『ええー!!』


彼女は今日で怒ったのは何度めだろうか、もしかしたら記録更新かも─今まででユーリファが怒った記録は三回である─しれないと考えながら、魔王に怒りをぶつける。


「絶対今のそういう関係の者どうしの話し合いじゃん!てか、さっきまでの威厳ありそうな喋り方だったのに、さっきの電話での話し方はなんですか!残念ですよ、まさか私は浮気相手として使われそうになるなんて、泣きますよ!コンチキショー!!」


目の端に涙をため剣を魔王に向けるユーリファ。


『コンチキショーって・・・・じゃなくて!いやいや私には恋人も奥さんもいないよ!』


「うそだっ!だってなんか、なんかそれっぽかったんだもーん!!」


『うわ!なんだそれ、だから俺が惚れているのはユーリファお前だけだって!』


「今は、でしょ」


『ち・が・う・よ!今までもこれからもエリスお前だけだって!・・・・あっやべ』


慌てて口元に手を当てる魔王に、指を向けるユーリファ。


「ほら!そこで私の名前出なかったじゃん!なんですかエリスって!ていうか何で魔王が私の過去」


『あーあー!何も聞こえませーん!』


「子供かっ!!」



本日二度目の*閑話休題*



「ひっぐ、ぐずっ」


『はーはー、やっと終わった』


涙を持ってきた布で拭い、魔王からもらったティッシュで鼻をかむユーリファ。

当の魔王とユーリファは椅子に座っている。

『これでやっと本題に戻れる』とうなだれる魔王。

やっと泣き止んだユーリファに続きを話す姿勢をとってもらう、ユーリファも仕方なしと座り直す。


「それで続きは?」


『ああ、確か私が『停戦協定』守らないかもしれないだったが、そこでメリット二つ目だ私はこれからユーリファに何かが起こらない限り魔法は使わない、そしてお前が私をいつでも殺せよう結婚することで側にいて、ついでにお前の能力向上のため私全てを一生をかけてでも教え強くしてやる。』


「魔王の全て?」


『ああ、私の力、私の知恵をお前に教え強くし、いずれお前が私を殺せるようにしてやろう』


ごくりと唾をのむ音がユーリファから聞こえる。


「でも」


『それも破るかもしれない、だね?』


「うん」


『先程も言ったが、私はお前に惚れてしまっている、私は笑える嘘はついても笑えない嘘はつかない主義だ、今の話はユーリファお前にとって笑える話か?』


ユーリファは首を振る。


『そういうこどだ』


それすらも本当なのかは分からない、だけどもここは魔王の話に乗るべきなのかもしれない。

もし、嘘だと決めつけ戦闘に入っても今のままでは勝てないし、私を信じてくれるフィン達を置いていくわけにはいかない。


心を決めるしかないようだ。


「わかった、魔王のプロポーズ受けます」


『ほ、本当にか!いいんだな!』


軽く首を縦に振る。


『いー、よっしゃっー!!』


座りだから小さくガッツポーズをしながら、喜びの声を小さく呟く魔王。

そんな姿に一瞬ときめいてしまった彼女は、


「もしかして、今の私をチョロいっていうのかな?」


エイルに教えてもらった言葉を苦笑いを浮かべながら呟いた。


そんな事を言っていて気がつけば目の前に魔王が立っている。

ビックリしてまた転びそうになるユーリファ腰を抱き止め顔をのぞく。


『最後に、私はユーリファ君を心の底から愛している』


顔を赤めるユーリファは、


「私はそうでもないよ」


かなり冷たい返しをした。

骨だからどんな表情をしているのか分からないが、多分困惑しているだろう。


そんな魔王に、


「でも私もそうなれるよう、頑張って殺しにいくよ」


そう綺麗で眩しいくらいの笑顔で物騒な事を言う。


『ああ、いずれ私を殺してみろ』


なにげに受け入れていた。


そして、二人は顔を寄せる。




『いい忘れていたな、私の名はアーサ・ケイジ・アバドーラ、アーサと呼んでくれ』


「ふふ、アーサね、私はユーリファ・ヴィリウド=バルハセコフ、私の事はユーリファでお願いします」




魔王にとっての、ユーリファにとってのファーストキスは




<無味無臭>




「最後しまらないね」


『すまん』

初めての一万二千越え。


これからも頑張らせていただきます。


よろしくお願いします。

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