協力者
翌日私は父の命令で建前上、外交として青宮に出向く事となった。
母と妹のリリアにもこの事は伝えられた。
《フォルス兄様、外交で青宮に行かれるとは本当ですか?》
《あぁ本当だよリリア、父上と母上の事は頼んだよ》
《分かりました、リリアにお任せ下さい。けれど兄様も気をつけて下さいね。青宮の方で最近慌ただしい騒ぎがあったとか…、皆様教えては頂けませんでしたが…》
《騒ぎか…ありがとうリリア、お前も充分注意してくれ。下級身分の王族達は、きっと今回の外交を心良く思って無い、嫌がらせをされるかも知れないからね》
《分かっておりますわ。大丈夫ですリリリアは負けませんから》
《はははっ。頼もしい妹だな…じゅあそろそろ時間だ行ってくるよ》
リリアと別れた私は青宮へと旅立った。
数日後、青宮に辿り着いた私は、まず代表者の代理である男に会った。
彼の名はメデルカと言った。
王族の中でもかなりの上位の王族だろう、威厳があり話していても頼もしい相手だった。
それとなく前代表者の事を聞いて見たのだが、彼も前代表者とは友人で探索を続けていると言った。
私は外交として父が用意した品を彼に渡し、暫くの滞在の許可を得た。
私に用意された部屋は客間で、彼の部屋からは離れた位置にあった。
情報を集める為聞き込みをしないと…、しかし表立って動くには危険すぎる、まず人を使うしかないか…。
私は取り敢えず町に出て人を雇う事にした。
フォルスは町に降り、まずは人が集まる場所を探した。
青宮の治める町はどちらかと言うと、年配者の多い町だった。
町で出会った老人に聞くと、最近町のはずれの宿屋に冒険者がいると教えて貰った。
町はずれには最近怪しげな連中が集まっていて、町の若者が様子を見に行ったまま戻って来なくなってしまった、その為冒険者に頼んで調べて貰っているそうだ。
もしかしたら怪しげな連中と今回の件は何か繋がりがあるのだろうか?、私は冒険者から話を聞く為、町はずれの宿屋を訪ねる事にした。
老人に聞いた話では彼は赤髪の大男らしいので、すぐに分かるだろう。
宿屋に行くと彼は既に出掛けたようで、部屋には居なかった。
宿屋の主人の話しでは彼は毎朝鍛錬の為、裏で薪割りをしてるらしい。
主人に案内され私は宿屋の裏に通された。
《アルバさんあんたにお客さんだよ》
案内された奥には、燃えるような見事な赤髪の大男が、斧を振り落とし薪割りをしていた。
《あぁ…ちょっと待ってくれ、これで終わりだ…せぃっ!》
男がそう言うと薪は綺麗に割れ、バラバラと崩れ落ちた。
男は薪を束ね主人に渡すと私を部屋に案内した。
《初めまして私はフォルスと言います。実は貴方にお願いしたい事がありお伺いしました》
《俺はアルバだ。職種は冒険者なんだが主にモンスター退治や頼まれ事で生計をたててる。悪いが今は依頼を受けてる最中なんだ…すまないが…》
《待って下さい。実は今貴方が依頼を受けてる内容と、私の要件は繋がりがありそうなのです。出来れば貴方にお手伝いをお願いしたいのですが》
《それは…どういう事だ…》
《実は極秘事項なのですが、青宮の代表者が失踪しました。恐らく攫われたのでしょう。それを手引きした連中が、貴方が依頼受けた内容と酷似していて、恐らく同じ犯人でしょう。私は表立って動く事は出来無いので、貴方に彼らの住処を探して知らせて欲しいのです。私も出来る限り協力致します》
《何か事情があるようだな…、どちらにせよ犯人を捕まえるのが俺の依頼だ。手がかりを見つけたらお前に知らせよう》
《ありがとうございます。私は青宮の客間に滞在しておりますので、何かあればそちらに来て下さい》
《...分かった》
アルバにお願いをして、フォルスは青宮の自室に帰った。